万年補欠の下克上！（第4期）はずれスキル「支援魔法（対単体）」しか持たない低辺勇者は野球少年に転生してメジャーリーグで無双する。

【13回の裏】オールスターゲームの投票のはじまり。

5月24日（火）【小原由香ダルトン】

　デトロイト対タンパベイ。日本人の日常会話では滅多に出ることのないアメリカの二つの都市に本拠地を置く球団が激突する。

　注目すべきはおそらくこの世代を代表する二人の選手の激突だ。ジャスティン・バートランダー。他人を滅多に褒めることがないあのヰチローが「すべての球種が一級品の一流の投手」と手放しで絶賛する男だ。しかも今月無安打試合（ノーヒッター）を達成し全盛期の片鱗を見せてさえいる。

　対するのは日本が誇る二刀流選手、沢村健。若干20歳ながら今季すでに6個の敬遠を受ける強打者でもある。

　この日の沢村は5番指名打者。翌日が先発投手の予定であるためこのオーダーである。

　1巡目の対決はど真ん中やや高めの152km/hの4シームを完璧に捉えたと思ったがフェンスぎりぎりの中飛に終わる。一瞬「確信歩き」をしかけたがその結果に天を仰いだ。

　「他の投手だったら間違いなくスタンドに入っていた手ごたえでした。」

試合後に沢村が率直に感想を述べていた。

　2巡目の4回、2球目の外角へ外れたチェンジアップを強引に打っての右翼席への16号2ラン本塁打。「彼はチェンジアップだと確信して強く振っているね。恐ろしく目の良い打者だよ。」タイタンズのリンチ監督は苦笑を浮かべながら彼を称賛した。

　6回の3巡目は一死一塁からチャンスを広げる安打を放つなど活躍。ただ、レイザースは8回に逆転2ラン本塁打を浴びて7対6と敗戦。

5月25日（水）

　雨のため試合中止。代替試合は6月13日。移動日を潰しての試合になる。レイザースはそのままセントピートへの帰路に就いた。

5月26日（木）

　移動日で試合休み。沢村は夜はデモンズ夫妻と食事。（公にはできないがオールスターゲームのエントリーシートで『外野手枠』を譲ったことへのお礼に奢（おご）ってもらったのだ。そして亜美ちゃんへのご褒美（プレゼント）選びをデモンズ夫人に手伝ってもらったという。）

5月27日（金）

　ひさしぶりの本拠地。相手は今月上旬にビジターで対戦したクリーブランド・インディペンデンスだ。沢村の登板は先日の雨天中止での「スライド」ではなく「お流れ」になったようだ。

　先発投手はレイザースが左のエース、ブライスに対してインディペンデンスは右腕のトールマン。今季は5勝1敗と好調だ。沢村は5番左翼手。

　2回の先頭打者の場面で二塁打で出ると下位打線がつながり4得点のきっかけになる。そして7回には走者二塁一塁からの3塁打。4打数3安打と本塁打が出ればサイクル安打という試合だった。ブライスの圧巻の12奪三振もあり7対0と圧勝した。

　5月28日（土）

　そろそろ学生や子どもたちは夏休みを迎える。ホームチーム練習の終わりには沢村にボールとサインペンを手に待ち構えたファンがずらりとフェンス際につめかけていた。その多くは子どもたちだ。相変わらず子どもからの人気は高い。沢村は丁寧にサインに応じていく。

　本日の沢村は4番左翼手。主砲のドンゴリアを1番打者に据える変わったオーダーである。そのドンゴリアには3号本塁打も出たが肝心の4番打者の沢村は一安打のみ。ただ珍しく今季5個目の盗塁を決めた。チームも4対7で敗戦。

　この日バチスカーフはシカゴ・ホワイトアックス戦で20号本塁打を放つ。

5月29日（日）

　クリーブランドの最終戦。沢村は4番左翼手での先発出場。クリーブランドはア・リーグ中地区を24勝18敗で首位を走っている。

　オールスターゲームのファン投票が始まったため、自軍の選手に投票を呼びかけるキャンペーンもあった。ここ数年で投票用紙よりもインターネットによる投票が上回ってきたこともあり、そんなお知らせも増えてきた。

　沢村は「指名打者」でのエントリーなのでボストンのオルディスやシカゴ・ホワイトアックスのコルネコなどと競合することになる。昨年は最終投票で「涙を飲んだ」形になったが、今季も好調なことから上位の投票結果も期待できそうだ。

　とはいえ、今日は4番「左翼手」での先発。先発投手はエリクソン、相手先発は右腕のミスターソン。今季2度目の対戦だ。

　最初の打席こそ外角へのシンカーを三塁手の好捕で安打を阻止されたが3回。チームが2点先制して二死三塁の2巡目の打席、初回と同じシンカーを右翼席へ叩き込む17号2ラン本塁打。

　チームは10対0で快勝。エリクソンも7回を3安打無失点6奪三振と会心の投球。投打ががっちりとかみ合っての勝利となった。

今季の沢村健の成績

打撃

（左）打席98　打数78　安打34　単打10　二塁打９　三塁打4　本塁打15　打点36　四球20（敬遠6）

（右）打席24　打数20　安打9　単打5　二塁打1　三塁打1　本塁打2　打点7　四球4（死球1）

合計　打席122　打数98　安打43　単打15　二塁打10　三塁打5　本塁打17　打点43

四球24（死球1敬遠6）盗塁5

打率.480 出塁率.582　長打率1.204　OPS1.786

投手

（左）試合4（先発4）28回　自責点6　防御率1.93　2勝0敗　QS4　被安打18　四球7　三振24　WHIP 0.8929（とても良い）

(右）試合3（先発3）18回　自責点10　防御率5.00　0勝3敗　QS2　被安打19　四球2 三振12　WHIP1.167(良い）