万年補欠の下克上！（第4期）はずれスキル「支援魔法（対単体）」しか持たない低辺勇者は野球少年に転生してメジャーリーグで無双する。

【13回の表】そんな時もあるさ。

5月21日（土）

　本日は「休養日」。まあいつ代打で呼ばれても良いように準備はするのだけど。

スタジアムのカフェテリアでランチを摂っているとベンチコーチのデイブに声をかけられる。

　「健、キミのオールスターゲームのエントリーだけど、『指名打者』でだ。」

来週からオールスターゲームへのファン投票が始まる。確かに今季は二塁手や左翼手もやったけど、そこに落ち着くのか。

「私は外野手ではないと？」

デイブは少し苦笑まじりに言った。

「ジョニーが外野手でエントリーを希望してね。」

ジョニーを指名打者にするために俺は守備に就いているのだが。アメリカにおける「指名打者」は実はあまり地位が高くはない。「投手」に対して「野手」という言葉があるように、打って守って初めて「一人前」なのだ。記者たちの間では指名打者は「MVP」の投票対象にはしないという不文律にも似たルールがあるとすらされている。

　ジョニーとしては体力の衰えのために指名打者にあえて「甘んじている」のだがやはり「野手」とみなされたいというプライドがあるのだろう。ここは「先輩の顔を立てて」俺が指名打者ということなのか。

　俺は投手をこなす体力を温存するためなら指名打者で構わないのだ。でもジョニーには後で美味いものでもおごらせたろ。

　今日は休養日だがほかの先発投手のようにベンチ入り免除の「完全休養」ではない。ナ・リーグは投手も打席に立つため、どうしても代打攻勢となり代打の「駒」の数は必要なのだ。

　俺の出番は9回一死一塁。チームは5対3と2点ビハインドの場面。本塁打が出れば同点の場面。俺が打席に立った瞬間。捕手が立ち上がって「申告敬遠」。一塁が空いてなくてもかい……うん、知ってた。硬いベンチに2時間以上座ってこれですかい。この後が続かずそのまま敗戦。　

　ちなみに同日バチスカーフは2発の本塁打を放ち18本で首位。グレンダーソンも15号を放つ。

5月22日（日）

　今日は移動日のためデーゲーム。朝のうちに亜美から通信があり、リーグ戦が終わったとのこと。つくば大学は結局3勝10敗勝ち点1の5位で終了したという。最下位だと2部リーグの首位と入れ替え戦に回されるのだから「首の皮一枚」でつながったというところか。それでも亜美個人としては2季連続で首位打者とベストナインのタイトルを獲得したのだからすごい。「何かご褒美をくれ」と言ってたな。

　俺も「規定打席」に到達できさえすれば「三冠王」を目指せるのだが、今のところ投手との二刀流では「体力的に」なかなか難しい。プロの世界で質を落とさずに量をこなすには「超一流」の体力が必須であり俺はまだその域までは達していないのだ。

　今日は4番二塁手での先発。指名打者を使えないナ・リーグ主催の試合でジョニーを外野手で使うためにさらに俺が二塁に押し出された形だ。

　試合は0対4で勝ち、俺もタイムリー2塁打を放ち「4番の責任」を果たした。

ちなみにヤーナーズのグレンダーソンが16号本塁打で単独2位。

　試合後、マイアミから次の遠征地デトロイトへ。

5月23日（月）

　デトロイトもアメリカ五大湖周辺の都市である。大量の真水は工業用水となりアメリカの工業を支えてきたわけだ。ちなみにデトロイトはアメリカの自動車産業の中心地でもある。BIG3と呼ばれるアメリカの主要な自動車会社の本社が集まっているのだ。

　デトロイト・タイタンズもワールドシリーズを4度制した古豪であり名門である。

エースのジャスティン・バートランダー、主砲のミゲル・カブレロを中心にしたチームである。どちらも投手三冠・打撃三冠を狙える超一流な選手で将来の殿堂入りは確実視されている。

　ただ彼らから本塁打を打とうが三振を奪おうが数字は同じだ。対戦しないに越したことはない。勝てる時に勝つ。それがプロだ。

　俺は5番左翼手での先発出場。相手投手が左腕のコーラ。こちらはヘル吉。

俺は3打数1安打1四球と可も不可もないもの。ただチームは6対4で敗戦。

　今月3連勝中だったヘル吉だが6回1/3投げて2失点で負け投手に。まあそんなときもある。

　今季の沢村健の成績

打撃

（左）打席87　打数68　安打28　単打8　二塁打8　三塁打3　本塁打13　打点30　四球19（敬遠6）

（右）打席23　打数19　安打8　単打4　二塁打1　三塁打1　本塁打2　打点7　四球4（死球1）

合計　打席110　打数87　安打36　単打12　二塁打9　三塁打4　本塁打15　打点37

四球23（死球1敬遠6）盗塁4

打率.460 出塁率.573　長打率1.172　OPS1.745

投手

（左）試合4（先発4）28回　自責点6　防御率1.93　2勝0敗　QS4　被安打18　四球7　三振24　WHIP 0.8929（とても良い）

(右）試合3（先発3）18回　自責点10　防御率5.00　0勝3敗　QS2　被安打19　四球2 三振12　WHIP1.167(良い）