【12回の裏】「リアル二刀流」の日

5月17日(火)【小原由香ダルトン】


 NYヤーナーズはやはり特別なチームだ。


 主将のデレク・ジーカーをはじめ、カーチス・グレンダーソン、マーク・テシェイラ、A・ロッド、ホルヘ・ポセダなどシルバー・スラッガー賞の常連やMVPに輝いたスター選手がずらりと並ぶ。いつもはガラガラのトロピカーラ・フィールドにも多くの観客がつめかける。


 沢村は5番左翼手。試合前の練習ではヤーナーズの選手たちからサインをもらって回っていた。優勝がかかる後半戦になるともらいに行きづらいから、というもっともらしいことを言っていたが。


 先発はレイザースが右のエース、フィールズ。ヤーナーズは今季先発投手陣の座をつかんだナヴァ。ここまで3勝3敗となかなかのもの。ただ制球がかなり荒れていた。沢村は3打数1安打1四球(申告敬遠)。外角を割と広くとる球審だったようで打者不利だったようだ。6回の3巡目の打席は一死三塁二塁からの申告敬遠。さすがに球場はブーイングの嵐。


 結局試合はレイザースが2対6での敗戦。1勝1敗のタイで終える。

試合後はみな球場からバスに乗り込む。トロントへの遠征である。


5月18日(水)


 トロントの気候はようやく「春」になったと言ったところ。ただ開閉式ドームのフォージャー・センターは屋根を閉じた状態だ。今日はナイトゲームなのでさすがに寒いのだ。エアコンの設定気温は20℃くらいなのでアウターを脱ごうかどうか迷うレベル。ただこの気温でTシャツ短パンの男性がかなりいるのでいつも自分の感覚がおかしいのだろうか、と思ってしまうことも。


 先発はレイザースがエリクソン、トロントがリスター(右腕)。リスターは今季故障が続くトロントの先発投手陣のために引き揚げられた選手。でも3勝3敗と結果を出している。沢村は1巡目は四球。2巡目は死球で出塁したドンゴリアを一塁に置いての14号2ラン本塁打。真ん中やや内よりの絶好球だった。


 主砲のバチスカーフの「ライバル」と目されていることもあり、本塁打を打っても観客の反応は割と冷ややかだ。チームは5対6と接戦を制した。


5月19日(木)


 沢村は休養の「先発落ち」。おそらく明日の先発投手だからだろう。前日に先発投手を務めたエリクソンも休養日なだけあって、仲良く選手の雑用に生を出していた。もちろん、エリクソンの場合は練習後宿舎に戻るが沢村はベンチで出番を待つ。


「しばらく遠征が続くんでちょっと前倒しで注文したんで。」

ドリンク担当なわけだがほぼ酒。それもかなりの酒豪が多いため積み込みだけでも大変である。


 ちなみに試合はトロントが3対2で勝利。レイザースは次の遠征先のマイアミへ。


5月20日(金)


 マイアミ・ミーティオスはナ・リーグ東地区に所属しフロリダ半島東岸の都市、マイアミにある。いわゆる「フロリダ・ダービー」というところだろう。お互いに初めての「リーグ交流戦インターリーグ」である、


 ちなみにナ・リーグは指名打者制度を導入していないので投手も打席に立つ。そう、今日先発投手を務める沢村の「リアル二刀流」の試合なのだ。


 沢村は9番投手での先発出場。今日は左投げである。もう少し上の打順でも良かっただろうがやはり「体力スタミナ」を心配されてのことだろう。


 ジャンカルロ・スタンソンは沢村の一つ歳上だがすでにマイアミで外野のレギュラーポジションをつかんでいる逸材である。。そして沢村とはAA時代からの「ライバル」関係にある選手だ。


 「健、今日は投げるんだってな。ど真ん中に4シームくれよ。」

「外角低めに縦スラならサービスで投げてやってもいいぞ。」

しばらく二人で話しこんでいた。


 今日の沢村の出来は悪くはなかったが味方のまずい守備と攻撃に足を引っ張られる形に。


 初回いきなり2塁打を打たれたものの、その後2者連続内野ゴロに抑えたものの、1点を取られる。


 4回にはスタンソンに外角低めに落とす縦スラを左翼席に運ばれる10号本塁打を献上。「わかっても打てないレベル」ではなかったと本人は反省していたが。


 6回には自らの15号ソロ本塁打で同点においつくも、一塁にいたエリオット・ジャクソンが盗塁失敗していなければ逆転していたはず。結局6回3失点で勝ち負けつかなかったが、後続がふんばれず8回2失点して5対3で敗戦。沢村は5月にまだ勝ち星がない状態。


 今季初の「リアル二刀流」はほろ苦い結果に終わったのだ。




 今季の沢村健の成績


打撃

(左)打席81 打数64 安打27 単打8 二塁打7 三塁打3 本塁打13 打点29 四球17(敬遠5)

(右)打席19 打数16 安打7 単打3 二塁打1 三塁打1 本塁打2 打点7 四球3(死球1)


合計 打席100 打数80 安打34 単打11 二塁打8 三塁打4 本塁打15 打点36

四球20(死球1敬遠5)盗塁4

打率.475 出塁率.580 長打率1.238 OPS1.818


投手

(左)試合4(先発4)28回 自責点6 防御率1.93 2勝0敗 QS4 被安打18 四球7 三振24 WHIP 0.8929(とても良い)

(右)試合3(先発3)18回 自責点10 防御率5.00 0勝3敗 QS2 被安打19 四球2 三振12 WHIP1.167(良い)


合計 試合7(先発7)46回 自責点16 防御率3.31 2勝3敗 QS6 被安打37

 四球9 三振36 WHIP1.000(とても良い)



 


 


 

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