【10回の表】外野手のガイヤスさん

5月5日(木)


 日本では「子どもの日」。もちろんアメリカではド平日。日本人の観客もちらほらと見える。新聞紙で作った「カブト」を被った子もいた。明日は日本も平日なんだけど大丈夫なん?と思ったがそこはツッコまない方が良いのだろう。


 「ねえ健、今サインしてあげたの日本人?……あの子たちがかぶってんのなに?」

ヘル吉が「かぶと」に食いつく。

「うん、今日は日本じゃ『子どもの日』なんよ。あれはヘルメットを紙で折ったやつだよ。あー、サムライのヘルメットな。」

 

そういえばアメリカには子どもの日ってあったっけ。(制度としてはあるようですが祝日ではないようです。作者註。)


 俺は前日投手として先発したこともあり5番「指名打者」。左翼手に回るジョニー(デモンズ)が「オッサンに気遣って」指名打者を代われ的なことを言ってくるけど

「いやいや、まだまだお若いですよ」とおだてると黙っちゃうのが笑える。


 先発はこちらがウェズ、あちらは今季から先発ローテーションに入ったドレイク(右腕)。力のある投球だがストライクとボールがはっきりしすぎていた。


 3回裏のの2巡目、レイザース打線が捉える。ジョアンとショーンの連続二塁打ダブルで先制点をあげると一死のあとゾルディスト四球、ジョニーのタイムリーで2点目、さらにドンゴを四球で歩かせ満塁。ここで俺。たまらず投手コーチがマウンドへ。


 初球は少し外に外れていたがジャッジはストライク。これは捕手のフレーミング上手いな。文句の一つも言ってやりたいけど今日の球審は「超大物」。世界審判協会の代表様である。審判がこのざまだと内角は来ないな。


 ところが球審は今度はギリギリ入った外角低めの4シームをボールのコール。さっきより内側やったやんけ!3球目も外側いっぱいの4シーム。流すように打った打球はレフトスタンドへの10号満塁本塁打グランドスラム。2年連続の2桁本塁打。しかもホームで。ただし観客は1万2000人しか入っていなかった。(収容人数キャパの1/3程度)ちょっと悲しい。


 試合も6対1と勝利。「日本の子どもたちに本塁打のプレゼントですね。」と日本からの記者に言われ少し気恥ずかしかった。


 5月6日(金)


 今日からボルティモア・オーソドックスとのアウエーでの3連戦。ダーラムから新たな選手が召集された。ブランドン・ガイヤース。外野手だ。……ガイヤースだけに。


 これは中継ぎ投手のロブ・ディランが15日間の故障者リストに入ったための措置。ダーラムでの試合で結果を出していたので、ここいらへんで「お披露目」と言ったところか。


 植原さんが所属する球団なのでご挨拶に伺う。

「なんや健、自分おまえ もう上に上がってきたんか。」

それ松阪さんにも言われましたけど。もちろん「半分は」冗談である。


 東日本大震災の時はア・リーグ東地区の日本人選手たちの募金活動のまとめ役になってくださったことへの感謝も述べた。植原さん自身も阪神淡路大震災の経験があるので今回の支援にはすぐに踏み切ることができたのだ。


「そういやずいぶんと寄付金で見栄張いきったみたいやなぁ。老後は大丈夫か?」

先輩たちに比べて高額な寄付をしたことを言われているのだろう。

「老後てまだ二十歳ですがな。先行投資ばくちとしては悪くはないと思いますけど。少なくともスポンサー様ウケは良かったですよ。日本で稼いだ金はとりあえず全部ぶっこんできましたから。」


「せやろな。俺も 自分おまえ くらい若かったらそれくらい思い切れたやろけどな。俺らは引退後さきのこともも見なきゃならんから辛いわ。」


 日本のFA権の取得期間の問題もあり、日本人MLB選手のほとんどは30歳前後での挑戦が多い。これが25歳くらいならアメリカで出せる結果はずいぶんと違ってくるはずだ。


 アメリカ人は人間関係では年齢を意識しないくせに選手契約では日本人よりはるかに年齢にこだわるのだ。


 ちなみに今日の俺はガイヤースに譲っての先発落ち。とは言えガイヤースも1巡目の打席でチーム3人目となるメジャー初打席初本塁打を放った。ちなみにチーム2人目は俺である。


 ブランドン(ガイヤース)は8回走者一塁の場面で代打を出されていた。ちなみに代打俺。右翼線を破る3塁打で打点もついた。植原さんも9回に登板したが俺との対決は無し。2対6でチームも勝利。


 嬉しそうに地元TV局のヒーローインタビューに答えるブランドンだが、彼はまだ知らない。これから新人の洗礼が待ち構えていることを。(正確には知っているはずだけどコロっと忘れてる)


 ちなみに本日の彼に割り当てられるコスプレチョイスは「チアガール」です。

 


 沢村健の今季の成績。


打撃

(左)打席47 打数37 安打18 単打5 二塁打3 三塁打2 本塁打8 打点17 四球9(敬遠2)

(右)打席18 打数15 安打7 単打3 二塁打1 三塁打1 本塁打2 打点7 四球3(死球1)


合計 打席65 打数52 安打25 単打8 二塁打4 三塁打3 本塁打10 打点24

四球12(死球1敬遠2)盗塁3

打率.481 出塁率.565 長打率1.250 OPS1.815


投手

(左)試合2(先発2)16回 失点1 防御率0.56 2勝0敗 QS2 被安打7 四球5 三振14 WHIP 0.812(とても良い)

(右)試合2(先発2)13回 失点6 防御率4.15 0勝2敗 QS2 被安打11 四球2

三振10 WHIP1.083(良い)


合計 試合4(先発4)29回 失点7 防御率2.17 2勝2敗 QS4 被安打18 四球7

三振24 WHIP0.8621(とても良い)

 


 


 



 

 

 



 


 

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