【9回の表】コンディションをキープせよ。

4月25日(月)


 つぎのミネソタ遠征に備えての休日。午前中はプールでゆったり泳いで身体の疲れをぬき、午後はベンKさんの施術を受ける。彼の魔法の原理は俺のいた世界とは別の系統の世界のものなので俺には理解できないが確実に効く。いわゆる「気功」に近いものなのだそうだが、効き目は「気」のせいではないのが助かる。


4月26日(火)


 朝から飛行機でミネソタ州ミネアポリスへ。ちなみに「ミネソタ」というチームの都市名も「タンパベイ」と一緒で、ミネアポリスという一つの街というよりミシシッピ川を挟んですぐ隣にあるセントポールを「都市圏」として含めているからだ。


 ただ生憎の雨のため試合は順延に。ミネソタとは「地区交流戦インターディビジョン」のため最終日の28日がダブルヘッダーに変更。先発ローテーションはそのままスライド。俺はその第二試合に先発予定に。


4月27日(水)


雨が上がり切ったとはいえない曇り空。しかも真冬並みの冷え込み。ナイトゲームのため気温が5℃くらい。しかも寒々しい風が吹く。ベンチコート必須だ。ジョニーが「寒い、俺と変われ。(左翼守備につけ)」と半分以上本気で俺に迫るレベル。


 正直なところ指先の感覚がヤバいレベル。だがそれにもかかわらず36,000人を超える大観衆がつめかける。うちの不人気球団ぶりがヤバい。今日の俺は1番指名打者。


 先発左腕のラリアーノはパワータイプの投手だ。1巡目の打席も4シームをしっかりとたたいて「行った」と思ったが二塁打。軌道が予見できるから確実に当てることはできるが百発百中本塁打というわけにはいかない。

俺の方がもう少しパワーをつける必要があるのだ。


 それ以外は3四球。今日は寒さのせいでコントロールが定まらなかったのだろうか。ただ1番打者リードオフマンとしては正解だった。


4月28日(木)


(第一試合)

今日は4番指名打者。第二試合で先発のため試合途中での交代もある。今日の先発投手はヘル吉。昨日と変わらぬ寒さ(5℃)に震えている。安心しろ。俺なんか日が暮れてから先発だぞ。


 1巡目は一死三塁二塁の場面。相手バッテリーは「迷わず」に申告敬遠。しかたない。ただゾルディストにタイムリーが出て2点先制。そこから打線「爆発」。


 4回の3巡目の打席では真ん中へのシンカーを右翼席への7号2ラン本塁打。この時点で1対8と大量リード。6回の4巡目の打席で2番手投手のホーンズビーから右前安打を放ったところで代走を出されてお役御免に。第二試合の先発に備えることになる。


 「ねえ。次の試合の分の得点は残しておいてよ。」そう言ってベンチを後にした。2対15での完勝だった。


(第二試合)


 第一試合の途中から空が晴れて気温があがり14℃くらいに。アメリカ人はドーム球場をあまり好まない傾向があるが日本人にはよくわからない。あと雨に降られても小降り程度なら傘もささないところもさらにわからん。そして気温が10℃超えた程度でTシャツ短パンで観戦するオッサンたちはさらにさらにわからん。


 ただ投手としては暑いよりはましなわけで。試合開始プレーボールは夜7時。観客数は満員御礼の3万6000人。俺は左投げでの先発。今日の球審はわりとストライクゾーンどおりに取る人だった。


 湿度はまあまああったのでボールに指のかかりもよくて投げていていい感じ。ほかの競技と比べて球場や気候にいちいち影響されるところが面白い。


 移動の関係もあって今日は早く試合を終わらせたいため、打たせて取るピッチング

7回裏に主砲のモレノに適時打を浴びたものの、7回1失点と上々のできだった。チームも6得点をあげてくれて2勝目をあげた。


 試合が終わればそのまま空港へ。明日も試合があるので機内ではひたすら眠っていた。


 4月29日(金)


 午前様でセントピートについて泥のように眠って起きたらもう球場入りの時間。とりあえずベンKさんがいてくれて感謝。


 今日からはアンカーズ3連戦。ただ今日は「休養」命令が出る。まぁ命令されずとも今日は休みたかったのも事実。チームも連勝ストップ。


4月30日(土)


 日本ではゴールデンウイークの時期。サイン待ちのファンの群れに黒髪のアジア人が増えたので気が付いた。家族旅行や学生さん。そして新婚さんも多かった。

「日本からわざわざ。ありがとうございます。ディズ〇ーワールドは行かれました?あ、これからですか、そうですか。」

大きな震災があっても必要以上に自粛などするよりもこうやって日常を取り戻すほうが大切なことかもしれない。


 今季のアンカーズは元東京ギガンテスの松居さんがぬけたが、同じギガンテス出身の左腕の名投手高梁久徳たかはしひさのりさんが加入している。


 チームとしては4月の最初の週に対戦しているがその時には俺はいなかった。とりあえずご挨拶に。報道陣を交えて和やかな雰囲気だった。ちなみに俺とは初対面だ。顔つきは怖そうな感じだったがめちゃくちゃ気さくでお茶目なタイプ。ホッとする。


「いやあ高梁さん、東京弁がお上手っすねえ。」

って褒めたら(振りを入れたら)

「おおきに。……って関西人ちゃうわ!」

と即完璧なツッコミが。ちなみに東京生まれだそう。



 沢村健の今季の成績。


打撃

(左)打席34 打数27 安打12 単打3 二塁打3 三塁打1 本塁打5 打点11 四球7(敬遠2)

(右)打席15 打数12 安打6 単打2 二塁打1 三塁打1 本塁打2 打点7 四球3(死球1)


合計 打席49 打数39 安打18 単打5 二塁打4 三塁打2 本塁打7 打点18

四球10(死球1敬遠2)

打率.462 出塁率.571 長打率1.205 OPS1.777


投手

(左)試合2(先発2)16回 失点1 防御率0.56 2勝0敗 QS2 被安打7 四球5 三振14 WHIP 0.812(とても良い)

(右)試合1(先発1)6回 失点3 防御率4.50 0勝1敗 QS1 被安打5 四球2

三振6 WHIP1.167(良い)


合計 試合3(先3)22回 自責点4 防御率1.80 2勝1敗 QS3 被安打12 四球7

三振16 WHIP0.8636(とても良い)


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