【1回の裏】私と彼の秘密の魔法
2月15日(木)(松崎亜美)
どれだけ頑張っても上半身は男性の2/3。下半身は男性の3/4。
これが女性の筋力量の「限界」だ。
とはいえ個人の私は「すべての」男性の95%よりも私は高い身体能力を持っているだろう。しかし私が相対する男子は残り5%のさらに「上澄み」であるトップアスリートだ。私は男性の上位0.1%の身体能力を持つ者たちが住まう世界に挑もうとしているのだ。
「女性を差別する気はさらさらないけど『この世界』じゃ男女の差は絶対的だよね。それはトップに上がれば上がるほど思い知らされると思うよ。俺も人種の差というものをいやというほど思い知らされたしな。」
健の感想ももっともだった。彼ですらアメリカに行くと(同じ男性とはいえ)白人や黒人の生来の身体能力の高さに
「魔法、使ってみる?」
それが彼の提案だった。彼の魔法は人間の一時的な身体強化を図るものと、身体の操作性を向上させるものがある。でも、魔法に頼るなんて「ドーピング」と一緒なのでは?
ふと脳裏を
「禁止されていればね。」
存在自体が認識されていないものを禁ずる法もまた存在しないのだ。
そして彼の魔法は基本的には「倍化魔法」なのだ。0を100にする魔法ではない。どんなに係数(魔法)があがっても変数(私の資質)が低ければ意味がない。つまり私自身がトレーニングをつづけなければならないのだ。
「ひどい魔法だね。」
私が抗議すると彼は苦笑した。
「うん。俺の魔法は前世ではザコ
彼は少し表情を「真面目モード」に戻してから言った。
「それと投手もやってみれば?」
提案されたのはまさかの二刀流。もちろん私が投げる投球速度は「女子」野球界では最速の部類に入る。それでも
ただ、すべては私の努力次第、報われるかどうかもわからない努力だ。もちろんすべての努力は無駄にはならないことは知っているが。
「大丈夫、日本でもその球速で一流だった投手もいるよ。まあ絶対的な制球力に裏打ちされていたけどね。だけど信じて欲しい。俺の魔法は『努力が報われる魔法』だから。」
彼の言うことは実績によって裏打ちされている。だから彼を信じて努力してみるのも悪くはない。ただ私が死ぬほど努力しないとなんの効果もないのだが。
「じゃあ手を貸して。」
私の持つ収納魔法の魔法空間を通じて繋いだ彼の手の感触、流れ込んでくる魔力。
私が使える魔法は2つ。筋肉の増強と疲労回復を促す「
この世界の他のほとんどの人と違い、私は彼と同じ「異世界」の魔法を行使することができる。私は彼の前世の恋人だった「松崎亜美」の転生先の器として「用意」されていたからだ。
今日のわたしは大学の期末試験だ。これが終わればこの週末から3月末まで春休み。その始まりは野球部での2週間の九州遠征キャンプだ。3月後半には新入部員もやってくる。私にとっても新たな挑戦のはじまりなのだ。
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魔法の設定(主に初見読者様向け)
『
敵を直接攻撃するのではなく、自己や味方の身体能力を魔法でかさ上げして攻撃力を挙げる術式のことを指す。敵を弱体化させる「状態異常魔法」とセットである。
「
「
「麻痺・毒・混乱・怒り・怯え・遅延」
《基本魔法》
作者的には「なろうセット」と呼んでいる「収納、鑑定、言語、通信、浄化(洗濯)」魔法。個人に与えらえる
《魔法編集》
主人公は「転生特典」として手持ち魔法の「編集権」ももっている。基本魔法と特殊魔法になる支援魔法を合わせて新たな魔法を組み合わせることもできるし、術式をかける部分によって新しい魔法になることになる。
たとえば「鑑定+加速(脳視覚野)」で「予見眼(神眼)魔法」。
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