スプリングトレーニングなのです!
【2回の表】新たなライバル候補?
2月16日(水)
「健!今年もよろしくな。」
久しぶりに顔を合わせるチームメイト。そして「はじめまして」の人も多い。今日から始まる「スプリングトレーニング」。スプリングトレーニングとはNPBで言うところの春季キャンプとオープン戦を合わせた呼称と考えてもらっていい。
NPBでは毎年2月1日からだが、MLBでは2月の第3水曜日あたりが通例だ。だが投手と捕手(いわゆるバッテリー陣)はその一週前から召集される。それだけでもメジャー契約を結んでいる選手(23人くらい)と傘下のマイナーリーグチームに所属する
シーズンのはじめは「メディカルチェック」から。健康診断と運動能力テストを合わせたようなものだが、やはり野球選手が受けるだけあり、とくに肘や肩に関しては念入りに
結果はわかってはいるものの無事にクリアできるとほっとするものだ。そこからウオーミングアップの続きをし、先発投手陣(候補も含む)がブルペンに集められた。
昨年の先発投手は4人。左のエースは20勝投手になったデビッド・ブライス。右のエース、ジム・フィールズ。左右投げで11勝をあげた俺。俺と同じルーキーイヤーで10勝をあげた右投げ投手ウェズリー・ダビッドソン。
そこにトレードで抜けたマット・ゲイザー(昨季13勝)の穴をだれが埋めるか。有力候補は3人。昨季メジャー初昇格を果たしたエリクソン。
ケガから復帰した長身のノイマン。ロングリリーフもこなせるソニースタインだ。
さらにここのシャーロット・ローバークラブス(A+級)で昨季のエースだったマット・ムーニー(左)がプロスペクト枠で呼ばれていた。ムーニーは俺より一つ年上である。今季のプロスペクトランキングで全米3位にランクづけられたまさに「期待の星」だ。
監督やコーチの前で捕手を座らせての投げ込み。「投げ込み」と言っても50球程度。両投げ投手の俺の場合は特例で左右30球ずつ。投手の投球数はキャンプの時から徹底的に管理されているのだ。「消耗品」だからこその管理でもある。
めちゃくちゃムーニーからの視線を感じる。やっぱりアジア系は舐められやすいのか。ブルペンを出ると話しかけられる。ちなみに彼とは今日が初対面。
「健、お前軽く投げてるのにけっこう球速出るなぁ。」
あれ、思ったより感じが悪くない。白人が全員有色人種差別すると決めつけないほうがいいか。
「俺はコーチはしてねーぞ。」
少しからかってやると
「なんだよ、ケチくせーな。」
なかなか良い反応。いや、どちらかと言えば向上心が強いタイプか。
「なあ、せっかく両投げなのに打者ごとに腕を変えないの?そっちの方がカッコ良くないか?」
「いや、肩を二つも作るのはめんどくさいからやらねーよ。考えればわかるだろ。」
ムーニーは左腕投手の中でも速球派に入る。150km/hを超える球速を誇っているのだ。
「マット(ムーニー)、健はお前と同じくらいの球速でもしっかりと四隅に投げ分けられんだ。伊達に新人王じゃないんだぞ。(プロスペクト)ランキング3位はいいけど、浮かれてないでちゃんと見て学べよ。そのための『招待選手』だ。さあ、お前の番だ、早く入れ。」
彼はブルペンキャッチャーのスコットに呼ばれてブルペンへと入っていく。いや俺の方が速いってば!
全体の練習を終えると日本からの報道陣の取材を受ける。こんな初日から来てくれるのは日本のマスコミくらいだ。
もっともTV局は来ていないが、最近では家庭用ビデオカメラでもTV放映に
今季の目標を聞かれる。
「とにかくポストシーズンに出ることですね。(強豪の)ボストンもヤーナーズもいる地区ですので、なかなか厳しい地区ではありますけど、ワイルドカードでもいいので狙っていければというところです。」
ただ、皆さんが聞きたかったのは「個人」の目標だったようだ。
「とにかく昨季の成績を超えることです。昨季は1か月(マイナーリーグの)ダーラムだったのでしっかりと開幕から(本拠地の)セントピートにいられるように、オープン戦からしっかりと数字を残していきたいですね。」
まぁタイトルが獲れるに越したことはないが、待っているのは「2年目のジンクス」なのである。
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プロスペクトランキング2671年(開幕前)
1位 マイク・サーモン(LAアンカーズ)
2位 ブライス・ハーバー(ワシントン・ネイチャーズ)
3位 マット・ムーニー(TBレイザース)
4位 フリオ・テーラン(アトランタ・ブレイザーズ)
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10位 マニー・マッチャード(ボルチモア・オーソドックス)
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18位 トニー・リゾット(サンディエゴ・パイオニアーズ)
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