第5話 ファイト!!

 衝撃!冬井優妃は見た!私ホントに、目撃したんです。

 見たんです。瑠々さんと羽村さんが歩いているところを!しかも、あろうことか、放課後に二人で。

 それは、通学路、下校路といったほうがいいのかな、二人で帰っているのを、こっそり気がついて、振り返ると、羽村さんが走って来て、「冬井さん!こんなに早いの珍しいね!ぐうぜん!」話しかけてくれて嬉しいのか、ちょっと瑠々ちゃんへの嫉妬もあるのか、私は曖昧にうなずきました。


 「そうだ!紹介するね、冬井さんだよ。同じクラスの子!」

瑠々ちゃんは、にこっと口角を上げて、「伊勢寺 瑠々です、はじめまして。」

 「はじめまして。冬井優妃です。よろしくね、いせでらさん?」

瑠々ちゃんは、少し笑って、「呼びにくいでしょ~。だから瑠々でいいよ。」

 「瑠々ちゃん。」 「なあに優妃ちゃん。」

話してみると、お人形みたいな顔からイメージできないようなフランクさで、びっくりです。

 「あ、」と瑠々ちゃん。すると、こちらに近づいて来るではありませんか。どうしたんだろう。不思議そうな顔の羽村さんを差し置いて、どんどん近づいてきます。

 「袖、ほつれてるよ。」

瑠々ちゃんは私の手首を握って、ぐっと持ち上げました。

 「ほ、ほんとだ、帰ったら直さなきゃ…。」

 「ちょっと待ってて、」と瑠々ちゃん。すると、バッグの中のポーチから、小さなハサミを取り出して、ほつれた部分を直してくれたのです。

 女子力…。おなごちから…。。

 「はい、これで大丈夫。」

 「あ、ありがとう…。」

私を見る瑠々ちゃんの瞳は、くるくる丸くて大きくて、吸い込まれそうでした。

 君の瞳はブラックホール。きっと誰かがそう歌っているでしょう。

 

 「またイケメン瑠々ちゃん登場だあ~!」とはしゃぐ羽村さん。

 「イケメンって言うなよ~。そっちだって冬井ちゃんにあんなこと。。。」

 あ、あんなこと??

 「あ、悪いくせ出てるぞ~もう!お姫様抱っこしたことをあんなことって。。」はあ、と羽村さんのため息。

 羽村さんの、腕にかかえられる感覚。想像しただけでも、恥ずかしくなって。

体験したかったなあ、起きているときに、なんて最近は考えてしまいます。

欲張りになってきた気もします。でもヒロインは欲しいもの全部手に入れるもんね!

きゃらめりぜ先生もあとがきに書いていましたから!

  

 痩せなきゃな。ふふ。


三人で歩いていると、私の家に着いたので、バイバイ、と羽村さんと瑠々ちゃんに言うと、瑠々ちゃんは、「冬井さんの家、今日行っていい?」ときいてきました。


 瑠々ちゃんは、行動力がある。と改めて思います。羽村さんと渋谷へ出かけたのも、こんな積極性を持ち合わせていたからかもしれません。 


 瑠々ちゃんのこと、もっとよく知りたい。あと渋谷での話も聞きたい。

私は、答えました。「いいよ。待ってるね。」

 瑠々ちゃんは、「やったー!バッグ置いたらすぐ行くねー。」と返します。

 

 瑠々ちゃんが、私の部屋に、来る。

想像するだけで、緊張しました。ああいうモデル体型の女の子って、お菓子とか食べるのかな。ああどうしよう、頭をぐるぐる考えが回ります。

 

 そこに、鶴の一声(?)

 「えー、瑠々ちゃんだけズルい!ういねもいいー?」

羽村さんが、うちに!?

 「も、もちろん。」

 「あ、冬井さん今、瑠々ちゃんに悩殺されてた?」

 「そんなこと…。」ありました。

 「羽村ちゃん、優妃ちゃんを茶化すなよー。」と瑠々ちゃん。

 「えへへ、ごめん。だって瑠々ちゃんの前の冬井さん、いつもより早口なんだもん!私の前と違うんだもん!」と駄々をこねる羽村さん。頬をぷくっとさせて、かわいい。

 「誰の前でも一緒な人なんていないだろ。」と瑠々ちゃんナイスです。一本。


 「じゃあ私たち、後で行くねー。」「はーい」

家の玄関の扉を閉めた瞬間、心臓が喉から飛び出そうでした。

 瑠々ちゃんと、まして羽村さんが、家に来る!?どうしよう!?

まずお茶?お菓子?あ、片付け、あれ、あれ。

そんなお姉ちゃんが右往左往しているのを見て、先に帰って来た優二は、

 「ねーちゃん、頭の上にひよこマーク出てるよ、混乱だ。」と笑うので、

 「出てないよー。」とうそぶくと、

 「すぐ分かるよ、ねーちゃん分かりやすいし。彼氏でも来るの?ついにねーちゃんにも彼氏かあ…。」とおじさんみたいな事を言います。「彼氏じゃないもん、友達。」

 なんだー、と残念がる優二。

  「準備、俺も手伝おうか。」

 優二…。かっこいいけれど上、Tシャツくらいは着てね。半裸はまずいよ…。

 それから二人で、準備をはじめました。あと嫌がる優二に無理やり、Tシャツを着せました。


 つづきます

  

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