第10話 クロキとトキ
この世界には、お若いクロキ様とトキ様という夫婦がおります。クロキ様はいたずら好きの邪神ロキを信仰し、トキ様は処女神アルテミス様を信仰してらっしゃいました。
しかし、今より少し前の結婚はわたしたちを堕落させるために仕組まれたものでした。いろんな思惑があってのことですが、実際堕落され、争いが起きそうになると、かつてこの世を束ねていたもの達はなんとかしようと方々でいろんな画策をしました。しかも、見ている景色は一つではない。あらゆる世界を改善、改悪して、それぞれの事柄にそれぞれの取り決めをしておりました。
「抽象的すぎるのですが……」
「わたしも聞いた話ですから、神獣様がおしゃべりで楽しかったり、ひやひやしたものです」
「神獣?!」
「いるんですよ、いまはトキ様の守り神として凛々しい男子のお姿になったりしてますが」
「それとコクヨウ、当主さま?の発作はどう関係が?」
「まだ八時ですか、話せそうですね。八時、懐かしい」
「八時が何か?」
「初夜にトキ様を寝かしつけたのが八時でしたね」
「早すぎませんか?!」
「仮眠だけでもとってコトに備えねば!あとはお二人のことはよく知りません。……多分。寝屋でのことです。まさに秘め事ですよ」
「わあぁ……」
「ちょうどトキ様が嫁がれたのがミケ様と同じ歳というか今でも……」
「やめてください、やめてください!恥ずかしい!それと愛するのと発作とどう関係があるんです?!」
「まずは当時の結婚の話から。聞いたことがあるかもしれませんが、ちょっと前の結婚は悪い相性の家同士をつなぐ、子がなかなか生まれない、なんだったら新郎新婦とも乗り気ではない結婚でした」
「……いやですね、しかも占術で決められたもので家同士の話し合いも無いとか」
「そうそう、それでも、子ができる時はあるのです」
「なぜ?!」
「理由は、クロキ様。コクヨウ様のお父上の場合は父母にあたる方の自暴自棄。愛は無かったそうです。政略結婚、というのは聞いたことがありますか?それに近いと割り切ったのです」
「ええ、じゃあ、クロキ様は」
「お世話をする事も許しがもらえず、痩身の体躯、本人は気にしてらっしゃいました。ほかにも老人達から理不尽な教育を受け。野望が生まれました。いつか結婚が決まったら、必ず子を成して、老人達の鼻を明かして、蹴散らしくれる」
「かっこ、いい?」
「しかし、運ばれてくるのは悪しき縁。望み薄ですしその心の幾ばくかの企みは知らない方がいいでしょう。老人達の、虹色の茶も含めて」
「虹色の茶?」
「ミケ様が大人だからお話ししますが、クロキ様とトキ様は出会った瞬間から惹かれあってしまったのです」
「え?相性が悪いのに?」
「老人達の中に裏切り者がおり、世界にひとつだけ良縁を結んだ。それがクロキ様とトキ様です」
「ロマンスじゃないですか!うまくいけば、いけば、どうなるんです。まわりは仲の悪いカップルで、クロキ様とトキ様だけが仲睦まじい」
「そこで、おふたりは、世界を変える恋を証明してみせたのです!」
「世界を、変える、恋?」
「お二人は、こほん、まあ、ほんとうに、ほんとうに、仲睦まじかったのですが。とある試練を受けて、勝ったら今までの婚姻の取り決めを破却する、そういう勝負を老人達に挑んだか、挑まれたらしいです」
「なぜ、急に誇張するのです?」
「二人はもう、すでに一線を越えておりました」
「そこは!まだ、触れ合わずにいるべきでは?!」
「初夜に旦那様が我慢できない、早くトキ様を抱きたいとのことで」
「クロキ様ッ!」
「そう、クロキ様!」
「男らしい……」
「そこはまあ、そのあとも、しかも、結局トキ様が愛らしすぎて……」
「なんです?なんです?!」
「初めてで最後までするのはかわいそうだと……」
「はじめてだから、はじめてなのに、クロキ様ー!」
「このシノブめも、旦那様御付きの使用人から詳細を聞いて当時はもう、どこまでもお二人に尽くそうと決めました」
「あれ、虹色のお茶は?」
「それが、かわいそうなことなのです。結婚の儀の取り決めのひとつ。堕落。飲めば、その、互いを好きでなくなったり、反対に欲情したり、片方が熱が冷めたり、そんないかがわしいお茶を飲まされ、輿という乗り物や馬車に閉じ込められます」
「……下衆で鬼畜ではないですか」
「そうです。ここの話はここまで。長すぎましたね。つづきも、いつにいたしましょうか。もう全て話してしまいたいのですが」
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