第9話 夜中に来訪されて
「なっ、な、な、なっ!」
奇妙な猫が鳴くように、あてがわれた部屋でミケは後ろにつんのめって真後ろの豪奢な寝台にぶつかった。
寝巻きに着替えたコクヨウが訪ねてきたのだ。
こちらはお風呂上がりで化粧下地も塗ってないのに!
「顔がちがうな?まあいい。俺は女には興味がない。明日には帰れっ、ッ」
とまた昼間のように胸をキツく押さえて、今度はうずくまる。
ミケが駆け寄ってもさすがに今度は苦しくて動けないようだ。
人を呼ぶと
「大丈夫、すぐおさまります。百回くらい耐えてきたんです。今度も、大丈夫……」
シノブと呼ばれたなんとも形容し難い、いくつかわからぬ女性がコクヨウの背を撫でたり、嫌そうな時は手を浮かせて見守っている。
「素直でいいことです。でも、どうか落ち着いて」
やがて、ふうぅー、と長い息を吐いて、コクヨウが上半身を起こす。何事もなかったのかのようだ。
しかも、
「ねむそう……」
「お連れしますね」
男性の使用人がコクヨウの両腕をゆっくり持ち上げ、自立で歩行させながら、部屋へと連れていくようだ。
見守るしかない。
「ミケさんですか?城下の村の」
「はい、髪の色でわかる通り三毛猫模様の……ッ」
シノブが手を取る。
「どうか、世界を、いいえ、ちがう。コクヨウ様を愛してはくださいませんか?」
「お城の当主を愛する?!」
「あ、私が言うのもなんですがお飾り、血筋が正しいだけで、お飾りですから!」
あんなことがあったのにシノブは平静。
「病気なんですか?」
「この世界の皺寄せなんです。コクヨウ様の発作は。そして、ご自身の呪でもあります」
その時、遠くてメアリーの叫び声が聞こえる。
コクヨウ様!おねがいです!どうか!どうか!
「わたしをみて、と言いたいのでしょうね。あれの呪は目移りです。あるいは勘違い。愛が過ぎれば戻って来れなくなるでしょう。ダンには頑張ってもらわないと」
「?、ダンさんはよくメアリーさんを見てますよ?」
「あれも、『見ているだけ』、植物が育っていくのを優しく見守るような心持ちかも知れません。諦めてはいないようですが」
「悪いことじゃ、な、……なんです?なんの話です?」
「とにかく、コクヨウさまは、時の申し子なのです」
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