涼 と 依頼 と 翻訳チキン
「みなさん、こんスニ。涼ちゃんねる、本日はダンジョン配信です」
:涼ちゃんこんスニ~
:定型文棒読みは実家のような安心感
:Hello! pleasures
:ダンジョン配信きたー
挨拶をする涼の周囲をドローンが映す。
どうにも、古い土間の台所を思い起こさせる場所に涼はいた。
:そこなんてダンジョン?
:土間っぽい感じからまた武蔵国府史跡?
「今日は東京の国分寺駅前にある
入園料の必要な有料の公園で、広い芝生と、静かな池、季節の花なんかが綺麗な自然公園です。
その庭園の一番奥にある滝。そこの岩場の上に、古い建物風の東屋がありまして……そこの裏手に従業員用の倉庫があるんですが、その倉庫がダンジョン化しちゃってる場所です」
:つまりその土間はエントランスなのか
「はいその通りです。
エントランスはこんな感じですが、エントランスの先に行くとここの庭園そのものがダンジョン化したような自然系ダンジョンが広がっています」
:つまり今日は絶景配信か
:書架の花畑もなくなるには惜しい風景だったもんな
:ああいうのが来るなら楽しみ
「えーっと、チキンのみんなが期待しているところ申し訳ないんですが……今回はお仕事配信です」
:え?
:なん……だと……?
「ギルドから依頼を受けまして……最近、ここに見慣れないモンスターの目撃情報が増えているとのコトなので、確認しにきました。
なんか黒い人型のやつらしくて、正体が判明するまで、基本的に探索者であっても、このダンジョンは探索禁止指定されています。
今回はそんな場所の調査を依頼されたワケなんですが――調査しながら配信して構わないと依頼の時に言われたので、配信するコトにしました。
内容の関係上、普段より画面が見づらいところが多々あるかもですが、ご了承ください」
:What does Ryo say he will do?
:だれかリョのいってる おしえて
:↑まかせろ! going to works today.official commission.
:↑investigation
:↑unknown monsters that have been seen more and more recently
:Thank you! ありがと
「翻訳ニキありがとうございます。
海外チキンの方々が増えているので、こういう前説をどうするべきか、モカPたちと悩んでるんですよね」
:涼ちゃんたちは気にしなくていいよ
:都度、俺らで翻訳するから
:涼ちんたちの英語が必要な時はコメント欄からお願いするから
「なるほど。ありがとうございます。
それなら、今日の配信はそういう形でまずはやってみましょうか」
:んじゃあとりあえず to overseas CHICKENs!!
:if you don't understand,please comment like now!
:then we translation CHICKENs will answer when we notice!
:ok!
:Thank you! helps a lot!!
:翻訳ニキたちかっこいいな
:見ているみんなで楽しめるのが一番いいもんね
「翻訳ニキ、翻訳チキンを名乗るんですね。
ともあれ翻訳チキンのみなさんありがとうございます。
あ、ついでに海外チキンのみなさんに、チキンとはこの配信のリスナーのコトだって伝えておいてください」
:《翻鶏》俺コテハンつけるわ ホンチキあるいはトラチキと読んでね
:頼むぜコテハンチキン、翻訳チキン担当の代表ってことでよろ
:《翻鶏》named for translation.call me "TraChi"
:nice to meet you TC
:OK! TC!!
:《翻鶏》海外チキンたちがトラチと呼ばずTC呼ばわりしてくる!?
:よろしくなTC
:翻訳がんばれよTC
:《翻鶏》おまえらまで!?
:草
:w
:lol
:笑
コメント欄に任せておけば問題ないだろう――と、判断した涼とモカP少しの間だけコメント欄の様子を伺い、互いに小さくうなずきあう。
「では海外チキン向けの翻訳は、翻訳チキンのみなさんに甘えさせてもらいうとして……ボクはこれからダンジョンに潜っていこうかと思います」
いつもの襟が口元を隠す黒いコートの具合を確かめてから、涼は土間風エントランスにあるかまどの形をした入り口へと潜っていく。
土で出来たような階段を下りながら、涼はドローンへと語りかける。
「このダンジョンって、中が庭園の雰囲気まんまなので、ダンジョンそのものが結構綺麗なところなんですよね。
庭園の四季と連動しているのか、春ならダンジョン全体に桜が咲いたり、夏だと
涼が解説しながら階段を下りていくと、早速TCがそれをリアルタイム翻訳するようにコメント欄に書き込んでいく。
:TCニキすげぇな
:それで食ってけそうだなTCニキ
:《翻鶏》俺の呼び方がもうワケわかんないコトになってんな!!
:短いトラチキ人生だったなTCニキ
:《翻鶏》今はじめてトラチキって呼ばれた!俺の人生短いどころか始まってもいなかった!!
「初めて配信した時と比べると、かなり賑やかになってきましたね。コメント欄」
:同接数もだいぶ増えたしな
:涼くんの実力と、運が良かったんだよ
:トップ配信者とはいかないけど十分な人が集まってきてるよね
:ここにくるまでが短期間すぎるんだけどなw
:ドレイクとエンドリーパーの効果がデカすぎるんだよ
「そのニ件に関してはそもそもボクが望んだモノでもないんですけどね」
:海外チキン用にドレイク戦のアーカイヴURL投げとくか
:TCニキ説明よろ https://・・・・・
:《翻鶏》Ryo vs named archive → https://・・・・・
:vs named!? Thank you! TC!!
:time to eat that named → https://・・・・・
:ate!? named!?!?
:what are you talking about, JP CHIKINs!?
:《翻鶏》I ate it with Ryo and Deea, seriously
:英語分からんけど戸惑ってるのは伝わってくるww
:realy? realy?? realy!?!?
:そりゃあネームドを食ったとか言えばなぁ笑
:《翻鶏》しまった ディアちゃんのスペル間違えたかも
:海外チキンたちがディアちゃんをそのまんま鹿と勘違いしだした
:涼ちんが大鹿型のネームドを調理してると勘違いしてるっぽくて草
:名前の由来的には間違っちゃいないんだろうけど笑
:まぁ動画見ればわかるから訂正しなくていいんじゃない?
:ディアちゃんが自分のアーカイブに宇宙語が増えたってビビってるw
「また食べたいですね、ドレイクのカツカレー……。
まぁあんな巨大なネギ魔導、今後会える可能性の方が低いんですけど」
:ネームドだからなぁ……
:ネギ魔導の希少種とかなら似たような味かもね
「希少種を探すとなると運ですからね。ちょっと大変そう」
そんなやりとりをしているうちに、下の方に明かりが見えてくる。
「そろそろフロア1に出ますね。ここはボクがこれまで探索したダンジョンの中でも、屈指の美しさを持つダンジョンで……」
フロア1へと踏み出した涼の言葉がそこで止まる。
「なに、これ……?」
:え?
:なんだこれ……
:綺麗……どこが?
:it's not beautiful...
:なんだこの異様な雰囲気
:ダンジョンってこんな大きく様相を変えるコトあるのか?
:i don't know about this kind of atomosphere
「一体……このダンジョンで何が……?」
広がっていたのは、美しい庭園などではなく。
木々は枯れ、芝生は褐色に変化し、地面や石畳は乾いてヒビが走っている。
点在する岩に付着した苔はすでに乾燥して、吹き抜ける乾いた風にあおられてパラパラと散っていく。
植物や水の美しさを引き立てるような突き抜けるような青空とさわやかな陽光を降らせる空の姿もそこにはない。
どんよりと渦巻く分厚い雲に、ビカビカと静かな稲光を放ち、いっそ禍々しさすら感じるモノになっている。
日本庭園風ダンジョンの面影はあれど、その美しさはすでになく――その全てが枯れ尽くし、萎び尽くした、まるえ終末世界のような光景が、涼と視聴者たちの前に広がっていた。
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【Idle Talk】
・vsドレイクをみた海外チキンたち
「恐ろしい鴨だったな」
「あれほどの強敵、リョウたちはよく勝てた」
「炎のブレスで倒せなかった時には絶望を覚えたよ」
「あの町みたいなエリアはモンスターの出現しないエリアらしい」
「本当か?そんな場所にあんな強敵が出るとか恐ろしすぎるぞ」
「リョウの最後のアーツが正しく決まって良かった」
「まるでニンジャのように音もなく首を斬ってたな!」
「つまりリョウはジャパニーズニンジャ!!」
「なるほどニンジャ! 現代ニンジャ! ヤッター!!(原文ママ」
・ディアーズキッチンをみた海外チキンたち
「ディアって大鹿じゃなくて彼女のコトだったようだ」
「はぐれ化しかけているネームドだって? 恐ろしい話じゃないか!」
「ここからは料理タイム? え? 鴨肉? 鴨ってドレイクのこと??」
「あのネームド鴨ドレイクを食べるだって?」
「正気を疑う光景なのに涎が止まらない」
「リョウの顔はどうして輝いているんだ??」
「ブレスによって生えたリーキを食べさせられているのか!?」
「なんでブレスで生えたリーキを美味しそうにみんな食べてるんだ?」
「うおおおおおおおおドレイク!カツ!カレー!!うおおおおお!!!」
「俺にも食べさせてくれえええええええ!!!」
「なんて極悪な映像を見せるんだ! これは拷問に使えるぞ!!」
「ドレイク!カツ!カレー!!!!!うおおおおおおおおおお!!!」
ディア
「涼ちゃんねるで話題になったからか……う、宇宙語を使うフォロワーさんが急に増えたんだけど……!?」
シロナ
「ですから英語ですって。いや、イタリア語やフランス語なども混じっているようですけど」
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