第4話 祝祭の夜
酒場に着いてすぐ、クリスティアはモリアーティ236世の靴を金色から黒に変えてやった。
祝祭は酒場だけでなく、国中で始まっている。
クリスティアがモリアーティ236世を連れてきたのは北部の酒場だ。
店内は大盛況で、クリスティアはこれからの事を考えた。
とりあえず、クリスティアはモリアーティ236世をトイレへ連れていき、姿が見えるように魔法を解いてから、魔法で若い美女に変身させ、よそ行きに相応しい服を着せた。
見た目に合わせて声も魔法で若くした。
トイレを出た二人は、酒場で祝祭の雰囲気を味わう。
店の奥にはシャンパンをあける客や、ジョッキで乾杯する者も居る。
クリスティアとモリアーティ236世と2人で中心地域の方向へ乾杯した。
その後は大きな焼きたての肉を頬張り、聖酒を1瓶あけるほど呑んだくれた。
お会計はクリスティアのおごりだ。
「今夜はありがとう。楽しかったわ。料理もお酒もすべて美味しかった」
「どういたしまして。では、帰りましょうか」
クリスティアは瞬間移動魔法でモリアーティを自宅に招き入れた。
カーテンも窓も事前に閉めてある。
クリスティアはモリアーティ236世をパジャマに着替えさせ、「一緒に寝ましょう」と言った。
2人は同じベッドで寝る。
モリアーティ236世は壁際に身を寄せて、クリスティアは出入口側で寝始めた。
翌日の早朝、クリスティアは変身魔法が完全に解けたモリアーティ236世をうら若き魔女に変身させた。
自分はこの家を出ていく支度――自身の髪色から外見すべての変身や準備を手早く済ませてから瞬間魔法で異国の関所前までモリアーティ236世を連れていく。
関所を通過すると、山々に囲まれた町へ向かった。
そこでクリスティアは――事前に事情を話していた――知り合いのパレッタ族と再会した。
「久しぶりね、ブランケ」
「久しぶりね。元気そうで何よりよ」
ブランケという名の女性はモリアーティ236世を見て言う。
「貴女がモリアーティ236世ね。ようこそ」
歓迎された2人はブランケについて行く。
ブランケの背中を追いながら、クリスティアは覚悟を固めていた。もう二度と自分の生まれ育った国へは帰れないことを。
そんなクリスティアの表情を、横から不思議そうに見つめているモリアーティ236世であった。
モリアーティからすれば、クリスティアには何について難儀する必要があろうかと思うほど、今のクリスティアは眉間にしわをよせていた。
モリアーティは、クリスティアのこの表情に、話しかけることすら躊躇った。
白く光るランプを持つ手と繋がっている手首が痺れてきたモリアーティだったが、ようやくその痺れから開放される。
ブランケが、両サイドに垂らしているうさ耳を揺らしながら、クリスティアやモリアーティ236世を振り向いた。
「あなたたちの部屋はこの扉の向こうにあるわ。ひとつの部屋に2人で住んでもらうから、1番大きくてエレガントな部屋よ。寝室も兼ねていて、天蓋付きのキングサイズのベッドもあるから、夜はぐっすり寝れるんじゃないかしら」
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