-第2話 モリアーティ236世とクリスティア-

 ショーケースの向こうから、モリアーティ236世が顔を覗かせた。

 クリスティアはすぐに、ショーケース内の宝石すべてを見えなくするエンプティー魔法をかける。

 モリアーティ236世が逃げる直前に、クリスティアは睡眠魔法をかけて眠らせることに成功。

 その上で束縛魔法をかけてロープでぐるぐる巻きにした。


 マチルダに連絡するとすぐに飛んできたので、寝ているモリアーティ236世を担がせて、一緒に魔女協会へ向かい、監視員にモリアーティ236世を引き渡す。


 すぐに眠らされているモリアーティ236世は監獄に入れられたのを目で確認したマチルダとクリスティアは、急ぎ足で協会内の事務室前まで行き、報告書を提出してその場で解散。


「おやすみ、マチルダ」

「おやすみ、クリスティア」


 マチルダは瞬間移動魔法を使い、クリスティアは箒に跨って自宅へ直帰。



 帰宅して2時間後、魔女協会から連絡があり、クリスティアは協会へ戻ることに。


 協会職員の話によれば、モリアーティがクリスティアと話がしたいとのことだ。


 クリスティアは目を覚ましたモリアーティと柵越しで再会を果たす。


「話し相手が欲しかったのよ」


 モリアーティ236世は言った。


「目が覚めた時、甘い香りがして、すぐに貴女のことが恋しくなってね。それに、貴女って見た目がとても優しそうだから。捕まえ方も優しいし。だから、話し相手は貴女が良いと思ったの。監視員さんは無口で話にならないし」


 モリアーティ236世は聞く。


「私のもといた世界での話、聴いてくれないかしら?」


 クリスティアは頷いた。

 モリアーティ236世は語り始める。


「私のもといた世界にはシャーロックっていう探偵が居てね、彼が私を狙っているの。この世界に忍び込んだのは、シャーロックから逃れるためでもあるの」

「シャーロックって誰?」


 クリスティアが聞く。


「私のもといた世界では有名な名探偵よ。何度か対峙したことがあるけど、なかなかの名推理を披露してくれたものだわ」


 監視員がクリスティアのために椅子を用意してくれたのでクリスティアはそれに座った。


「貴女のもと居た世界ってどんな世界なの?」


 モリアーティ236世は鉄格子の向こうから淡々と話し始める。


「色々な国があって、国家間で戦争したり、紛争したりしているところもあれば、友好的で平和な国々もあるわ」

「貴女のお気に入りの国は?」

「母国も好きだけど、ニポンが好きね。文化が優れていて、美しい国よ。国民も皆優しいし」


 モリアーティはさらに言う。


「この世界に忍び込んだのはシャーロックの目から逃れるためでもあり、前々からこの世界に夢をみていたからでもあるの」


 監視員に「そろそろ時間だ」 と言われたクリスティアは、椅子から立ち上がった。


「またシャーロックの話してね」

「もちろんよ」


 クリスティアは協会の出入口を出てから箒を跨いで自宅へ直行した。

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