/// 16.別れの後で
あれから1週間が経った。
ノーマンについてはやはり経営不振により倒産寸前、今回の件で身代金を貰ったら共和国へ逃げる。というあの時言っていたまんまの考えで実行に移したそうだ。僕があの場に居合わせたのは全くの偶然であった。
今後は元勇者達のいる例の炭鉱送りになって、しっかりと強制労働させるのだという。元奴隷商が奴隷になって強制労働とか笑えないね。まあ因果応報ではある。少なくともあのガタイの良い奴隷は働いてくれるだろう。
ノーマンとあのチンピラ風な冒険者たちは……死ななきゃいいけど。
きっとうまい事、生かさず殺さずになるのだろうけど。
そして3日程前には学園は授業の方も再開された。
その際に僕とサフィさん、加奈の三人は変装せずに素のままで行ったら、クラスメートばかりか他のクラスの人達や学園の職員たちにも予想以上の大歓迎をされた。まるで大物俳優かアイドルになった気分である。
だがこのまま学園に通うのはやはり難しく、学園をやめることとなった。僕たちがいるという噂が立てば色々な人たちが押し掛けてくるのだとか。まあ孤児院にも毎日かなりの人が押しかけてくるからね。
ほんの数週間だけではあったけど、楽しい時間を共に過ごすことのできたみんなには感謝しかない。お礼の意味を込めてとっておきの上級ドラゴン肉を食堂に提供したらみんなそっちの方に集まってお祭り騒ぎになってしまった。
ルーナたち三人も僕たちの方をチラチラと見ながらその列に並んでしまった。ちょっと寂しい。
でもその後にはちゃんとルーナたち三人が卒業したら孤児院で働きたいというお願いをされた。子供達が順調に育ってくれるだろうが人手はいくらあっても足りないぐらいなので歓迎すると伝えたら喜んでいた。
三人の口元は少しテカテカしていたのは仕方ないだろう。あの肉は破滅的にうまいからね。
そしてアデルくんたち三人がモジモジしながらやってきたと思ったら僕に握手を求めてきた。大ファンだと差し出された高そうなハンカチに書きなれないサインまで書いた。これで三人との友情もさらに深まっただろう。
このまま行けばいずれバーでお酒でも飲みながら、昔話に花を咲かせる仲ぐらいになれるだろう。今から楽しみで仕方がない。
そして帰り際、ルーナがサフィさんにしがみ付いて暫く離れなかったが、いずれ孤児院に来てタケルと良い仲になったら一緒に楽しめる、というサフィさんのとんでもない発言に、頬を若干赤らめて照れているのを目撃した。
いや……そんなことは無いはずだよ?僕をそんな節操無しみたいに考えるのは止めてほしいな?
◆◇◆◇◆
孤児院まで戻ると何となくぼんやりとしてしまう僕。
ベットに腰掛けため息をついた。
「タケルくん、ちょっとお話があるんだけど……」
佳苗や真理たち女性陣の全員が部屋に入ってきて佳苗がそう話を切り出した。メテルまでいる。何か深刻そうな表情をしているので若干身構えてしまう。
「私たちも全員、教師をやめようと思って……」
「えっ?なんで?僕に気を使わなくてもいいんだよ?あんなに楽しそうにしてたでしょ?」
僕の返事には答えずモジモジとしている佳苗。
「あのね……その、できちゃったの……」
「何が?」
まてまて。いやあれか?ほんとに?マジで?ぬか喜びじゃないよね?
「その、お赤ちゃん……」
「ひゃっほー!」
思いがけず大きな声が出た。他の女の子たちもビクってしてた。だよね?初めてだよ僕がこんな声出たの。
「おめ、おめでとう!ありがとう!さすが佳苗!愛してる!」
僕は壊れないように優しく佳苗を抱きしめた。
「タケルくん!」
「ん?真理も、どしたの?」
佳苗と抱き合う僕の顔を両手で挟んで真理が顔を近づける。
「わたしも……」
「えっ?」
「できちゃった」
「ほぁぅ!」
まさかの真理もできちゃった宣言にまた声が出た。なんてことだ!盆と正月が一緒に来た喜び!佳苗と一緒に抱きしめた。
「真理もありがとう!愛してる!みんな一生大事にするからね!僕を幸せにしてくれてありがとう!」
「ふふふ。それでね、教師を辞めて出産に備えて大人しくしてようかなって?」
頬を赤らめ良い笑顔を見せてそういう佳苗と、同じように笑顔を見せている真理の頭をまとめて撫でる。
「そうだよね。生まれるまでは安静にしてほしいからね。分かったよ。僕も全力でサポートするからね!何かあったら頼ってね!あっ!じゃあ……悠衣子と康代も?」
「いや、私たちは……妊活?」
「やっぱり、ねえ。頑張りたいかなって……」
どうやら二人はまだだけど頑張りたいということのようだ。
「メテルとベリエットはなんで辞めちゃうの?」
「タケルが居ないなら行くわけない!」
「ふん!結局貴族教育の授業は一部の上級貴族のみだったではないか!つまらないからもう辞めるのじゃ!」
なるほど。予想通りだった。
ということで今後は佳苗と真理の二人をサポートしつつ、悠衣子と康代と頑張ることになった。暫く忙し毎日が続くだろう。今からマイベイビーたちのために部屋を改築してもらったり、新しいおもちゃの開発もしなくちゃね。
忙しい日々の中、ベリエットもたまに寝室に忍び込もうとするが、それはサフィさんにつまみ出されていた。どんなに気配を消してもサフィさんの魔力感知からは逃れられないようだ。
「サフィ姉!お主なんでワラワの邪魔をするのじゃ!」
「お前の侵入を邪魔するとその分タケルが愛してくれるからな!今はまだ早い!ってタケルから言われてる!もう少し我慢してろよ」
「ぐぬぬぬ」
「今にタケルの方から我慢できなくなるだろ?気長に待ってればいいじゃねーか?」
「そ、そうじゃの!その時が来たらメロメロのヘロヘロにしてやるのじゃ!」
すぐそばにいた僕は、何も聞こえてないことにして布団を頭までかぶっていた。
そんなこんなで、色々なことがありながらこの異世界を毎日楽しく生きていくことを望み、毎日を一生懸命頑張ろうと思う僕だった。いずれみんなに子供ができて、そしていずれは孫も、そんな幸せな余生を過ごすんだ!
まずは今晩から頑張らなきゃ……
またレベルあがっちゃうかな?
何はともあれ、異世界最高!!!
・・・ 学園編 END ・・・
保健委員だった僕、勇者パーティに火口に投げ込まれたのだからさすがに切れてもいいですかね? 安ころもっち @an_koromochi
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