/// 40.頑張れおじいちゃん

ふわふわとした気分の中、目を開ける。


「ここは……学校?」


僕の目の前には、見慣れた建物が見えた。


「戻って……これたのか?」


見慣れた門の前で立ち尽くす僕。


「いや!だめだ!駄目だよ!僕はお嫁さん達を幸せにしなくちゃいけない!こっちに戻ってきちゃだめなんだ!」


オロオロと周りを見渡し狼狽える僕。

そんな僕の耳に聞こえる怒号。校庭の方から聞こえる。


「おい!いい加減にあきらめて金寄こせよ!お前んち金持ちなんだろ!」

「や、やめてよ!これは給食費なんだ!これなくちゃ困るんだよ。お願いだよ!」


体の大きな男の子が、気弱そうな男の子の胸倉をつかんでいる。

どちらも見たことのない生徒だった。


「はー、仕方ないなー」


僕は仲裁に入ろうと校庭へ入ろうとして……目の前の道を歩いてくるおじいちゃんと目が合った。

そしてそのおじいちゃんは、校庭で争っていることも達を見て目を光らせた。


僕は瞬間的に【完全鑑定】を発動させた。

そのおじいちゃんは【俊足】スキルを発動させ、一気に子供たちの元までたどり着いた。


「なっ!なんだあのおじいちゃんは……」


ここからそのおじいちゃんは子供達をやさしく引き離す。そして男の子たちに向かって膝をつき目線を合わせ何かを話している。

あっ【説得】スキル……


どうやら争っていた男の子たちは和解したようだった。

そしてそのおじいちゃんは満足そうな笑顔で立ち上がり……ちょっと膝が痛かったのかさすっていた。

【回復】スキルを発動させこちらに戻ってきたおじいちゃん。


「あ、あの……すごいですね。お名前を教えていただいて良いですか?」

「ふっ名乗る名など……忘れたさっ……」


なんというイケボ……

そして俺は、【完全鑑定】で確認したこの米蔵さん88才の存在を心に刻んだ……ところで目が覚めた。


「なんだ……夢か……」


そう思って一応は、と開いたステータスで、寝る前と比べてレベルが3つ上がっていることを確認する。

見渡すといつものように愛しい女性たちが寝息を立てている。全裸で。

その光景に温かいものを感じながら、再び布団をかぶり、眠りにつくのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る