勇者と救済者

1. [配信回] 三陸沖ダンジョン 悪ふざけがすぎるよ!

【ゲストさんが】三陸沖ダンジョンを紹介するよ!【超強い】


「こんにちは、槍杉救です」


 "きちゃああああ!"

 "お久!"

 "全裸で待ってた!"

 "全裸で待ってた(女)!"

 "ガタッ"

 "ガタッ"

 "ガタッ"

 "ガタッ"

 "ガタッ"

 "[かのん] がたっ"

 "ちょwwwかのんちゃんwww"

 "何混ざってるんすかwww"

 "いきなりぶっこんできたwww"

 "[かのん] おやくそくおぼえたの"

 "誰だかのんちゃんにこんなの教えたのは!!!"


 あはは、かのんも皆と仲良くやれてるようで良かった良かった。

 妙なことを覚えつつあるのだけはちょっと心配だけどね。


「今日はタイトル通りに三陸沖ダンジョンの紹介をするよ」


 日本最難関ダンジョンの紹介シリーズの一つで、海外を含めた様々なダンジョンを攻略する合間に配信しているんだ。


 "海ダンジョン楽しみ!"

 "昔巨大な魔物が溢れたところだよね?"

 "救様がこっそり倒して救ってくれたとこ"

 "おかげで今でも海の幸が獲れてるんだよなぁ"

 "秋刀魚!"

 "牡蛎!"

 "ホタテ!"

 "ホヤ!"

 "×"

 "×"

 "×"

 "×"

 "[シルバー友1]×"

 "[シルバー友2]×"

 "[シルバー友3]×"

 "[シルバー姉]×"

 "なんでや! ホヤ美味しいじゃん!"

 "だって臭いもん……"

 "[シルバー父]◎"

 "[シルバー友4]◎"

 "救ファミリーとフレンズもw"

 "救様はどっちですか!"


 え、どっちってホヤが好きかどうかってこと?


「ごめん、食べた事ないから分からないや。でも臭いなら平気だよ。ダンジョンには臭い場所も沢山あるから慣れちゃった」


 魔物は消えてなくなるから腐臭とか無い筈なのに、不思議と耐えがたい臭いがする場所もある。きっとダンジョンのギミックの一つなんだろうなと思って我慢してたら、今ではあまり気にならなくなったんだ。


 "そうよね、都会住みだとホヤとか食べる機会無いよね"

 "実は俺も知らない"

 "私もー"

 "というか臭いんだって初めて知ったわ"

 "なん……だと……"

 "一般的な食材じゃなかったのか"

 "普通にスーパーで売ってないか?"

 "この温度差"

 "まさかのホヤブーム来る?"

 "ホヤ業者『!?』"


 こうして話題になると気になっちゃう不思議。

 この辺りで良く獲れるなら食べられるところを探しに……いや、止めておこう。


 "おやおやその顔は"

 "食べてみたいけれどお店に入るのが恥ずかしいのかな"

 "注目されちゃうもんね"

 "お礼言われちゃうもんね"

 "応援されちゃうもんね"

 "コミュニケーション必要だもんね"


「だからボクの心を読まないでよ!」


 ちょっと油断するとすぐこれだ。


「その話は終わり終わり。ゲストを待たせたら悪いからね」


 今日は京香さんも不在でゲストと二人でのダンジョン攻略。

 慣れない人と一緒なのは苦手なのだけれど、今日の相手は色々とあって自然とお話し出来るようになったお相手だ。


「ということで紹介するよ。今日のゲストのオモイ・セオイスギールさん」

『…………?』


 今日は全身を覆うローブを着ているのだけれど、これが彼女の探索時の装備なのかな。


 "アフリカのかわいこちゃん来た!"

 "かっっっっっっっっ!"

 "褐色娘最高だあああああああ!"

 "救くんちゃんに匹敵するかわいさかも"

 "素朴な感じが良いよな~"

 "なんか今の状況が分かってない感じじゃね?"

 "ぽわぽわしてる"

 "くわぁ! 小さく首をかしげてるのあざとい!"

 "救様、配信の説明したの?"


 ちゃんと説明して理解してくれたと思ったのだけれど、忘れちゃったのかな。


「セオイスギールさん?」

『…………?』


 かのんちゃんをじっと見て不思議そうにしている。

 配信文化を知らなかったらしいから、ダンジョンカメラが妙な物に見えるのかな。


「配信始まってるよ。ほら、かのんちゃんがボクらを撮っていて、世界中の皆が見て……」

『…………?』


 "説明したことで世界中の人に見られていると自覚しちゃった救様www"

 "自爆かわゆす"

 "普段は考えないようにしてたんだなぁ"

 "セオイスギールさんが不思議そうに見てますよ!"

 "俺達も見てるよ!"

 "世界中が見てるよ!"

 "[シルバー友1] 私も見てるよ!"

 "[シルバー友2] はいはいはーい! 見てるよ!"

 "[シルバー友3] 見てるどころか配信チェックしてる"

 "[シルバー友4] ぐへへへ、見てるよ~"

 "[シルバー姉] いつも家族親族全員で一緒に見てるからね!"

 "[かのん] みてるなの"

 "[超絶最強剣神ソーディアス] いつか絶対倒す"

 "[キング・シーカー] どうして俺様に声をかけない"

 "[二心京香] 一緒に行きたかった……"

 "カオスwww"

 "さらっとポンコツンデレさんが混じってるwww"

 "世界中どころか隠しボスにも見られている救様パねぇッス!"


 ぷぎゃああああああああ!

 そういうアピールは要らないから!


『救ちゃま……どう……したの……?』

「あ、うん、何でも無いよ。気にしないで」


 ボクが動揺したせいでセオイスギールさんを心配させちゃった。

 ちなみに今も翻訳機をセットしているから普通に会話できるし、なんと配信ではかのんがリアルタイム翻訳してくれてるんだってさ。


「ほら、かのんに向かって挨拶してごらん」

『…………』

「セオイスギールさん?」


 何故かボクの体を盾にして隠れちゃった。

 もしかして照れ屋なのかな。


 でも勇者会合では多くの人に見られても平気そうだったし、カメラとか配信が苦手なのかも。


 "まってむりとうとい"

 "救様の服の裾を握りながら背後に隠れるとか可愛すぎる"

 "完全に救様に心を許しているじゃないですか"

 "まさかの救様の妹ポジ登場?"

 "妹はあんなに大人しくない"

 "妹に幻想を抱くのは本当に良くないと思います"

 "空想上の妹ですか?"

 "リアル妹の被害者達がワラワラでてきて大草原"

 "[シルバー友1] ……その女、誰?"

 "ひえっ"

 "ひえっ"

 "ひえっ"

 "戦争じゃー!"

 "おかしいな寒気がするぞ"

 "全裸待機したから風邪ひいたんだろ"

 "それか"

 "それなのかよwww"


「誰ってアフリカの探索者のオモイ・セオイスギールさんだよ。詳しい説明は配信動画の説明欄に書いてあるし、隠しボス道場での訓練が配信されているからそっちも合わせて確認してね」


 友1さんはまだどちらも見てなかったのかな。

 他にも見てない人がいるかもしれないから最初にちゃんと説明しなきゃダメだったよね。


 "救様さぁ"

 "はぁ……(クソデカ溜息)"

 "でもむしろ救様らしい反応な気もする"

 "普段からこういうネタってあまり理解してないっぽいもんな"

 "救くんちゃんには永遠にぴゅあでいてもらわないと"

 "[シルバー友1] ごめんねー! 冗談だからスルーして良いよ!


 冗談って何の事だろう。

 う~ん、良く分からないけれど友1さんが良いなら良いか。


「今日はセオイスギールさんと一緒にここのダンジョンに挑戦して、深層のセーフティーゾーンまで辿り着いたらボクの指輪を使ってアフリカに帰ることになってるよ」


 セオイスギールさんがアフリカのダンジョンのことが心配ですぐに戻りたがっていたから、飛行機で移動するよりもボクの指輪を使った方が早く帰れるよって勧めたんだ。

 指輪の転移は一人用だけれど持ち主の元に戻って来る機能があるから、彼女に使ってもらってその後に回収するつもり。


 すぐに指輪を使わないで一緒にダンジョン攻略をすることになったのは、ボクがセオイスギールさんにアドバイスをしたかったから。

 先日の模擬戦で感じた事なんだけれど、彼女は戦いが得意じゃない気がしたんだ。


 的確に急所を狙って来て、膨大な魔力量を活かした物量攻撃で押し潰すように攻撃をしてきたけれど、工夫が感じられなかった。

 常に急所を狙ってきたら対処は容易だし、ボクの逃げ道を封鎖するように魔法を放つなんてこともしなかった。


 何の捻りも無い真正面からの強引な力業。


 そしてスキルによる回避が封じられただけで慌ててしまい、全く対処が出来なかったのも違和感があった。


 よくよく話を聞いてみらたら、セオイスギールさんが多くの勇者の強力な力を引き継いでしまったが故の問題だったんだ。

 小細工する必要が無いくらい強くなっちゃったから、雑に戦うだけでなんとかなっちゃった。例え魔物が小細工を仕掛けて来ても圧倒的な力で強引にねじ伏せる。


 これまではそれで大丈夫だったかもしれないけれど、これからはそれでは通用しなくなると思ったから、ボクが知っていることを色々と伝えて少しでも安全に戦えるようになってもらいたかった。


「短い間だけどボク達のダンジョン探索を楽しんでね」

『…………』


 セオイスギールさんは何故かかのんを気にしているようだから、この調子だとボクが中心に探索した方が良さそうかな。


「それじゃあそろそろ行こうか」

『……待って』

「え?」


 ダンジョンの中に入ろうとしたら止められちゃった。


『救ちゃま……水着は?』

「え?」


 一体何を言っているのかな。


 "水着!?"

 "救様の水着!?"

 "水着回クルーーーー!?!?"

 "パシャッ"

 "パシャッ"

 "いやまてそれも衝撃だが救ちゃまって可愛すぎない?"

 "そういやさっきも言ってたけどスルーしちゃったなw"

 "情報量が多すぎんのよ"

 "救ちゃまの水着姿!?"

 "え、でも、それだと性別が判明しちゃうんじゃ……"

 "ばっか救様の性別はぷぎゃだろ?"

 "そうだったスマン"

 "[シルバー友1] どきどき"


「ドキドキしないで! 水着になるわけないでしょ!? 最難関ダンジョンだよ!?」


 いくらここが海ダンジョンだからって、防御力ゼロの装備で入るなんて自殺行為だよ。


 "ええー!"

 "ええー!"

 "ブーブー!"

 "み・ず・ぎ! み・ず・ぎ!"

 "凄い強い水着装備とか常識だよ"


「どこの世界の常識!?」


 水着で魔物と戦うなんて意味が分からないよ。

 セオイスギールさんもどうしてこんな変なことを言い出したのかな。

 まさかアフリカでは水着で探索を……なわけないか。


「どうしてそんなこと聞いたの?」

『救ちゃまと一緒の……怖い女の人が……救ちゃまなら……強い水着装備……作れる……海なら……必須って……』

「京香さああああああん! 何変な事吹き込んでるのさ!」 


 ダンジョンで、水着装備なんて、ありえない!


 でも作れるかどうかと言われたら作れる……のかな。

 露出している部分を硬くする? それとも透明なバリアで防御する?

 いやいや、そんな面倒な作りにするなら普通の装備の方が楽だしそれで十分だし。


 それにもしも水着を作れるなんて知られたらまた着せ替えられちゃう。


 "[シルバー姉] 待ってる"


「ぷぎゃああああああああ! 絶対に作らないからね!」


 "[シルバー姉] 普通の水着用意済"

 "お姉様是非とも写真を公開してください!"

 "世界の宝は共有すべきです!"

 "[シルバー友1] くっ……参加したいけれど遠い!"


 あ、ダメだこれは。

 しばらく家に帰るのはよそう……


「セオイスギールさんも探索中は普通の装備で良いからね」

『そう……なの……?』

「うん」

『じゃあ……これ……いらない?』

「え?」


 ま、まさかそのローブの下は!!!


『スクみ……』

「見せなくて良いから!」


 しかもよりにもよってどうして日本の学校の水着なのさ。

 セオイスギールさんの体型はアレだから似合っているけれど、似合っているけれどさぁ!


『これが……良いって……勧められた……恥ずかしかった……』


 だから恥ずかしくてかのんを意識してたんだ。

 そりゃあそうなるよ。


「京香さん、後でお話しがあります」


 流石に今回のはやりすぎだよ。


 "見え……ない!"

 "紺色だったのは見えた"

 "いやいや、完璧に救様の体で隠れてただろw"

 "かのんちゃんならこっそり映せそうなのになw"

 "[かのん] かわいそうなの"

 "良かった。かのんちゃんがちゃんと常識も学んでた"

 "常識を覚えるのは京香様なんだよなぁ"

 "良かったね。お話しがあるそうですよ"

 "救様をぷぎゃらせるなら良いけれど、他の人を巻き込んじゃアカンね"

 "[二心京香] ごめんなさいいいい!"

 "まぁ冗談のつもりが本気にされて困惑してるんだろうけどw"

 "水着を着ていくなんて普通は信じないもんなw"

 "救様よりもぴゅあな娘かぁ、イイネ!"

 "守ってあげたい"

 "世界で二番目に強いけれどなw"


 全く、とりあえず着替えてもらわないと。

 あれ、セオイスギールさん、別にかのんに隠れてボクに見せなくて良いんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る