第7話

「そっち‼」


 ヴァネッサは叫びながら三匹の小鬼に投げナイフを命中させる。

 そのうちの一匹は頭部と喉にナイフを受け倒れる。

 残る二匹に向かっていくシグ。

 怯んだ隙に一匹の首をはね、振り下ろした剣を三匹目の首に突き刺す。

 

 周囲を見回すシグ。とりあえず小鬼の一団はせん滅したようだ。


 その日の朝、教会の子供の一人が小鬼らしきものを見たと騒いでいた。

 村のはずれにある教会は村の外と内側を仕切る柵に沿うようにあり、裏の畑からは村の外が一望できる。

 その畑に出た子供の一人が騒ぎの発端だった。

 

 話しを聞いたシグはすぐに畑に出て、そこから柵を飛び越え村の外に出る。

 子供から聞いた方向に向かっていくと草むらに隠れるようにしている小鬼の集団を見つける。

 小鬼達もシグに気づき襲い掛かってくる。

 シグの腰よりも高く伸びた草むらは小鬼達を隠し、普段よりも厄介な戦闘となった。


 シグは普段、魔物の討伐のときは二本の剣を装備している。

 息子の形見である普通サイズの剣は左の腰に。

 自分の身長とあまり変わらない長さの長剣を背中に背負っている。

 普段、小鬼との戦いでは長剣の方を使い、リーチの有利を取って戦うのだが、今回、後手に回る可能性を考え腰につけた剣を抜いた。


 その後、最初の集団をせん滅させ村に戻ろうとすると、別の小鬼達と戦うヴァネッサの姿があった。

 シグの後を追って村の外に飛び出したところ、別の集団と出くわしたとのことだ。

 

 逆手に持った短剣二刀流で小鬼立ち向かうヴァネッサ。

 武器の性質上、敵の懐に飛び込む必要があり、ヒットアンドウェイを繰り返す、いそがしい戦い方になる。

 

 シグはらしくない雄叫びを上げながら、小鬼達の注意を自分に向けさせながら小鬼達に斬りかかる……。


 小鬼をせん滅後、時間はまだ昼前だった。

 疲れきったヴァネッサを教会に送り届け、シグはもう少し見回ると伝え、再び村の外に出る。

 

 シグの長剣、それはかつてシドだった頃の親友の形見であり、その親友の娘の形見でもある……。



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