第4話

「大丈夫か?」


 バルドがテーブルの上に食糧を置きながらたずねるとレヴィンが「ああ」とかえす。

 ここはレヴィンの家。そこには腹部を中心に包帯を巻いたレヴィンの姿が。

 昼間、魔物屋が来る前の魔物の退治で負った傷だ。

 しばらく安静にする必要があるため代わりにバルドとロイドが食料の買い出しに出ていた。

 

 やはり魔物の数が増えている。

 バルドとレヴィンが同時に口にする。


 彼らは魔物の退治屋というだけではなく、村の自警団でもある。

 村の近くに魔物が出現したと聞けば積極的に討伐に動く。

 今日も魔物出現の報告を聞いて出撃したのだが大型の鬼複数と戦うハメになり、なんとか勝利したもののレヴィンが負傷してしまったのである。


 今回は腕の立つ三人だったのでなんとかなったが、自警団全員がそこまで強いわけではない。


「自警団の強化が必要だな……」


 と言うバルドの言葉に


「あの二人が協力してくれれば良いんだがな」


 とレヴィンがこたえる。


 あの二人とはシグとヴァネッサのことであり、これまでも何度か自警団に誘っていた。


「ヴァネッサは乗り気みたいなんだがなぁ」


 ロイドが口をはさむ


「おまえ……。アレがおまえの勧誘なのか?」


 レヴィンが呆れたように言う。


「まぁ、今回はタイミングが悪かったな。勧誘は後日、きちんとしたかたちで行なおう」


 バルドがしきる。

 レヴィンの負傷と賞金の減額という問題。


 自警団一の手練であるレヴィンの一時離脱。それに賞金を使って外部の退治屋を雇うという計画も雲行きが怪しくなってきた。


「ところでよぉ、前からレヴィンに聞きたかったんだけどよぉ、おまえとシグ、戦ったらどっちが強い?」


 ロイドが空気を読まない質問をなげかける。


 おまえなぁ、と呆れるバルドと対照的に難しいなとレヴィンはこたえる。


 意外そうな顔をするバルドをよそにレヴィンは続ける。


「シグの奴はおそらく対魔物のに特化した戦闘訓練を受けている。魔物の退治においては俺より上だろう。だが俺は親父に対人、対魔物の両方の戦い方を教わっている。その分俺の方に分があるとは思う……が……」


 レヴィンの父親は流れ者の敗残兵。村に住むようになった当時は村人達に受け入れられなかったという。

 彼は認められるために自警団の主力として活躍し続け、少なくとも自警団の参加者達の信頼は得ていた。

 バルドも剣術の手ほどきを受けたことがあり、彼にとっての師匠でもある。

 そんなレヴィンの父も3年前、大型魔獣の討伐で命を落としている。


 そしてレヴィンから出たシグの評価は……


「あいつはなんだか得体のしれないところがある。得体のしれない何かが……」


 二人は意外な回答におどろく。


 意外というのは得体のしれないという評価だ。


 二人がそういった印象を受けたことが無かったからである。




 

 


 

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