第3話

 村の中心にある広場。魔物屋の一団はここで魔物と賞金の交換を行う。

 魔物屋だけでなく行商人や旅芸人などもここで商売をしたり芸を披露したりする。

 広場のすぐ近くにこの村を代々治めてきた一族の住む家があり集会など行われる。

 

「ァあああぁ〜っ!腹立つ!あの首屋ぁ‼」


 首屋とは魔物屋の別の呼び方で蔑称に近く、当人たちの前では使わないというのが一般人の感覚だ。

  

 今回、小鬼の賞金額が下げられた事にヴァネッサは怒り心頭のようだ。

 対してシグの方は冷静だ。


「魔物の単価なんて国の政策と気分しだいなんだ。あてにしすぎるのは良くないぞ。」


 ノッシノッシとがに股で歩き怒りを表現するヴァネッサをなだめながら帰路につこうとするシグ。それを呼び止める男の声。

「そりゃあ小鬼の専門の退治屋なんて行き詰まっちまうよなあ‼」


「ゲッ!三馬鹿……」


 声の主を確認もせずにヴァネッサがつぶやく。


「聞こえてんぞ!がに股女!」


 ヴァネッサの素行を揶揄するのは三馬鹿……もとい三人組一の身長と体格の良さを持つロイド。

 そのロイドをなだめる三人組のリーダー格バルド、そのやりとりを見守るレヴィン。

 ロイドは2m近い巨体を持ち他の二人も身長180cm前後の恵まれた体格の持ち主たちである。

 3人とも肩や胸、腕や膝といった要所要所を守る部分防具を身に着けている。


 一方、シグは身長は160cmほどで防具はいっさい身につけておらず、袖をまくった長袖シャツに長ズボンという一般人の服装だ。

 ちなみにヴァネッサの身長は160cmと少々ありそれを初めて認識したとき、シグは軽いショックを受けた。


「すまんな。魔物の単価が下がって気が立っているのはこいつもいっしょなんだ。」


 バルドは右手のひらの小指側を向けて立て、謝る仕草をしてみせる。

 このバルドは村長の孫で、いずれはこの村を治める立場にある男だ。

 かつて教会のを治めていた老神父は村長の一族の出でバルドとも面識があった。

 彼が教会の孤児達の事を気にかけているのはシグも感じていた。

 

「一緒にするんじゃねえっ!俺達の方がこいつらの何倍も稼いでいるんだ!」


「わかったわかった。俺達もどのみちこれ一本で食っていけるとは思ってないから勘弁してくれ。」


 今度は吠えるロイドをシグがなだめる。


「帰るぞ!チビたちが待ってる」

 

 納得の行かないヴァネッサが何やら言い返しそうな雰囲気を察するとシグは彼女の衿をつかんで強引に帰路につく。


 ちょっと待て、とそれを制止しようとするロイドを今度はレヴィンが止める。


「俺達も帰るぞ」


 そう言って反対方向を親指で指す。



 

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