第4話 さきの弟

【ただいまー、トモキ、帰ってる?】


【姉ちゃんおかえりー!】


【夕飯食べに行こう!お母さん達は?】


【何か映画見に行くって、出てるよ】


【夕飯どうするつもりだったんだろうね。こんな食べ盛りの子を置いて、しょうがないねー】


【姉ちゃんが早く帰ってくるって知ってたからじゃない?】


 もう、頼りにされてるんだか、利用されてるんだか、解んないなー。


【じゃ、姉ちゃんと食べに行こう!】


 近くの定食。ここはボリュームと値段が比例していない。このボリュームで激安。何かあればここに来てお腹いっぱいになって。


【姉ちゃん、今日なんかあったの?帰ってくるの早すぎない?早退したの?】


【別に、なんとなくね。トモキ、お腹すいでるかなーって思ってさ】


【さっすがー!姉ちゃん解ってるね~。今日部活でクタクタで、腹ペコだったけど、我慢してたんだ】


【なんで、食べてくれは良かったのに。連絡くれれば、無理しちゃったの?】


【だって。姉ちゃんと食べるのが楽しみだったからさ。友達と食べるよりも】


 なんか、可愛いこと、言ってくれるね。だからついつい甘やかしちゃう!それに素直!高校生になったら普通は反抗期とかあるけど、トモキにはない。


【あれ、さき?さきじゃん!どうしたの?】


【あー、久しぶり。ここの定食よく来ていてさ】


【へー、あれ?彼氏。年下かな?】


【弟だよ、話したことあるじゃん】


【あー、聞いてた弟くんね。はじめまして、さきの友人のみさきです。ややこしいでしょ?さきにみさきって】


【はじめまして…みさきさん。トモキです】


【わー、なんか可愛い、照れてるの?トモキくん、よろしくね。あのさ、彼女とかいるの?高校生かな?年上はどう?】


【みさき、弟にちょっかい出さないでよ】


【可愛いんだもん、出しちゃうよ。それに恋のはじまりって解んないよね〜】


【何だよ、解んないって!トモキ気にしないでいいからね】


【出た!ブラコンさき】


【誰がブラコンだよ!】


【はいはい、それじゃね、退席しまーす】


 みさきは社交的過ぎる。確かにトモキとは仲良いが、ブラコンってことは?ないけどね。


【姉ちゃん、ブラコンなの?俺は姉ちゃんのこと好きだけど、こうやって飯連れてってくれるし…】


【みさきのことは気にしないで、変わってるから。それに好きの意味違うよ。ブラコンってのは…それはいいや。さぁ、食べよう!】


もぐもぐ、もぐもぐ。


【これあげる、トモキ、好きでしょ?】


【ありがとう、嬉しい!ん。美味い!最高!】


【さき、やっぱ、距離感姉弟じゃない!】


【うるさいな、みさき!ほっといて!】


【はい、はい、じゃ、私も食べよーと】


 仲良いっていいことじゃん。そういう姉弟もいるんだよ。みさきは兄弟いないから解らないんだね。


………………………食後………………………


【さあ、帰ろうかな】


【うん、ありがとうね。姉ちゃん】


【どういたしまして】


………………………帰り道………………………


【何かデザートでも買ってく?】


【うん、姉ちゃん彼氏いるの?】


【…何?突然?いないよ。あの時から…】


【そうなんだ…出来たら会わせてよ。俺より強いヤツね。姉ちゃんしっかり守れる男にしてよ】


【そうだね。トモキ、前に守ってくれたもんね。嬉しかったよ。ほんと、頼りになった!】


【あんな彼氏連れてきたら、今度もぶっ飛ばすよ。姉ちゃんにツラい思いさせない…あっ、姉ちゃん…危ない!】


【えっ!?】


※キキーッ!バン!※


 突然、こんな場所どれだけスピードを。トモキ?えっ?トモキ!


【トモキ!トモキ−−!】


【姉ちゃん…無事………ケガない…良かった…】


【喋らないで!!救急車呼ぶから!!誰がお願いします!!救急車お願い!!!!!!!!!】


私をかばってくれて…こんな簡単に人が…何で?


抱きかかえた腕の中で…


 代われるならすぐに、何しても何でもいい、お願いします。大好きな弟をトモキを返して…





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