A−2

「星都、聞いてた?」

 星都はよく言えば何も言わない。悪く言えば無視をした。

「おしゃれ番長の星都、聞いてた?」

「しかと聞いていたぞ、絵馬よ。だから我が着いて行ってやっているのだろう?」

 シカトだけに、とは絶対に言わない。

 星都と話しかけたい方は、ぜひ彼を持ち上げると良い。と、いうか。そうしなければ答えてくれない。

「そういえばだが、絵馬はなぜ狙われるんだ?」

 心当たりは、ある。といえば、ある。きらきらと光るあの宝石のことが頭に浮かぶ。


「これは君に託すよ、エマさん」


 記憶の中の声を追い払おうと、一人頭を振った。

「さあね。私が持つ一般の倫理観で見れば、一切わからないよ」

 星都は無視をする。そうだった。

「分からないよ、完全無欠の星都くん」

「そうか。なら仕方がないな」

 私は公園に行かなければならない。あの便利屋の三人が言っていた、と言う証拠以外にも、スマートフォンにメールが来た、と言うきっかけもある。いや、あってしまう。否、会ってしまったのだ。鞄にしまってある『星の王子さま』に触れる。少しだけ気分が落ち着いた。例え帽子に見える絵を見せられたとしても、これは象を飲み込んだ蟒蛇うわばみの絵だと答えることができるだろう。蛇蝎だかつの如き悪意を浴びせられようと、だ。

 それに、こう見えても星都は格好をつけるために柔道を習っている。少しは頼りになるはずだ。だが、もしあれが原因なんだとしたら、いじめなんてものじゃ済まない。いじめが軽い、と言いたいわけじゃないが、学校のいじめと、裏社会のそれとじゃ全く違う。気分を紛らわすため、星都に話しかける。

「博識な星都様の活躍、王ちゃんに見せてあげればよかったね」

「何故だ?」

 本当は自覚があるくせに、と言いかけて、飲み込んだ。星都は、王の言葉だけ、褒め言葉無しでも口を利くからだ。彼を咎める代わりに、

「そろそろ気をつけないと」

 と言った。で、私の視界は黒くなって

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