ウサギトカゲ
宇宙(非公式)
学校の話
A−1
あかさはなたまやら。これは己を表せるが、同時に二を表せるだろう。つまり、己が二個、解釈を違えれば己が二通り存在する。いわゆる、並行した自分。並行世界だ。
なんて、隣の席の
時計に目をやる。もうすぐ昼休みの終わりが来ることを指している。マイバイブルである『星の王子さま』を閉じた。彼女に声を掛けて、教室に戻ろう。
「私の許可なしに本を開くな!」
王はそう言った。いや、叫んだ、と言った方が正しいかもしれない。
「はいはい」
「理解を示すのに二度もいらない!」
「分かったよ、分かったよ」
「いらないと言っただろう!」
今度は腕時計に目をやる。そろそろだろうか。王がうとうとと船を漕ぎ始める。そして、完全に眠った。
「王ちゃん、寝た?」
返事はない。代わりに、
「えまちゃん、いつもありがとう」
と小さく音が王の口から溢れた。えまは、私の名前だ。
王は、なぜか数時間に一度眠ってしまう体質らしい。と、いうか。数年前から、珍しい病気が日本各所で発見され始めた。彼女もその一人、というわけだ。私も友達として、唐突に眠る彼女を助けている、つもりだ。
「星都くん、大好きだよ」
彼女は寝言で、本音を言う。いつもあんな言い草で、不貞腐れた顔をしているが、心の奥底では、私を大事に思っている。そして、最近分かったのだが、彼女は星都に恋している。これは寝言で知ったわけじゃない。初めて王に星都を紹介した時の事を思い出す。
「君が王星雲か」
「あ、うん」
「数少ない絵馬の友達をやってくれている、と聞いたんだが」
「あ、いや、やってあげているというか、やってもらっている感じで」
「感謝する」
「え、あ、こ、こちらこそ」
てっきり王は寝ているのかとも思った。文字通り、寝言を言ってるのかと。『星の王子さま』で王さまは勝手に欠伸をすることを禁じていたのにもかかわらず、だ。そもそも、あんな格好付け野郎のどこがいいのか。私は面白いからいいのだけれど。
保健室に着く。先生はいなかったので、勝手にベットを借りた。廊下から声が聞こえてくる。
「あの絵馬とかって奴、大丈夫だろうか」
「大丈夫と言えば大丈夫という言葉も使えるが、なにしろMrs.エマは大きくも丈夫でも男性ですらないからね。おっと、今のご時世そんな断定はベアトリーチェが牛に言ってしまうほど許されないことだね。反省するよ。女性を辞任して男性を自認しているかもしれない。もちろん女性が仕事である、とか言いたいわけじゃないよ。そんなことを言う気も勇気もない。勇気を出すとしても、提出期限はとっくに過ぎているからね。過ぎ過ぎだね」
「大丈夫なんじゃないかな?いざとなったら僕たちがいるし。
「ああ、そうだな」
この声は、万部の三人の声だ。喋った順で、大塚
それにしても、彼らの会話の内容が気になった。一体、私がその公園で何をされると言うのだ。
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