四大ギルドの細工師さん
「うん。やっぱり妖精キャラって可愛いなぁ……。ウチの騎士団にも、妖精キャラを入れるべきね。初めまして、『神聖騎士団』の細工師フレイヤです」
ワンレングスのボブの髪に手を添えながら、微笑む。
大きいよ。ぷるるんだよ。
ロックさんの露骨過ぎる視線移動を咎めつつも、第一印象はそれだよね。
ざっくりしたニットの揺れ方のレベルが違うというか。美人さんなのだけど、それ以上におっぱいさんな印象が強すぎる。
「絶対、本人も意識してやってるわね」というのが、後のシフォンの評価。
「やっと会えました。本当に実在するのか、疑ってたのですが……ちゃんといらっしゃったのですね。『ワールド・オーダー』の細工師、
失礼な! と言いたいけど、みんな納得してるし。
老けた印象だけど、意外に若いのかな? 視線があちこちに動くんで、ちょっと疲れる。
私と違う感じで、他人と話すのが苦手な人かも。
それにお馴染み、真面目そうなリンクさんを加えて、初めて四大ギルドのメイン細工師が集合したよ。
「初めまして、シトリンです。……あまり外には出ないけど、実在の妖精です」
『雷炎』生産チームに守られながら、自己紹介。
さて、どんな話になるんだろう?
口火を切ったのは源内さんだ。
「まずは、『雷炎』の皆さんにウチの大将の物言いを謝罪させていただきます。普段はあんなんばかりじゃないんだけど、顔を合わせると妙に気張っちゃうみたいで」
「対抗意識の強さは分かるが、アレじゃ、いらん敵を作りかねんぞ?」
「ホント、対抗と敵対は違うと言ってるんですけど……あんまりアレなら、その内に頭を替えますわ」
なんかサラッと凄いこと言ったよ……。
細い目の奥の表情は覗けないけど、口調は本気っぽい。
ロックさんやシフォンも呆気にとられてる。
「状況見ても、『錬金術大全』のコピー配布や、イベントの情報、氷結鋼に、今度の呪歌と破格の対応してもらってるのに、それが解らなくて突っかかってるようでは、いけません。疑うより前に、ウチらは実績を上げて逆に情報提供のお返しをしなきゃならん立場でしょう」
「う~ん。それはウチも同じね。『騎士団』は金属鎧だらけだから、鎧のヒートメタル加工の情報に、どれだけ救われたか……みんな凍えてたもの」
とろんとした口調で、フレイアさん。
雪山の金属鎧は辛そうだ……。笑われるの覚悟だったのに、エクレールさんにまでお願いされるほど、タイムリーだったみたいだもんね。
「それにしても、錬金術は複雑だわぁ……妖精さんは、今どんな事をしているのかしら?」
「全然です。……皇水作って、手持ちの素材を一通り溶かしてみて、何かできないかなぁって遊んでる感じ? 氷結鋼とか、楽器作りとかで時間取られたから」
「遊ぶって、どんな?」
「溶かした宝石で、メッキができるって解っただけですよ。特に性能に関係ないけど、仕上がりが綺麗だから、手甲にメッキしてシフォンにプレゼントした……それくらい」
「……これよ」
ルビーメッキの手甲に目を輝かせたのは、さすがに女性のフレイアさん。
透明感と煌めきが、普通のメッキとぜんぜん違うのです。
「帰ったら私もやってみよう……。ウチはイメージ統一がうるさいから、ワンポイントになるけど……これは良いものね」
「女の子はそういうの、好きそうですからねぇ。でも、宝石でメッキって……有り得ないことをしますな」
「源内よ、そういう所が妖精さんの妖精さんたる由縁だよ」
「きゅうさんは、もっと実用本位の人かと思いましたが?」
「シトリンさんと話してから、ちょっと宗旨変えしたよ。メッキの加工機が理屈に合わないからと調べる所までは、源内に近いんだが……。そこから魔法のサムシングと割り切って、じゃあこんな事もできたりして? と思いついたことを試して楽しんじゃう所が、この妖精さんの面白くて、恐ろしい所だ」
「でも、結果が綺麗な宝石メッキじゃあ物足りないでしょう」
「えぇ……? でも、シフォンが喜んでくれてるから良いかなって?」
なぜ? 空飛ぶカモノハシを見つけたような顔された。
『雷炎』勢と、『オデッセイ』の二人は訳知り顔で笑ってる。
きゅうさんが、何故か得意げに宣言した。
「これを本気で言ってるのが、シトリンさんなんだよ。源内」
「で、でも……意味がないでしょ、それじゃあ」
「見つけたもので、誰が喜ぶかっていうのが一番なんだとさ。……氷結鋼だって、お前も普通に鍛えたらただの鉄に戻ると知ったからって、型抜きで剣を作ろうとは思いもしないだろう?」
「そりゃあまあ……実際に考えもしませんかったからなぁ」
「熱を加えなければ、氷結鋼のままなんだから……と、それを試した結果が日本刀もどきの製作に繋がれば、普通は大喜びだろう?」
「大手柄ですから、喜びますわ」
「でも、シトリンさんは『魔剣になるかと思ったのに、変なものになっちゃった』って不満顔してたんだよ、ずっと」
「なぜぇ?」
「理由は簡単。シトリンさんの親しい人に、サムライ志望がいなかったから。……この妖精さんは、周囲の誰かに喜んでもらうことしか考えてないんだ」
「…………っ?」
「なるほどぉ……ずっと不思議に思ってた、二本目の魔剣が作られない理由は、そこなのね?」
愕然として、言葉も出ない源内さんに代わって、フレイアさんが口を挟む。
興味津々で身を乗り出すと危ないよ。ニットの胸ぐりが深いから、谷間とかいろいろ見えそうになっちゃってるし!
「こいつは作るまでの過程にしか、興味がないんだよな。一度出来ちまうと、注文されない限り同じものを作りたがらない。特に武器は」
「凄いわぁ……細工師の存在全否定」
「シトリン曰く、戦闘メインの人は強くなるのを楽しんでるのだから、余計な武器で強くなってもつまらないじゃない。……この娘はこれだもの」
「確かにそういう側面もあるわぁ。本当に面白い妖精さんなんだ!」
「おうよ! その代わり、思いついちゃったら、ルフィーア砲みたいな物も作っちゃう奴だって、側面もあるからな?」
何で、ロックさんが得意げなのよ?
目はふるふる揺れる、白い谷間に釘付けのくせして!
だって、一度作り方が解っちゃえば、別に私でなくても作れるじゃない。
ウチのギルドにも細工師は一杯いるんだから、作りたい人が作れば良いんだよ。
リピート生産なら、ウチの店の工房で働くNPCの、ドゥーとトロワでもできるもん。
オーナーと同等の技術を持ってるはずだし。
「そういえば、シトリンさん。リコちゃんが弾いてたピアニカはどういう原理? シトリンさんなら、鍵盤に魔法陣を仕込んで、魔力を加えるだけで音を出す気がするけど」
リンクさんの疑問に、思わずリコちゃんと目が合ってしまう。
申し訳無さそうな照れ笑い。もういいよね? バラしちゃおう。
「リンクさんが思った通りのものですよ? ただ、口がフリーになると、歌を歌わなくちゃいけなくなりそうなリコちゃんのリクエストに応えて、ダミーの吹き口を付けただけ」
「こらぁ!」
「ごめんなさい、だって……歌うの嫌だったんだもん」
実は二人だけの秘密だったから、総ツッコミ状態。
もちろん、笑いながらですよ。
この日は、そんな雑談レベルで散会となりました。
フレンド登録しちゃうと、ウチのお店……特にダベリ部屋までフリーになっちゃうので、相談用にメッセージ交換OKにとどめておく。
でも、源内さんは元から、きゅうさんと親交がありそうだし。
フレイアさんは谷間をチラつかせつつ、ロックさんとフレンド登録したみたいだし。
どうなることやら……節度ある行動をお願いしますね。
フレイアさんの谷間をチラ見して焦ってた、リンクさんくらいに、ね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます