教えて、グー○ル先生

「これは凄いなぁ、ほとんど自作のプログラミング言語だよ」


 私が全ページ撮影してきた『応用魔法陣』の本にざっと目を通した、池上先生の感想がそれだ。

 私の本当の担当医は、もっと偉い大先生。でも、お忙しい大先生に代わって普段は教え子の池上先生が診てくれている。

 ちなみに私の病気は『是非研究も兼ねて、治療に当たらせてください』と言われるくらい珍しい症例らしい。論文ネタの実験動物な私……。


 それはともかく、プログラム言語かぁ……。

 本気で運営さんは、プレイヤーに世界を開拓させたいんだなぁと実感する。

 メンテナンスは大丈夫なのでしょうか?


「先に、これを覚えておくといいよ?」


 と、簡単なフローチャートの書き方の本を貸してくれた。

 プログラムの処理の流れを整理するのに良いんだって。

 私はゲームをするために、どれだけ勉強しなきゃいけないの?

 まあ、アイロンであんなに喜んでくれたシフォンさんの為にも、いつかミシンを作ってあげたいと思うから、頑張って覚える!

 ……いつかきっと、ね。


 でも、私の午後は勉強ではなく、遊ぶ為にある。


 ログインしたら、運営さんからメールが届いていた。

 あれだけ言っておきながら、実は実装されていなかった細工師ギルドへの複数名新製品登録。……実装してくれたよ。

 連名がギルド名義の際は、ギルドが解散した時に権利が消滅することになるんだって。

 あ、その辺りのアップデート報告も来てる。

 宿屋の一室、シトリン工房から細工師ギルドへキラキラ~っと行って、スチームアイロンを登録する。ちゃんと連名登録できた。

 製品そのものと、設計図と使用魔法陣をセットにして渡す。

 設計まですると、経験値が大きいのだけど……レベルアップはなし。

 私の所に銀貨5千枚だから、合計1万枚で買ってもらったよ。

 ちゃんと、『ファッションウィーク』のギルド名を本体側面にレリーフした。

 ライバルギルドを、存分に悔しがらせてね。

 おっと、図書室に行って採取できるもののリストを、王都仕様にアップデートしなきゃ。

 ついでに錬金術学校にも行っておく。……完璧。

 これで私も、王都の子です。

 市場を冷やかしてから、工房へ帰ってきた。


「さて……今日は何をしようかなぁ」


 ベッドでごろーんと横になって、うだうだしながら考える。

 我が至福のひとときよ。


 頼まれものは……ロックさんからの『魔剣の打ち方』?

 鍛冶だけでなんとかなるものじゃない。っていう考え方は正しいかも。

 そもそも、魔法って何? という根本的な疑問があるからなぁ……。

 ごめん、もうちょい後で。


 シフォンさんのミシンも、大掛かりだからなぁ。

 コーデリアさんの温室。これも形は出来るんだ。

 ステンレスで形を作って、ガラス板をはめ込んで、漆喰で隙間を埋めて。でも、温度管理や水やりなどを自動化させようとすると、設定パネルの問題が出てくるの。

 毎日毎時間、常に誰かがログインしてるとは限らないからね。

 とりあえずは、ペンネさんからのハンドミキサーかな?

 私は作ったことがないから解らないんだけど、みんな声を揃えて『ハンドミキサーがあるとないとじゃ、お菓子作りの苦労がぜんぜん違う』と言うし。


 私は四時間ちょっとしかゲームしてないから、ゲーム内で食事はしないんだ。

 ステーキとかラーメンとか、病院では絶対出してくれないものも食べられるし、身体に影響ないのもわかるのだけど……普通の人用の濃い味付けを知っちゃうとね。

 リアルの病院食が寂しくなりそうで辛いのよ……ううっ。

 コンソメスープでさえ、泣きそうなくらいに美味しいのに、これ以上の誘惑はやめて。


 でも、作るなら、これかな?

 私も特に、作りたいものはないし。

 なにか作ってると、それに必要なものが増えてくるもん。他に応用できれば尚良し。

 

 ベースはアイロンを流用して、軽く作れば良いかな?

 軸に回転の魔法陣を刻んで、その先端にあの電球をワイヤーフレームの絵にしたみたいな奴を付けられるようにして……と。

 何かで軸を回すよりも、軸そのものが回る方が良いよね?

 軸を替えるだけで、回る速さも変えられるし。リアルと違って、モーターいらないもん。

 ……あれ? 待った。

 どうやって、その軸を押さえるの?

 世の中の人はどんな風にしてるの?

 ネットワークウインドウを開く。教えて、グー○ル先生!


『回転軸 押さえ方』 でいいかな?


 でた! さすが頼りになるよ、グーグ○先生。

 この軸受っていうのは絶対に必要みたい。そっか……『初めての自然科学』でも摩擦のことが出ていたから、この世界でもきっと問題になる。

 軸を回すと、絶対に穴に擦れるもんね。

 樹脂……プラスチックみたいなやつとか、滑りやすい合金で作るキャップみたいなのも有るけど、そんな目的に合わせて合金を作る、技術も知識もないよ?

 この2つのリングの間に金属の球を挟んで、コロコロするのなら作れる?

 最初から普通のサイズを作ると大変だから、大きめので実験しよう。


 むふふ……この間図面の書き方を調べていたら、誤差っていうのを覚えたんだよ?

 しっくりと軸と穴を合わせるのに、千分の一ミリ単位で直径の振れ幅を決めておくの。

 さっそく使えるぜぃ。


 ……でも、私は一体何を目指してるんだろう?

 ゲームって、こんなに勉強するものなの?

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