第7話 五百円の力
五百円で何ができるだろうか? 硬貨一枚に何の価値が込められているだろうか?
例えば、自動販売機でジュースを一本以上買える。たった硬貨一枚がジュースと交換できる。
また、五百円玉が一枚で駄菓子がたらふく買える。値上げしたといえどもまだまだ安いあのお菓子たちを大人買いできるだろう。
そう思うは私だけだろうか?
「う〜ん、説得力はないね」
「ああ、やっぱり?」
面前の少女はとある少年の絵が描かれたアイスを私に渡した。
「このアイスも五百円あればいっぱい買えるね〜」
「そだね〜」
私は少女と雑談しながらアイスを食べるこの瞬間が至福だった。
お小遣いはいつも五百円玉を渡されてきた。それはまだ私が大きくなっていないから、大きな金額を渡されないのだろうと考えている。
だから、私はいつも五百円玉を握りしめて、この駄菓子屋に赴く。ここでいつもこの少女と待ち合わせしているのだ。
「そういえばお互いの名前知らないよね。名前何なん?」
「えっと……」
私は名前を告げると、少女はふんと鼻息を吐く。
「名前負けしてない?」
「私もそう思うよ」
私は10円で買える駄菓子を五百円分買う。
「毎度あり」
五百円玉を渡す。
一瞬彼女と手が触れる。
「…………」
彼女はふと、私からもらった五百円玉を掲げた。
「きっと、このためじゃないかな」
それから5年が経過した。
あれから、私はあの駄菓子屋に行っていない。
彼女が言った、
「きっと、このためじゃないかな」
が、印象深く脳裏に残っている。
五百円の力とは、一体なんだろうか?
「効果(硬貨)がもうないことではないと思いたいな」
あの時の彼女のように、五百円玉を掲げた。
「おい、そこの」
振り返ると、彼女はいた。
永遠在生人の【掌編&短編集】 永遠在生人 @Zinn818
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