第4話 道様

 僕が選べる道はただ一つ。

 今まで数多の分岐路があった。その度に選んできた。

 後戻りすることはできない。

 この道がいつか途切れる日がくるだろう。

 そして、その日までに数多の分岐路が現れるだろう。

 僕は見てみたい景色がある。

 そこに届くまで、この道を歩む。

 僕の歩める道は一つで、僕にしか歩めないのだから。


 ここまで歩んできてふと考える。

「みんな違うけど同じ道を歩んでいるんだなぁ」

 詳しく説明できないけど、この足跡を見ればわかる。

 先人たちが歩んできたこの道を僕もまた歩んでいる。

 年代も性別も素性も全然わからないが、この地球にいる限り、その先人は確かにいた。

 たとえ、何万、何億、何兆の痕跡が目の前にあって、うず高く積み上げられた先人の髑髏があって、今はそれらすら認知できないのだとしても。

 目に見えないが確かに目の前に、いや、足下に積み重なっていく先人のそれを踏みつけていくこの道は、僕にしか歩めない道。

 いずれ、自らもそれとなって、踏み潰されていくのだとしても。


 生きている。

 それだけで、僕は進められる。。

 生きているだけでこの道を進められる権利を持つ。

 いつか剥奪されるその日まで、この道を歩み、最後に見られる景色がわかるまで、この道を歩む。

 その道中で多くの経験をして、持ち物も多くなっていく。最後にはその持ち物を全部捨てなくてはならなくて、経験と思い出だけが、宝物。

 この心臓の最後の一高鳴りが終わるまでに、瞳に映る景色に君がいてくれたら、嬉しいと思う。

 今はまだわからない君へ。


 途中で足を止めた。見上げた。星の数ほど、選択肢があった、それでもこの道を歩むことを止めることは許されない。

 ただ、少しだけ、足を止めて。今だけは鼻歌を歌っていた。

 疲れた時はいつもこうしていてた。

 ほんの少しだけ、休んでいた。

 また歩み始めて、思う。

 こうして、鼻歌をしていた僕もまた先人となり、その足跡と歩み様が後世への道標へとなるのなら、今はこうして一人で歩くのもいいな、と。

 だって、僕は独りではないから。

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