第2話 夜の病み
「薬がない……」
医師から処方されている睡眠薬がない。今週中に病院に行く予定だったが、急な用事により行けなかった。こうなることなら、今日中に会社を休んでても病院に行けばよかった。
「今日、寝られるだろうか……」
とにかく、早めに寝ることにした、22時に就寝した。
ーー1時間後ーー
「眠れない」
辺りは闇だ。真っ暗闇が部屋を支配している。目が慣れてくると徐々に見えるようになった。
「目を閉じだけでも、いいんだよな……」
目を閉じると静寂が僕を包んでいるような気がした。
ーーさらに1時間後ーー
うとっと寝ていた。時計を見ると……0時ごろか。
静寂と暗闇が部屋を支配し続けている。
「寝ないと。後6時間、寝ないと。身体が持たない」
ふうっと息を吐いて、呼吸を整えて、目を閉じ、眠った。
ーーそして、2時間後ーー
「まだ、朝が来ない……」
この時間あたりから、僕は夜の病みに蝕まれる。
「朝が、光が、恋しい」
だけど、朝を迎えるには、寝る、しかない。
眠る以外の方法はない、
夢は見なくてもいい。夢なき眠りでいい。
だから、寝させてください。お願いします。
ーー?時間後ーー
「ああ、ぐっすり、ようやく眠れた。やっと朝か!!」
しかし、窓の外は暗闇だった。
「まだ朝は訪れないというのか!!」
今の僕の状態は夜の病みに蝕まれた状態。
何回寝ても、眠りが浅く、熟睡した気になっても、まだ夜。
朝が恋しくて恋しくて、それでも手が届かない状態を『夜の病み』状態と、僕は名付けている。
睡眠薬は正常な眠りを促すものだ。
それを考えると、この『夜の病み』状態は、時間間隔が狂い、それにより精神的な尋が積み重なる。
僕は、寝るしかこの状況を打破できないので、眠るしかない。
僕は、無理矢理瞼を閉じ、何も考えず眠った。
ーー??時間ーー
「まだ、朝が来ない。一晩で5回くらい眠った気がする」
まだ朝が来ない……何度も眠ったのに……。
朝、日が昇り、日の光を浴びることがこんなにも救われる行為だとは思わなかった。
太陽とはその存在だけで感謝の対象で、僕たちに力を与えてくれる偉大なる存在なんだ。
闇と同化した僕は、さらに悪化していた。
「朝が、来ない。朝が来ない。朝が来ない朝が来ない。朝が来ない朝が来ない朝が来ない。誰か、助けてくれ。誰か、僕に日の光を浴びさせてくれ。この真っ暗闇で音もない世界で、一人は嫌だ。誰か助けてくれ!!」
頭が混乱していた。夜の病みが急速に蝕み、心を砕けていく。
眠れない、寝て起きても朝が来ない。
おかしくなりそうだ。ぼくはなにをしているのだろう。ねむれない。ねむれない。ねむれない。
ねてもおきても、よる。
よるよるよるよる。
だけど、ねないとあさがこない。
ーー???時間後ーー
「マダ朝ガ来ナイ!!!」
朝ガ来テクレナイ。寝テモ寝テモ朝ガ来ナイ。
誰モイナイ。僕シカイナイ。
僕ハ眠レナイ。
ーーそして、気がつけばーー
目を開けると、光があった。
世界は色づいていた。
太陽の力を体全身で感じ、僕は叫んだ。
「生き残ったぞ!!」
歓喜の叫びは部屋中に響いた。
太陽が僕の夜の病みを浄化していった。
「今日こそは絶対病院に行こう」
そして、その日の夜。
「睡眠薬を飲んだ。準備はOK。よし、寝よう!!」
枕に頭をのせて、横たわる。
「今日こそは、本当に熟睡できる」
消灯して、真っ暗闇になる。
暗闇と静寂が僕を包んでいく。
昨日と違うのは、安心して眠れるという点。
夜の病みが怖くない点。
「ふー、ふー」
静かな吐息。穏やかに眠れる。
僕はその日の夜は、ぐっすりと眠った。
それは睡眠薬の力だろうと思う。
眠る。
生き物にとって必要な行為で、時に僕たちに試練を与える。
それが、たとえ、どんな力を借りてでも、超えなくてはならない。
だけど、その試練を超えれば、大いなる存在がまた力を与えてくれる。
僕はそう知っている。
だから僕は、安心して眠れた。
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