第4話 妾の耳かきで極楽へ誘ってやろう

■右耳少し離れたところから


「お前の言う耳かきの作法というもの、嘘ではないだろうな? 本当に、本当ーーーに、膝の上に頭を乗せて寝転ぶのだな?」


「ふむ、分かった。それにしても無防備な格好じゃの。くふふ、耳の穴とは急所でもあるのではないのか? それをこのように委ねて……なんだか楽しくなってきたぞ」


■右耳、近距離

 

「ほれほれ、この匙のついた棒を耳の奥にまで入れてしまうぞ。ふふ、こんなものが嬉しいなど、さては妾に支配されたかったのだな? 下僕らしくて良いぞ」


「ほうれ、入っていくぞ。人の子の耳とは随分と深いものだな。なに? 明かりがないから心配になってきた? 今更何を言っておる。妾は狼じゃぞ」


「知らぬのか? 狼は夜目がきくのじゃ。今宵は月も明るい。お前の恥ずかしい、汚らしい穴の、奥の奥まで見通して見せようぞ」(いたずらっぽく囁く)


 //SE 耳かき音。


「おお、ふっ、んん! この奥に、大物が潜んでおる気配があるぞ。のう、これはどこまで棒を突っ込んでいいものなのじゃ? あまり深追いするなと? ううん、これだけは取りたいぞ。よし、もうちょっと……っああ! 逃げられた!」


「何じゃ何じゃ、大人しく妾の膝に寝ておれ。なんじゃと? この反対のふわふわの方で絡め取れと? ふむ、このふわふわにそんな秘密があるとはのう。てっきり、お前の顎やら鼻やらをくすぐるためにあるのかと思っていたぞ」


「ふふ、ほおれほおれ、顎のところをふわふわふわ〜じゃ! ふん! さっき散々もふもふされたお返しじゃ」


「なに? 早くしろと? そういえばこれはお前への慰めというか、労りだったな。つい面白くなってしまった。よし、耳にふわふわを入れてやろう。ふわふわ〜ふわふわ〜」


「おお、とろけるような顔をしておるな。これで終いか? なに? 正しい作法では最後に耳に息を吹きかけると? そんなのもうとっくにやったではないか」


「な、なるほど。耳を掘って出たものを、ふわふわで絡め取り、最後に息で飛ばすわけか。分かった分かった、やってやる。その真剣すぎる目をやめろ、怖いぞ」


「それでは。すぅ」(息を吸う音)


 (右耳にふぅーっと息が吹き込まれる)


「悶えておる悶えておる。こんなものが嬉しいとは、人の子は変わっているな。いや、変わっているのはお前の方か。だからこそ、妾の祠を詣でたりなどしたのだろうからな」


「さて、では今度は左を上にして寝るがいい」


 ■音声左から


「耳かきの作法とやら、もう分かったからの。これからは妾の技巧で悶絶させてやるからの」


「うむ、うむ、人の子の耳の形ももうわかったぞ。ここじゃろ、この入り組んだところに……ほうら、あったよ。大きなこと。こんなに立派なものを隠し持っておったのじゃな」


「ん? なにを息を荒くしておる。言葉がエロい? 耳を掘ってやっているだけだろうが! なにがそんなに……あ!」


「違う違う! 妾なーんにも分かってないぞ。立派なのはお前の耳の中のものじゃ。なにがエロいやら、妾にはさっぱり分からぬなあ。……分からぬと言うておろうが!」


「にやにやするでない! 全く、困ったやつだ。ほら、耳にふわふわを差し込んでやるぞ。ふわふわ〜ふわふわ〜。ふふ、お前はこれが大好きなようじゃねえ」


「仕上げに、お前が一番好きなことをしてやろうね」


(左耳に吐息を吹きかける)


「これで終いじゃ。 どうじゃ? 妾の耳かきは中々だったろう?」


「ふふん! 夜目のきく狼を舐めたらいかんぞ! お前の耳の穴の奥まで丸見えじゃった。耳かきくらい、まったく簡単じゃったぞ」


「っん! いつまで膝を撫でておるのだ! さっさと起きぬか!」


 //SE ペシッと軽く叩く音

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