第2話
▫︎◇▫︎
月曜日の朝。
憂鬱な週始め。
けれど、少女にとっては家にいなくても良いという何よりも救いの始まりだ。
ちゅんちゅんと大空を自由に羽ばたく鳥を見上げた少女は、微笑んだ表情のまま微動だにせず、公立暁月高等学校の正門を潜る。
集まっている視線を気にすることもなく微笑んでいる少女に、たくさんの人が挨拶に来る。
「おはよう、
「おはようございます、
「おはようございます!双葉さん!!」
「おはようございます、
「わあ!ありがとうございます!!」
「おはよう、双葉さん!」
「おはようございます、
何人にも何人にも微笑んだまま挨拶をする。
けれど、少女に向けられていた視線は、あっという間に今しがた登校したばかりの少年の方に向けられる。
少し長めの癖っ毛なミルクティーブロンドに、透き通るような氷色の瞳。
180センチをも超える高身長の美男子は、周囲からの視線をウザがるように深い青色のヘッドホンを身につけている。
第1ボタンを外して緩めた真っ白なシャツに、これまた緩めた赤いネクタイ、濃紺のベスト、前側が空いているグレーのパーカーにブレザーという着崩した姿で堂々と歩いている彼こそ、少女から視線を奪った少年だ。
「わぁ!!月城さまよ!!すっごくカッコいい!!」
「そうね!!やっぱりハーフっていいわよね!お母さまがイギリス人らしいわよ」
「通りで!」
「「「超イケメ~ン!!」」」
きゃーきゃーと盛り上がっている女子の話題の中心にいる少年に何気なく視線を向けた少女は、手に持っていた焦茶色の革鞄の持ち手に力を込めた。
(1年A組、月城陽翔さん。遊び人と名高い彼なら………、)
ローファーで歩みを進める少女は少しだけペースを上げて少年を追い越し、彼の前で立ち止まる。
「おはようございます、
「………………なに?」
ヘッドホンを除けながら出される気だるげな声に、少女は笑みを深める。
周囲には、わらわらと野次馬が集まってきていた。
「わたしの名前は、
「ん、知ってる。………中学1年の時からずっと同じクラス」
「まあ、覚えていてくださったのですね」
「………………で?俺もう行っていい?」
少し面倒くさそうな声に、少女結菜は眉を下げて困ったように微笑む。
「お願いを、聞いてはいただけませんか?」
「………それって俺に拒否権ないよね?」
結菜はにっこりと微笑む。
そして、ぎゅっと握り込んだ手に力を込めて息をしっかりと吸い込んでから結菜は再び口を開いた。
「ーーー1週間だけ、わたしの彼氏になっていただけませんか?」
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