第3話 感謝
◇
「はぁ……昨日はつい助けちゃったけど、別に間違った事はしてないよね?」
そんな事を1人で呟きながら、いつも通り学校へ向かう。昨日俺は学園で有名なあの三姉妹を助けた……まぁ、だからと言ってこれからの生活に何か変化がある訳でもないんだが。
学校に入り靴を履き替え少しだけ廊下を歩いた後、階段を使い教室がある階へ向かう。特にこの学校に友人がいる訳でもない俺は自分のクラスへ行くまでの廊下で誰かに話かけられる事もなければ、誰かに話かける事もない。
「あ、お姉ちゃん!あの人です!」
「やっと来たのね」
何やら三姉妹が揃って俺のクラスの教室の扉の前で待機してらっしゃる。しかも三姉妹の三女が指を指している先にいるのは間違いなく俺だ。
これは別に自意識過剰とかではなく、少し自分の周りを見回してみても誰も居ないし……まぁ無難に昨日のお礼だろうか。用といえば……それぐらいしか考えられないが、とりあえずそのまま素通り出来れば楽なんだがなぁ…なんて思いながら、三姉妹を避けて横を通ろうとすれば三女が俺の前に通せんぼする様に手を広げて立ち尽くす。
「逃がさないのですよ!湊人!」
何この子、いきなり名前呼び?ていうか改めて見ても顔の整い具合が凄いな、まるで本当に二次元の世界とかからそのまま飛び出してきたかの様だ。
「昨日のお礼をしたいのだけれど」
「湊人……お礼したい」
長女と次女も後ろから俺に向けて声を掛けてくる。参ったな、これでは逃げようがない。まぁ別に逃げる必要もないのだが……というか周りからの視線が痛い。
まぁ周りからの視線なんて普段なら殆ど気にしないのだが、今回の視線の中には嫉妬や憎悪の視線が含まれている。少し面倒臭いな。
「あぁ〜、ここじゃなくて別の場所にしてくれないかな?此処じゃ目立つしさ」
出来るだけ笑顔を頑張って作ったが、しっかり出来てるだろうか?
「了解なのです!お姉ちゃん達いつものあそこへ急ごう!なのです」
「まぁ、本人がそう言ってる事だしね。そうしましょうか、まだ朝のホームルームまで時間がある事だし」
「了解」
三姉妹の承諾を得た俺は視線の雨から逃れる様に、三姉妹が言ういつもの場所とやらへ、後ろを着いて行く形でその場を離れる。
「湊人は何か好きなものとかあるのですか?」
廊下を4人で歩いてる途中、ふと三女がそんな事を聞いてくる。
「好きなものか……うーん、コンビニのいちごオレかな」
「子供か!なのです!ま、まぁ確かにいちごオレも美味しいですけど!」
「いちごオレね……何だか今時の男子高校生って感じがしないわね」
「いちごオレ…美味しい」
三姉妹それぞれ違った反応を見せる、嫌三女と次女の反応は似た様なものなのか?というか、今時の男子高校生ってこういう時どう答えるんだろう。
そんな事を考えながら、その後は特に会話をする訳でもなく、学校の中庭の様なとこまで来た(ていうか、こんな所あったのか)
「さて、月谷湊人くん……昨日はお礼を出来なかった訳だし、改めて言わせてもらうわ。昨日は本当にありがとう…貴方が居なければ私達はきっと酷い目に逢っていたと思うわ」
「湊人…ありがとう」
「本当にかっこよかったのです!」
彼女達の言葉と共に風が吹き荒れ、風で髪がなびいた彼女達の姿が凄く幻想的に見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
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目指せヤンデレ!
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