第2話 助ける


「はぁ、めんどくさ」


 そう呟く俺は現在、分厚い紙の束を両手で抱えながら廊下を歩いていた。

 職員室に行くには、今俺がいた教室から少し離れた階段で上の階に上がる必要がある。


「ん?」


 やっと職員室付近に来たと思ったら職員室の扉の前にあの三姉妹がいた。


「遅すぎる!のです」


「そうね、先生も少し待たせすぎじゃないかし…?」


 三姉妹の長女である七瀬真奈がこちらに気づいた様だが、俺を見てすぐに冷めた目になると、少し扉から距離を取って入りやすい様にしてくれた。

 俺は無言で会釈をして、そのまま職員室の扉を開け中へ入っていく────入っていく瞬間、後ろから視線を感じたのだが気のせいだろうか?


「ん?おぉ〜、どうしたんだ湊人」


 職員室に入ってきた俺に気づいた担任が机から立ち上がり俺の方へ歩いてくる。


「あぁ、これ…頼まれたんで」


「おぉ、そうか!ご苦労だった。にしてもアイツめ、さては湊人に押し付けたなぁ…」


「まぁ、とりあえず俺はこれで…」


 とりあえず適当に切り上げて、俺は先生に背を向け職員室から出る。

 その際、さっきと同じ様に三姉妹が職員室の前で話していたが、特にそちらに視線を向ける事もなく、そのまま俺は階段の方へ歩いていく。



「523円になります」


コンビニから出た俺は購入した商品を入れたレジ袋を左手に持ちながら、すっかり暗くなった空に、道をひっそりと照らす街灯の下を歩きながら施設までの帰り道を歩いていた。


「なん~~~~やめ~~~」


 ん?何か声が聞こえる……微かだが誰かの叫び声の様なものが聞こえてくるので、聞こえてくる方向に視線を向けてみると、そこには何の明かりもない闇に包まれた裏路地があった。

 こんな暗い裏路地に、しかも夜という時間帯に誰かが入るという可能性は考えにくいが、もしかしたら誰かに襲われているという可能性も無いとは言い切れない為、仕方なく闇に包まれた裏路地に足を踏み入れる。

 

「……あれは」


 暫く歩いていると、3人の女の子を囲む様にして数人の男達が佇んでいた。

 にしても、あれは噂の三姉妹さんじゃないっすかぁ。今日で遭遇したのは3度目だ、もしかして何か運命的なのあるのかねぇ〜……ていうか、何であの3人裸なんだ?露出狂?なんていう考えは即目の前で起きた光景によって吹き飛ぶ。


「ギャハハハハ、本当にこいつら服を脱ぎやがったw」


「やっぱナイフでの脅しは効くよなぁ?」


「ていうか、こんな上物久しぶりじゃん?」


「そんな怯えんなよww すぐ気持ち良くなっからさ」


「っっ!?こんな事してタダで済むと思って」


《バチン》


「え…」


「あぁ、うるせぇんだよ……良いから黙っ「黙るのは君だよ」ガハッ!?」


 俺は七瀬真奈にビンタした男に向かって全速力で走り、飛び蹴りを食らわせる。


「何だお前!?」


「いきなり現れやがったぞ!?」


 そんな奴らの声など全て無視して、三姉妹を背中の後ろに隠す様にして着地する。

 少し後ろを振り向いて、無事がどうか確認すると、長女は目を見開いて俺の方を見つめており、次女に関しても同じ様に驚きで目を見開いて固まっている様子。

 三女に関しては目をキラキラとさせながら、こちらをうっとりとした表情で見つめている。

 まぁ、とりあえず無事なのは確認出来たので視線を男達の方へ戻す。


「君達見た感じ、良い歳した大人でしょ……今しようとしてた行為が犯罪だって事ぐらい理解出来ない訳?」


「あぁ!?ガキが、偉そうに……」


「殺す!」


「大人の怖さを思い知らせてやるよ」


 あぁ、こいつらは本当に根っからのゴミだな。にしても言葉で和解出来たら楽で良かったんだがなぁ…しょうがないか。ここでコイツらは潰す必要がありそうだ。


「オラァ!!「ほい」グハッ!?」


 とりあえず馬鹿正直に突っ込んできた男の顔面に拳をめり込ませる。まぁ漫画みたいにめり込む訳じゃなく、その男の顔面は血だらけになる…そこら辺に衝撃で折れた歯も飛び散ってるのを横目で見ながら、次に来そうな相手を見定める。


「クソがぁ!!死ねぇ!!」


 馬鹿の一つ覚えみたいに、さっきの男と何ら変わりなく突っ込んでくる男の拳を避け、ガラ空きの腹に膝を思い切り打ち込む。


「グフっ!?」


 うわ、何か吐き出したんですけど…… ていうか、気づいたらあと2人か。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「なっ!?てめぇ、逃げんな!!」


 2人の内1人がビビったのか逃げ出した。そして残ったのは金髪ヒョロガリ君(仮)となった。


「君はどうするの?」


「クソがぁぁ!」


 金髪ヒョロガリ君(仮)はナイフを取り出し、それを三姉妹の方へ投げ付ける。

 

「っっ!?」


 すぐに俺はそのナイフを自分の身体で受けようとするが、もしこの後もこの金髪ヒョロガリ君(仮)が三姉妹を襲おうとしてくる場合、ナイフが腹に突き刺さっている状態だと意識が飛ぶ可能性もあり三姉妹を守れなくなってしまう。

 よって俺が出した結論は、右手を犠牲にすること。


「いっっ!?」


 何とかナイフを俺の右手で受ける事に成功。掌に思い切り突き刺さり、焼ける様に痛い。にしても後もう少しで三姉妹に当たるところだった……危なすぎる。

 ていうか、こんなの漫画の中の世界でしか出来ない事だと思ってたけど、案外成功するんだな。

 

「まぁ、とりあえず君は眠ってね」

 

「うげっ!?」


 何とか使える左手で、思い切り金髪ヒョロガリ君(仮)を殴り飛ばす。利き手じゃない方だったけど、意外といけるもんなんだな。


「ふぅ……あ」


 そういえばこの後どうしようとか、全く考えてなかった。そっと後ろを振り向けば、3人とも俺の事を何処か熱い眼差しで見つめていた。


「あ、あの!」


「とりあえず、無事で良かったよ!それじゃ」


 長女の言葉を遮る様に、そんな言葉を残しながら俺はその場から立ち去る。

 後ろから何やら声が聞こえるが、無視してそのまま来た道を引き返す。



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暇潰し連載開始〜

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