第20話 見つけたぁぁぁ!!!

 変わらない景色を眺め続けて。

 道なんて無いから歩きづらいし、竜なんて見ちゃったから怖いし、でも、もう今更戻るのもちょっと嫌だしで……。


 歩いて、もうひたすら歩いて。

 ようやく……本当にようやく——


「見つけたぁぁぁ!!!」


 ——私は、目的である花を見つけることが出来た。




「ほんとよかったぁ、枯れてたらどうしようかと思ったよ」


 あの時からひと月くらい経ってるし、薬効を考えたら枯れかけのものを使うのはなんか問題がありそうだし、そもそも枯れかけを師匠に使うのは気分的にちょっと……。

 そんな不安を感じていなかったわけではなくて、本当に……ほんとーにちょっとだけそうだったらどうしよう? って思ってたけど、ちゃんと生えていてよかった。


「品質も問題なさそう……まあ、実物見たの初めてだけど」


 そこは私の目の出番だ。

 魔力的な効能を持ったものであれば、私の目で視ることで状態は正しく把握することが出来る。

 幸い、本でも読んだ通りこの花は魔力を帯びた花みたいで、きれいに循環している魔力を視れば状態が良いのは確認できた。


「使うのは花びらと、根っこだったよね」


 せっかく綺麗に咲いているので、私はその景色を壊しまわないように気をつけて花を抜いていく。

 そして、全部で五つ採取したところで手を止めて、花と根を切り分けた。


「あとは状態保存の魔法をかけて……よし!」


 出発前の準備でおこなった付与がいい経験になったみたいで、付与魔法である状態保存の魔法が抵抗なくかけることが出来た。

 これで帰る間に枯れてたぁ……なんてことはないだろうから安心だ。


「でも、本当にきれい……師匠と来てみたかったなぁ」


 自然界ではあまり見ない青い花びらが一面に広がっている光景はとても綺麗だった。

 ピクニック……は正直危険だから怖いけど、師匠がいれば安心かも。

 生まれが王族らしくても、私は孤児院育ちだから料理は一通りできるし、それどころか家事も完璧だ。


「夫婦……じゃなくて師弟でお出かけするのはマズいことじゃないし……というか、勉強を口実に連れてきてもらう? うん、いいかも。その時に手料理を持って……ふふふ」


 ここまでくればもう夫婦といっても過言ではないのでは?

 そのためにもここから無事に帰って、薬を作らないと。


 私は花をしまったポーチがキチンと閉まっていることを確認すると、家がある方向を見る。

 正直、鬱蒼とした森しか見えないけれど、目的のものを手に入れたから気分はいいのだ。


「じゃあ、そろそろ……ん?」


 帰ろうとした矢先、私の耳になにかの音が届いた。


 それは草木の間を通るようなガサガサとした音で、でもさっきの竜ほど大きくはない。

 そう、例えるなら小型の動物が複数動いているような——


「ぁ——」


 私の脳裏に、一つの結論が結びつく。

 そして、それは現実に起こってしまった。


「うそ……」


 薄暗い森の奥。

 その中に光っているいくつもの眼光。

 それは一直線に私を捉えていて、じっと得物を待つかのように唸り声を響かせていた。


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