第16話 武器を作ろう ③
ナイフに魔力回路を刻んで。
短剣に魔力回路を刻んで。
小休止を取った私は、今日最大の作業となる魔道具の核作りを開始した。
「ふぅ……よし!」
最初におこなうのは、ナイフの方にはめる魔石の方だ。
私は何の付与もされていない無色の魔石を手に持つ。
「なんかよく分からない青の羽は軽量化で、なんかよく分からない緑の羽は風の付与。どっちも見たことない素材だけど……」
本当に……本当にこの目には助けられている。
魔力が視える私の目は、全く知らない素材でも宿ってる魔力が視えてしまう。
そのため、その素材がどんな能力を宿しているのかが分かるのだ。
使用する予定の二枚の羽を手に持って、透明のガラス玉のような魔石に掲げる。
そして、私は緑と青の羽に魔力を込め始めた。
「…………」
使用する素材に自身の魔力を満ちさせて、素材自体に宿った魔力を抜き取っていくイメージ。
少しだけじゃない……素材が持つ力すべてを抜き取って魔石に移していく。
魔力回路を彫る時とは違う……反発しようとする魔物の魔力を私の魔力で捻じ伏せる。
一気に消耗する魔力に汗が伝って垂れるけど気にしない。
集中して、集中して、集中して。
余計な景色は視界から排除して、真っ直ぐに素材に向き合う。
「…………」
少しして、羽に宿っている魔力に
私はその解れに魔力をさらに込めて、魔物の力を引き剥がしていく。
「くっ……」
引き剥がしていく際、反発しようとする魔力が暴走して風が舞い上がった。
髪が乱れて、視界を塞ごうとする。
けれど、私の目は魔力を視る目。多少の邪魔なんて意味がない。
私はさらに魔力を込めて、暴走する魔力を無理やりに包み込んでいく。
包んで、押さえて、押し込んでいく。
「ふぅ……ふぅ……」
分かっていたけど、やっぱりつらい。
師匠が保管する素材なんて、たぶん私の技術では手に負えないものばかりだ。
そしてそれは、師匠に教えてもらって上達した今の私でも変わらない。
現に、私の魔力の中で魔物の魔力が暴れまわっている。
これは、私に力がないために、素材に残っている魔物の力の残滓を押さえつけられていない証拠だ。
悔しい……。
上達したと思ってた。上手くなったと思ってた。
でも、私の実力では魔物の力の残りカスですら上手く扱うことが出来ない。
「……でも……でも! このままお別れなんて嫌だ!」
これが最後! ありったけの魔力で!!
私は全部の魔力を振り絞り、抵抗する力に真っ向から挑んだ。
じりじりとした感触が肌を伝い、汗が滝のように流れていくけど関係ない。
「あとちょっと……あとちょっとで……!」
全力を使って、ようやく力の拮抗が私の方に傾いてきた。
ゆっくりと、その力を弱めていく魔物の残滓。
そして——
「っ——!?」
暴れ狂う魔力が嘘のように霧散して、吹き荒んでいた風が幻だったかのように無風になった。
私は、おそるおそる手の中にある石へと目を落とす。
そこには緑色と青色が混ざり合い、不思議な模様になった魔石が光り輝いていた。
「できたぁぁぁぁ……」
達成感も束の間、全身の力が抜けてしまって私は後ろに倒れこんでしまう。
凄い疲れた……。
でも、やっぱり——
「うれしいな」
魔道具師として一歩進むことが出来た。
私はもう一度出来上がった魔石を眺めて、「ふふふっ」って笑顔をこぼした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます