第13話 そして一週間後——
「じゃあ行ってくる。サボるなよ」
「サボりませんよ」
「だといいがな」
一週間後、私は出掛けていく師匠を見送っていた。
茶色の目立たないローブを着た師匠の姿は凄い新鮮で、惚れ直して舞い上がってしまうけど今は我慢……。
「なんか師匠が地味なローブを着てると……」
「何が言いたい?」
「ただでさえカッコイイ顔が際立って、もっとカッコよく見えます」
……ぜんぜん我慢できなかった。
師匠も呆れたような顔をしてる……まあ、それもかっこいいんだけど。
「コホン! 留守は任せてください。訓練して待ってます」
「…………そう言われると逆に不安になるな」
「なんでですか!?」
訓練もサボってないし、勉強もちゃんとしているのに……!
普段からちゃんとした生活を送っている(
私が不満顔をすると、師匠はクスリと笑みをこぼす。
「冗談だ。帰ってきた時にどれだけ成長したか見る……それを合格出来たら森の外まで送ってやる」
「え……?」
「じゃあ、いってくる」
え、ちょっと待って? 師匠が帰ってきたらお別れなの?
まだまだ師匠に追いつけてないし、教えてほしいこともいっぱいあるのに……。
私が衝撃が大きすぎて動けずにいるうちに、スタスタと結界の外へ向けて歩いていってしまう。
「ま、まって……」
急いで追いかける。けれど、私が追いつく前に師匠は結界の外へ出ていってしまった。
それを見送って……私は結界の目の前で足を止める。
「いや、そうじゃないよね」
三週間……三週間も頑張ってきたんだ。
その間に私の魔法の実力は凄い上がったし、武術だって師匠相手に数秒持ちこたえるくらいは上達した。それに、片手間だったかもしれないけど、魔道具の技術だって教えてもらって、それも全て吸収してきた。
「神父様も言ってた……結局、願いは自分で掴み取るしかないって。願いは誰かがくれるものじゃないし、勝手にやって来るものじゃないって」
なら、やるべきことは決まってる。
「出来ることをしよ……予備日はいらないや。一日使って最大限の準備をして、明日……」
まだ合格出来るかは分からないけど、合格してお別れになってしまうと決めつけて動こう。
そして絶対に薬を完成させて、私がいない間、師匠の気持ちを私に繋ぎ止めておくのだ。
そうすれば、私は安心して師匠の頼みを叶えるために帝国の学園に堂々と行ける。
「まずは武器よね。師匠に習ったのは無手の武術だけど、ナイフくらいの大きさなら応用が効くと思うし……」
善は急げだ。
私は師匠が出ていった結界に背を向けると、師匠の研究室がある地下室へ向けて歩き出した。
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