第11話 一週間後……あの本と再び
師匠と訓練を始めてから一週間が経った。
いやもう……なんていうか……死ぬかと思った。
朝食の時の私の言葉を聞いて火が入ったのか、師匠はスパルタによるスパルタのためのスパルタなる訓練って感じでスパルタだった。
……って、私の頭がおかしくなるんじゃないかってくらい厳しかった。
魔力がすっからかんになるまで魔法を使ったら、体は無事だろうって武術の訓練。
体を酷使してヘロヘロになったら回復した少しの魔力を使って、武術と魔法の同時使用の訓練。
魔力も体力も空っぽになったら、理論の勉強。
毎日が地獄で、師匠の言葉通り添い寝させてくれれば心が折れてたと思う。
あとは恋する乙女の底力だ。自分で言ってて恥ずかしいけど……。
そして今日、私は地獄の訓練から解放されていた。
休息も大事っていう師匠の言葉と、師匠自体が予定があって訓練が出来ないそうだ。
「たしかここに……」
私はあの本を探して本棚を巡っていた。
私の最終目標である
一週間の地獄のせいで忘れかけている記憶を頼りに、一つ一つ本棚を確認していく。
「……あった」
四つ目の本棚を見ていた時に、目的の本を見つけることが出来た。
その本を持って、私は椅子に腰かける。
「まずは材料かな? でも、師匠に見つかりそう……」
私専用の小屋があるから保存はどうにかなるとして、材料を集めるのはどうすればいいんだろう?
材料を集めるにしても結界の外に出ないといけないし、そうすると師匠に結界の外に出たってバレてしまう……。
「そもそも、薬を作る隙が無いんだよね」
出掛けて行った師匠も今日の内に帰ってくるって言ってたし、まさか師匠の前で師匠に飲ませる惚れ薬を作るわけにもいかないし。
考えて考えて、考えつくした結果——
「…………まあ、どうにかなるでしょ。とりあえずは材料と作り方を頭に入れよっと」
考えることを放棄して、私はページをめくっていく。
「あっ、これ地下室にあったやつ……これもあったなぁ……これも」
どれもこれもが見覚えのある素材で、私は肩透かしを食らってしまった。
もしかして、思いのほか早く作れる?
全三ページにわたる材料の大半が師匠の研究室に保存されているという結果に、少し興奮してしまう。
けれど、最後のページの最後の材料で、そんな私の期待は打ち砕かれてしまった。
「これは無かったなぁ……」
本には素材の名前は書かれていなかった。けれど、名前の代わりに素材の見た目が描かれている。
「簡単に作らせないようにするためなのかな? よく分からないけど」
本に描かれていたのは一輪の花だった。
私の腰くらいまで伸びる背の高い花。それの花の色は青くて、一目見たら忘れられないような見た目をしていた。
「うーん、どこかで見たことあるような……?」
どこだっけ?
そこまで昔じゃなかったはずなんだけど……。
「うむむむ……」
記憶をさかのぼっていくと、ふとある光景が浮かぶ。
「あっ、あの時の!」
脳裏に浮かんだのはこの小屋に来る切っ掛けになった植物。
素材集めに出掛けた私が見つけて、結界を越えてしまう切っ掛けとなったあの植物だ。
「ふっふっふっ……これで材料の心配は無くなったわね」
こうして、私の目標は一歩進んだのだった。
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