第10話 朝食
「大変な目にあいました……」
テーブルに腰を下ろして呟く。
結局、師匠が来てくれまで私は宙に浮いたままだった。
結構早く様子を見に来てくれたからいいものの、もう少しで将来の旦那様候補に痴態を見られてしまうところだったのだ。
「師匠の人でなし……」
まさかとは思うけど、わざとやってたとか?
そうなると、私は師匠への態度をもう少し変えなくちゃいけなくなる。それはもう、攻めて攻めて攻めまくる感じに。
攻撃は最大の防御——そう神父様も言っていたし、攻めてくる師匠に対抗できるのは攻める私だけなのだ。
「勝手に人でなしにするな。間に合ったんだからいいだろう」
「そういう問題じゃないんですよ」
ジトっとした視線で師匠を睨んでいると、両手にお皿を持ってテーブルまでやってきた。凝り性なのか潔癖なのか、ピシリとエプロンを付けた姿で。
「そうか……それはすまなかったな。今度から気を付けるとしよう……いや、訓練の効率を考えると有りなのか?」
「無しです!」
なに毎日やってやろうみたいな顔してるの!?
いくら師匠でもそれは許さない。全面戦争も辞さない覚悟だよ?
眉にしわを寄せて師匠を睨みつける。
「本当にダメですよ……?」
「冗談だ」
フッと笑みをこぼし、師匠がお皿をテーブルに置く。
テーブルに置かれたことで見えたお皿の上には、焼かれたお魚と野菜が乗っていた。
師匠は、私と師匠の両方にお皿を並べると、エプロンを外して席に着く。
「本当に嫌な事ならやらないさ。それとも、実はやって欲しいとでもいうのか?」
「そんなわけないじゃないですか。もう少しで師匠に責任を取ってもらうことに……あれ? もしかしてあのまま漏らしてたほうが……」
「バカなことを言うな。そうしたらすぐにでも結界の外に放り投げるぞ」
「あ、すいませんでしたもう言わないです」
今外に放り出されたら死んじゃう。
呆れ顔の師匠に私は口を閉ざす。
師匠はそんな私を少しの間見てから、不意に口を開いた。
「で? どうだった?」
「どうとは?」
「魔法の事だ。どうにかものに出来そうか?」
「そうですね……」
ものにできるか……か。
たぶん……というか、確実に出来ると思う。
というのも、やっぱり知識の上でしか知らないのと、実際に経験したのとでは明らかに違うからだ。
実際に魔法を使って、その経過も自分の目でしっかり視た。
やっぱり私の目は特別性みたいで、今の私の頭にはどうしていけばいいのか結構しっかりイメージが出来てる。
「まずは
「いや、もういい。もう十分だ」
「そうですか?」
途中で止められたけど、満足のいく答えだったらしい。師匠は少し笑っていた。
「朝食を食べたらさっそく訓練だ。魔法に錬金術に武術……全部教えてやる」
「お、おてやわらかに……」
私……死なないかな?
「魔道具作りも教えてやるぞ?」
「お願いします!」
そうと決まれば話は早い!
私は急いで朝食を食べ始めた。
……ものすごく美味しかった。
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