第3話 彼の本当の姿ってやつ?

雅side



今日は5日ぶりに学校に向かっている。

週末、安静にしていたらなんとか体調も治って、今日は問題なく登校できている。



そういえば、熱出てた間の記憶が物凄く曖昧なんだけど、それを言ったらなんか微妙な反応されたんだよなぁ。俺はなんかしでかしてしまったのだろうか。



まぁ、いいや。

そんなことより周りから視線を感じる気がするのは気のせい...か?



「ねぇ、あれ誰?」


「あんな美形うちの学校にいたっけ?」


「転校生か?」



実は日曜日に美容室に行って前髪を切ってもらっていた。そのおかげで目は隠れてないし眼鏡もかけてない。茶色のカラコンはしてるけど。



まぁこんな感じで周りから見れば別人な俺がここにいる。



シーン。



俺が教室に入ると誰も喋らなくなった。俺はそれを気にすることなく自分の席に着く。



そして寝る。



「え?あの席って楪の...。」.


「ってことは、あいつがそうなのか?」


「なにあのイケメン!」


「結構可愛い系じゃなかった!?」



うるさ。



最初から地味な格好なんかしないでこのまま行けばよかった。変に目立っている気がする。



今の唯一の救いは、隣の席の本庄 奏がいないことだな。



――――――――




キーンコーンカーンコーン



「みーやーびー!いるか?」



俺はその大きくて騒がしい声に目を覚ました。騒がしい声のせいで目覚めは悪いし、気分は最悪。



「おーい、雅!学校休んでたから心配だったんだぜ?もう平気なのか?」



机に伏せたままの俺に話しかけてくるこいつは本庄で間違いない。



「昼飯一緒に食おうぜ!起きろよ雅〜。」



こいつ、俺がキレるから起こさないって言ってなかったか?俺の体を激しく揺らしてくる本庄はその日の誓いをどこかに置いて行ってしまったらしい。



「何。俺は食べないんだけど。」



俺は機嫌の悪さ全開で顔を少し上げると、薄目を開いて本庄の方を向いた。



「ヒィッごめんなさっ、



あ、れ?眼鏡は...ってお前誰だ?」



「...。」



「え、雅なのか!?」



「...。」



「いや、なんか言って!」



「じゃあ、どっか行って。」



「やっぱその声は、雅だよな!!!?」



ほんと、騒がしいやつだな。

ぼーっと本庄のことを見ているとリアクションがいちいち大きくて意外と飽きない。



「もしかして、朝の謎の美形男子はお前なのか!!これはあいつらにも報告しねぇと!ほら行くぞ雅!」



そう言って俺の肩を掴むと立ち上がるように促してくる。寝起きだし動きたくないんだけど?



奏side.



「ほら!行こう、って本当に雅なんだよな?」



「知らない。」



昼になって雅がいるのか確認しに来た俺は今、信じられない真実を突きつけられていた。



こんな綺麗な顔したやついるんだな...。うちの総長と並ぶレベルのやつ初めて見たぜ。



知らないとか言ってる時点でやっぱり雅なんだなーと再び確信する。



「...もう疑わないから、な?行こう!」



「なんで俺が行く必要がある。」



「一緒にいるからこそ分かることってあるだろ?」



いやぁ、俺いいこと言ったな!ん?なんか冷たい視線を感じるんだが気のせいか?



「なぁ、雅〜。」



「分かったから引っ張るな。」



「よっしゃ!」





溜まり場とうちゃーく!



「おーい、皆いるかー?」



「奏、雅くんはいたの?」



蒼大だけがこちらを向いてくれた。

みんな冷たっ!



「雅連れてきた、でも見たら驚くぞっ!!」



そんな無関心でいられるのも今のうちだぜ。こいつらの反応が楽しみだな!



「何だ?ダサさが増したか?」



智尋、後で後悔してもしらねぇからな。



「見て驚くなよ〜。ジャジャーン!これが雅でーすっ!因みに朝の噂の美形男子は雅だったんだ!」



「...。」



「雅ここ座っていいから!」



「...。」



「は?」



「智尋信じてないな?まぁ、俺も最初は信じられなかったから気持ちはわかるぜ〜。」



「奏が得意げにしてどうすんだよ。ていうか、本当に言ってる?」



蒼大も驚いて目を見開いている。



「今日はみんな同じ反応するんだな。」



すると、雅が声を発した。そうか、雅一日中驚かれてたんだな。





蒼大side


「雅、好きな物ないのか?何にも食べないのは体に悪いんだからな。」



「...チョコ。」



さっきから2人の世界に入っちゃってますけどまだ信じられない。



目の前の人物が雅くんだなんて。



「チョコ?可愛いもの好きだな。じゃなくて普通のご飯とかの話なんですけど?」



チョコレートなら今日持ってたかも。たまーに口寂しい時食べたくなるんだよね。



「雅くん、俺チョコレート持ってるよ?」



「...呼び捨てでいい、です。」



「あー、じゃあ雅。チョコいる?」



俺は苦笑いしながらチョコレートを差し出す。



「ありがとうございます。」



ちゃんと話すの初めてかも。雅はチョコレートを受け取ると包みから出して口の中に入れた。



「そんなんじゃ身体持たないつーのに〜。」



確かに、もう少し食べたほうがいいんじゃないか?とは思う。



「なぁ、雅〜。」



「何。」



雅はソファの上で体操座りをして膝の上に顔を乗せていて、明らかに眠たそう。



それにしても、綺麗な顔してるわ。不覚にも男相手に見惚れてしまう。



「眠そうだな!」



「じゃあ、帰っていい?」



「ここで寝ればいいじゃん!」



「...ん、じゃあ寝るから。」




「おう。ってまじか!」



あれ、この前は居心地悪そうにしてたのに今日はすんなり寝るんだ。智尋から敵意を向けられなくなったからかな?現実を受け入れられずに敵意すら持つ余裕がないだけだと思うんだけど。



そういえば、さっきから智尋だんまりだな。

そう思って智尋に視線を向けると...、



まだ固まってんの!?



「あ、雅寝ちゃった。寝るの早いな〜。」



奏が雅のことを少し揺らしてみても起きる気配がない。



さて、智尋もそうだけどさっきからずーっと雅を見ている瑠樹にも話を聞いてみますかね〜。



瑠樹side



「瑠樹ー、雅のことそんなに気になるのか?」



俺はどうやらずっとあいつ、楪雅のことを観察していたようだ。



「...。」


この前来た時はほぼ話さず帰っちまったからな。



今日は少し会話しているところを見てこいつのことを見定めていた。



というのは口実かもな。



この前と違う楪 雅の姿を見て驚いたっていうのもあるが、やっぱりこいつには何か惹きつけられるものがあるのは確かだ。

だから、奏もこんなに気にしてんだろうしな。



「智尋〜、戻ってこい。」



蒼大が智尋の顔の前で手を振る。



「...な、何だよ!


あいつ誰だよ!」



馬鹿にしてたやつがあんなに美形で戸惑っているのか?



「智尋、まだ信じてねぇの?今眠っているこいつは正真正銘、雅だぞ!」



「信じられねぇ。」



確かに見た目は全く違うが、やっぱりあいつは楪雅だ。人それぞれには個人の醸し出すオーラがあるが、雅はそれがさらに強いから分かりやすい。

それに気付けねぇ智尋はまだまだってことだ。



「で?瑠樹は気に入ったんだろ?」



奏が得意げな顔で俺を見た。



なんでお前が得意げなんだよ。



「まぁな。」



「はぁ?今のこの数分で何がわかるっていうんだよ!」



智尋が意味が分からないという顔で俺に問う。



「時々いるんだよね。本人は何もしてなくてもそのオーラで人を惹きつけちゃう人。」



蒼大が俺の代わりに理由を説明した。



「百嵐に入れるなんて言わねぇよな?」



「喧嘩もしたことなさそうな一般人のこいつを入れるってのは普通に考えたら無いが...、


まぁ、でも学校にいる間なら一緒にいることはできるだろ。」



もっとこいつのこと知りてぇからな。



「よっしゃ!これでもっと雅と一緒にいれるな!」



奏は心底嬉しそうな顔で言った。



「俺ももう少し雅のこと知りたいし、それで賛成かな。でも、俺らといたら雅も百嵐だって勘違いされて危険な目にあわせてしまうかも。」



それなら、そうならないようにするだけだ。




雅side



「...ん。」



「お?やっと起きたか雅。さすがにレオだってもう起きてるぞ?」



なんか、朝からずっと寝てたな。



今何時だ?



「今何時。」



「4時だ!それより、雅はレオが起きてるとこ初めて見るんじゃないか?」



「ん?レオ?...あ。」



顔を埋めていた俺はその顔を上げて辺りを見渡した。



「...あの時の濡れてた人。」



そこには、起きている大塚レオがいた。



「は?どういうことだ?会ったことがあんのか?濡れてたってなんの話だ?」



こいつほんとうるさい。



「雅、うるさいって顔に出てるんですけど?」



わざと出してんだから当然だろ。



「レオ、どこで会った?」



すると、須藤 瑠樹が会話に入ってきた。声初めて聞いたな。予想通り低くてこういうのを世間では良い声って言うのかも。



「廊下。外晴れてんのに、びしょ濡れで歩いてるの話しかけた。」



「もしかしてそれ木曜か?ってことはそれが原因で風邪引いたのか。」



本庄の言う通りですけど、



「誰にやられた?」



須藤がなんか睨んでくる。



「別に...どうでもいい馬鹿な女ども。」



だってそうだろ?今日俺が登校してきた時の顔と言ったら...。



「はぁ?なんでそんな事されたんだ?」



「...お前のせいだ。」



ここ最近の面倒ごと全部、本庄のせいだ。



「え?俺のせい?何で!?」



「奏がここに連れてきたせいって意味でしょ?」



さすが副総長、頭の回転が速くて助かる。いや、本庄が馬鹿なだけという考え方もあるか。



「まじかよ!そいつら公開処刑してやる!だから許してくれ雅ー。」



公開処刑とか物騒なこと言うな。面倒ごとに関わるのはごめんだ。



「別に。...もう金輪際関わらないって言うなら許す。」



「へ?」



「ふっ。なに間抜けな顔してんの。」






蒼大side



「ふっ、なに間抜けな顔してんの?」



雅はそう言いながら鼻で笑った。



「雅今笑った?何この破壊力!?


ってか今のは冗談ってことでいいですか?」



素直に笑った顔じゃないが初めて笑った顔を見た。その笑みはどこか妖艶で見た人の視線を奪うには十分だった。



奏のやつ、目の前で見たからか心なしか顔が赤い。



「悪いがそれはできないな。」



そんな中、瑠樹が言った。



「は?」



「これからもここに来てもらうと言っている。」



あーもう、瑠樹は一言足りないんだよ。



「俺たちは雅が気に入ったから一緒にいたいってこと。」



俺が訳さなきゃいけないじゃないか。



「俺はお前なんて気に入ってねぇからな!」



智尋もなんだかんだ懐くと思うけどなぁ。



「雅ー!これから楽しもうな!」



「うるさい。」



拒否されていないところを見るとある程度俺たちのこと受け入れてくれたってことでいいのかな?



これから楽しくなりそうな予感。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る