第105話懐かしい風

おはようございます。主様


おっおはよう。うん?

どっかで聞いた声。

まさか桜夜か?


いいえ。私は桜夜ではありません。

魔族の桜夜は死んだのです。

魔族だった頃の私の能力も力も全て失いました。これが、もしかしたら代償なのかも

しれませんが。

そして今の私は人間です。

どうやら一部の記憶だけは引き継がれた

ようです。私の知る記憶は主様の名前と

私の役割のみです。それ以上の記憶は

何一つありません。

私にとっては不思議な縁。

主様のお気に入りだったぬいぐるみが

魔族となり、使えるメイド?となり

人間として生まれ変わってまたここに

いるのですから。


なので改めて私に名前をください。


では。咲実(さきみ)なんてどうだろうか。


それが私の名前ですか。


夜の名の方良かったか?


いいえその名は魔族の証の名です。

これからはさきみとして生きていきます。


やっぱりまだ慣れないな。この会話。


そうですね。私はずっと脳に直接

話していましたから。私自身も

まだ慣れません。私が自分の口で喋ってたのは、主様と出会って最初の時以来

かも知れません。


それで、他のみんなは?


それも情報が見つかってません。

私が気づいた時には主様の側に

いましたから。


そうか。そのうち行方も分かるだろう。

今の世界にいるのか生きているのか

それすらもまだ分からない。


お茶が入ったわよ。


何よ人の顔をみてお化けが出たみたいな

顔は。人を化け物扱いしてるけど。

冷めないうちにさっさと降りてきなさいよね。

全くなんなのかしら酷い人ね。


あれって輝夜のそっくりさんか何かか?


そうですか?わたしにはよく分かりませんでしたが、そう言う空気を感じたのでしたら

きっとそうなのでしょう。

世間で言う、世界にはその人と同じ顔の人は三人はいるってやつなのでしょうね。


向こうは俺達の事を覚えていないようだったけど。やっぱり他人の空似なのかなぁ。


それか。もしかしたら本人だったかも知れませんけど何一つ記憶は、引き継がれなかった可能も十分にありますから。なんとも言えませんが。


たとえあの子が他人の空似でもいい。

また懐かしいと心から思えたから。

少しだけ嬉しかったな。


なんか急に寒くないか。


確かにそうですね。

今日は気温が低いのでしょうか。


なんかこの寒さの感じも前にも

感じた事があるような。

確か過去にいたよな。氷の女王とか

呼ばれてた魔族が。


えっと確か名前は魔女名は冷葉だっけ?


あの冷たい魔族ですか?

誰とも触れ合う事なく孤独に生きる。

周りから一匹狼って言われたあの子ですか?


そうそう誰も近づかせようともしなかった

彼女。


そう言われればそんな魔族もかつていた

気もしましたね。

言われてやっと思いだしました。


本当に俺姿以外の事覚えてなかったのか。


あの嫌われもののどこがいいのか

私にはよく分かりませんが。


周りからアイドルのように推されてて

一部ではそのファンクラブが出来てたとか。


そんな情報俺は知らないぞ。


嫌な記憶を思い出した気がします。


それは。触れたくない事を無意識に口を滑らせて言ってしまったのか。

それとも必死にそれ以上思い出さないように自分で否定してしようとしてるか。


なんだろうこれ以上聞かない方が

いい気がする。顔色が変わってしまいそう

だから。

もしかしたらいるかも知れないって話だよね。


彼女に主様は会いたいのですか?


なんか急に思い出しただけだよ。


そうですか。懐かしいと思える出来事に浸っていたのですね。


ごめん。嫌な思い出の記憶だったら。


そうと決まったわけじゃない

ですから、主様が気にする事では

ありませんよ。

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