第4話 モモ総力戦
私の名前はモモ。
私は、魔族の家系に生まれた。なのに、魔力がとても低い・・・。そんな境遇が辛くて、魔界を捨て人間界へ飛び出した。
そんな私が、何故か魔境の森に入ろうとしていた。
「モモは何もしなくても良い。只隣に居てくれないか?」
初めて出来た友達、一緒に旅をしているロータスが言った。
ロータスは、国の命令で魔王を倒しに行かなくてはならないのだ。
「私が魔王を倒すなんて無理だと思う。だが、せめて話し合いをしてみたい。」
真面目なロータスは、話し合いで解決を試みるつもりだ。
魔王に話が通じるとは思わない。でもモモはロータスと一緒に居たかった。
「当たり前よ、ロータス。私達は、ずっと友達なんだからね。」モモは笑顔で答えた。
狼の神獣であるテリーも『ウォン』と言ってくれる。
魔境の主である神獣が道案内をしてくれる。癒しの泉まで、最短の距離で行けるはず。
「モモ、同族とは戦わないでくれ。」
ロータスは心配そうにモモの肩に手を乗せた。
「大丈夫よ。この辺は、ビーストしかいないわ。ねっ、テリー。」
モモはテリーに乗って頭を撫でた。銀色のたてがみを揺らすテリーは、ロータスの顔をペロリと舐めた。
癒しの泉まで後少し・・・そんな時、争いにも似た人間達の声が聞こえてくる。何やらけたたましい音と共に。
ロータスとモモは、音のする方向へと足を急がせた。
「うるさいわね~。ドンドンプップと。」
身なりで高貴な人だと分かる女が、騎士を従えて文句を言った。
それに対抗している一味が
「モモ様の美しさを称えて何が悪いの?」とやり返していた。
『モモ?』
「王女様と同じ名前か?」
高貴な人の共が、すっとんきょうな声を上げた。
「コホン・・・。」と咳払いをして
「私の事は、プリンセス・アイリーンと呼びなさい。」高貴な人が少し顔を赤くして、共を嗜めた。
「カーシミル王国のアイリーン王女とお見受けします。私は東国にあります、リンター国のモモタリョーエス・レナードと申します。」大変美しい人がプリンセスに礼をとった。
後方に控えている、30人以上はいるだろうと思われる女性達が太鼓やラッパを鳴らしながら声を上げた。
「モモ様、素敵です~!!」
今や増えに増えたファンクラブのメンバー。馬車は5台になっていた。
「待って下さい。」ロータスも進み出て言った。
「私は南国のローデヤン国、騎士団長ロータスと申します。この娘はモモ。そして神獣のテリーです。」
(あっ!私の事も紹介してくれた。)モモが照れながら、小さく手を振って頭を下げた。
『また、モモ?』プリンセスの共が眉を上げたが、そんな事は無視してロータスが言った。
「皆さんも魔王の退治に?偶然とはいえ、ラッキーだ。ご一緒しませんか?ここに居るテリーは、この森を案内出来ます。」
「私は宜しいわよ。護衛は多い方が助かるわ。」
(護衛?)皆が思ったが、誰も口にしなかった。
「私も構いません。彼女達は戦闘のプロではない。ファンクラブなんだ。単体では弱いので人数が多い方が戦いやすい。」
「モモ様・・・。私達の心配を・・・。」ダリアが涙ぐみながら言うと、
「モモ様・・・。萌え萌えファンクラブを認めてくれたのね」リンも感極まった様子だ。
「こちらもモモは戦力外で、お願いします。」
「ロータス!私は、戦えるわ。」モモがロータスに言い返すとロータスが小さな声でモモの耳元で囁いた。
「モモが魔族と言う事は、内緒にしておこう。」
「お子ちゃまだものね~。お姉さん達が守って上げる。あなたは今日から、チアガール班ね。」
リンとダリアが、モモの頬をぷにぷにとしながら言った。
「癒しの泉の近くだけ、魔族もビーストも近づきません。ここを拠点にレベル上げをすればいいと思います。」モモが提案をした。
ミーティングが始まると、プリンセスの共のレオとレッドとグリーンから説明が始まった。
「プリンセスは、強い!だが、加減を知らない。魔王決戦の時まで封印しないと、味方に犠牲者を出す可能性がある。プリンセスは、魔王戦のぶっつけ本番でいく。」
「そうしましょう。」いつの間にかテーブルセッティングして、お茶を優雅に飲んでいるアイリーンが同意した。
お互いの実力、戦闘パターン、得意技などを知る為に、何回かシュミレーションをして、近くのビーストを相手に実践を積むことになった。
「レオ、私達の通って来た森には、手強いモンスターは出なかったわよね?南側はどうだったかしら?」
ロータスが答える。
「私達は、テリーに守られ最短距離で来ました。モンスターとの遭遇はありませんでした。東側はどうです?」
「私達で倒せるレベルの、ビースト以外に遭遇しませんでした。」モモタリョーエスが言った。
「では探索は北側に決まりね。レオ、貴方が先頭を務めなさい。」プリンスは場を仕切りだした。
「御意。」
一行はレオに続いて北に向かって歩き出す。
メンバーは、幌付き馬車を一台分。ロータスとモモタリョーエス。グリーンと戦闘班の5人で組になった。勿論モモは、チアガール班の1人として参加する。
「待って。」モモは皆の足取りを止めた。
この辺までが泉の加護の届く範囲。ここで馬車を止める。
「俺が先頭を歩く。少し距離を空けて着いてきてくれ。」
レオが後ろ手で合図を送りながら、慎重に歩いた。
ビーストが3体現れた!!
レオが斬りかかるが、中々に強い。その状況を見たロータスは、モモタリョーエスと2人掛かりで対峙した。
最後の一匹が不意に、グリーンに襲いかかる。一撃目を何とか躱したグリーンは、体勢を崩した。
すると、気の抜ける様なラッパ音が響く。
「モモ様~!頑張って~!」
一瞬。ビーストが驚いて音の方に意識が向いた。
「スキ有り。」スキをついたモモタリョーエスが一撃を食らわす。続いてロータスが二撃目。
少し弱ったビーストを見て、リンが叫んだ。「モモ様、ここは私達で。」
小さく頷いて、モモタリョーエスが移動した。
戦闘班がモンスターを囲み、タコ殴りにしてトドメを刺す。
「グリーン、大丈夫か?」モモタリョーエスが駆け付けた。ロータスも後に続く。
ビーストも相手が3人では、分が悪い。
一撃づつ入れると、モモタリョーエスが「後は頼む。」
と言って、レオの元へ走った。グリーンとロータスも。
「モモ様、かっこいい~!任せて。」と言いながら、
モンスターを囲んでタコ殴りを再び行っていた。
レオ、モモタリョーエス、ロータス、グリーンの4人が、モンスターにトドメを刺していた。
「ふぅ、やったな。」グリーンが安堵した様に呟いた。
「彼女達が、役に立つとはな・・・。一旦戻って報告だ。」レオが引き揚げる様に指示をしていると、もう一匹いたモンスターが、背後から襲ってきた。
モモは前に出てステッキを振り回した。
ビーストは、呆気なく倒された。
その様子を見たロータスは、頭を抱えた。(大人しくしておけと言ったのに・・・。仕方ないか。)
チアガールが太鼓とラッパで囃し立てている。
『モモちゃん、凄い~!』
レオとモモタリョーエスとグリーンは、目が点になっていた。
「隠していて申し訳ありません。モモは強いのですが・・・。」一旦言葉を切ってレオの方をチラリと見た。
「プリンセス同様に、味方を巻き込む可能性があると言うか・・・。加減が下手なのです。なので・・・。」ロータスが言い淀んでいると
「分かりました。規格外ですね。」とレオが頷いた。
「はい。出来ればこのまま、チアガール班で。」ロータスがチアガール班に目を向けると
「任せて。モモちゃん、まだ子供だもの。」ダリアが胸を叩いて、モモを引き寄せた。
「お願いします。」ロータスは頭を下げた。
「泉に帰って報告をしましょう。」グリーンがレオに言って辺りを見回すと、モモが居ない。
ロータスが「モモ!モモ!」と呼び掛けた。
「は~い。」と少し高い所から返事がある。
見上げると、モモは木に登っていた。「受け取って!」と言いながら木の実を落としてくる。
ロータスは安堵と同時に「降りて来なさい。」と言った。
木からスルスルと降りてきたモモは、ロータスを見上げて
「ロータス、怒ってるの?」と聞いた。
「怒ってるよ。」ロータスが恐い顔をしている。
「モモ、これからは勝手な行動は止めなさい。皆に迷惑をかける。それにモモに何かあったら、僕はここに来た意味がない。」
ロータスは俯いたまま、顔を上げない。感情的になってしまった顔を見られたくなかったからだ。
「ロータス、ごめんなさい。」モモは、ロータスの腕をとった。
「無事で何より。モモちゃんの落としてくれた木の実を拾って帰ろう。」
リンが場の空気を戻す様に、木の実を拾い出した。
チアガール班がそれに続く。「モモちゃん、これ食べられるの?」とか言いながら。
泉に帰ると、モモタリョーエスの食事班が夕食を作って迎えてくれた。
プリンセスは、ロッキングチェアに凭れて見ているだけだ。
「ただいま~。モモ様大活躍よ。モモちゃんが木の実を採ってくれたの。これもお願いね。」
リンが食事班に木の実を差し出す。
「明日のパンに混ぜましょう。美味しそうだわ。」食事班も喜んでいる様子だ。
モモは気まずそうに笑った。
「報告をします。」
食事をしながら、グリーンが皆の注目を集めた。
「レオが少し強いけど、私とロータス、モモタリョーエスは同レベルだと思います。。今日は留守番だった、レッドもそうでしょう。ですが、戦闘班が居てくれたおかげで、この辺のモンスターとも戦えそうです。順調にレベルアップが出来そうです。」
「宜しいわ。ロータス、モモタリョーエスからは何かありますか?」プリンセスが聞いた。
「私は、モモちゃんを含めファンクラブメンバーを危険に更す事は出来ません。十分にレベルアップをしてから魔王に臨むべきだと思っています。」
モモタリョーエスが発言をすると
「きゃぁぁぁぁぁ。モモ様~。」と黄色い声援が飛ぶ。
「モモタリョーエス様、有難うございます。私も同意見です。」ロータスが頷きながら言った。
「では、早くレベルアップする様にローテーションを組みましょう。なるべく早く・・・。早く帰りたい。」プリンセスは、目を閉じて言った。
大勢で食事をする。モモは初めての経験に喜びながらも、ロータスの事が気になっていた。
夜も更けて各々がテントを張って休みに付く頃、モモはロータスの隣に座って話し始めた。
「ロータス・・・。ごめんなさい、はしゃいじゃって。私、ロータスの力になりたかったの。ロータスに認めて欲しかった。」
ロータスはモモの頭を撫でた。
「僕が大人気なかったよ・・・。モモは十分に力になってくれてるよ。僕はモモに出会えた事は、必然だと思っているんだ。モモに会う為に冒険者に選ばれたんだと。だから、モモに何かあったら、耐えられない。出会いから否定してしまうだろう。」
「私も一緒。貴方と友達になれた。魔界を飛び出したことを後悔したくない。」
二人はテリーに凭れて、寄り添いながら夜が明けるのをじっと待った。手を繋いだままで・・・。
それから数日の間、同じ様にレベルアップに励む日々を送った。
なんと言っても大活躍はモモタリョーエスのファンクラブだ。朝の食事の用意から始まって、洗濯に雑用。
手の空いた時間には、プリンセスの持っていたワンピースに刺繍までしてくれた。
何より戦闘には欠かせない。
プリンセスが、王宮にスカウトしようかしら?と思っている程だ。
モモもファンクラブのメンバーと仲良くなった。
ファンクラブのマスコット的な存在だ。
「モモちゃん、16才なの?・・・もっと子供だと思ってた。」
皆でワイワイとキャンプファイヤーを囲み夕食を食べている時、ダリアがビックリした様な声を上げた。
その会話を聞いて誰よりも驚いていたのは、プリンセスだった。私より一つ下なだけなの?きっと栄養が足りてないのね。可哀想なモモちゃん、お胸の回りがペチャンコよ。
「モモちゃん、こちらへ。」と呼び出し、皿に乗っている料理をモモに分け与えたプリンセスであった。
プリンセスのモモのパーティー・・・。
国士無双モモのパーティー・・・。
魔女娘(秘密)モモのパーティー・・・。
総勢50名を超える団体が、見事に融合している。
『マーベラス!』
プリンセスが呟いた。
いよいよ魔界に行く時が来たのだ。
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