第7話
「栄養失調、ですね」
「…そうですか…」
何もかもが真っ白な病室でそう告げられる。
あれから詩織さんはパタリと気を失って緊急搬送。今に至るのだが…
「詩織さんは…大丈夫なんですよね?!無事なんですよね!?」
「ええ、先ほども言ったように栄養失調ですので。おそらく5〜7日ほどろくに食べていないのではないかと思います。現在点滴と、衰弱をしており、自発的な呼吸も困難な為酸素マスクを装着している状態です。ですが、じきに目が覚めると思いますよ。命に別状はありません」
「よかったぁ…」
「しかし、気がかりなことがありまして…。私は警察ではないので断言はできませんが、暴行されたような跡があります」
「…どういうことですか?」
「強く掴まれたような手首、叩かれたのか殴られたのか腫れた頬、これは女性看護師が確認しましたが腹部にも青い痣が見られました。医者として不適切な発言であること重々承知の上で言わせていただきますが彼女、何か厄介事を抱えているのではないでしょうか?」
「…分か、りません…」
詩織さんが暴行されてたかもしれない…。
詩織さんが見つからないと思ったら薄暗い脇道にいて、ほっとしたのも束の間、意識を失って緊急搬送されて無事だと思ったら今度は暴行されてたって…。
色々起こり過ぎてもう頭が追いつかないよ…。
詩織さん、何で言ってくれなかったんだろう…。言ってくれたら力になったのに…。
…
…
…
…いや、こういう相手に非があるような考え方はよくないな。
詩織さんだって死ぬほど考えて悩んで頼ろうとして、でもどうしようもなくて1人で抱えこんでしまったのかもしれない。
酷いフラれ方した時に助けてくれた詩織さんは女神だった。あの人肌の温もりは一生忘れないと思う。
今度は、俺が詩織さんに寄り添う時だ。
「…ちょっと自宅にいろいろ取りに帰ります」
「分かりました」
お医者さんにそう言い病室をあとにする。
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ええっと、何持って行けばいいのけ。
洗面道具、着替え、タオルに…。
着替えは男物で申し訳ないけど我慢してもらおう。とりあえず女性が着ても違和感ないものにすればいいかな。ダボっとした服とか。
あとビニール袋に時計にティッシュにウェットシートに…もう分からんからネットの力を使っていろいろ準備する。
財布に保険証は入ってたみたいだけどお金は全く持ってなかったみたいだからお金も用意して…。
…机に置きっぱなしの宝くじ。
…これもバッグに入れとくか。
よし病院に戻ろう。
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道中、ATMでお金を下ろし、女性の下着を買うため、下着ショップに寄り、死ぬほど恥ずかしい思いをした。
しかし今のブラとかパンツとかあれなんだ。
ブラは前開きのハーフなんとかでパンツのほうも転写プリントタグで肌にストレスがないように作られてたりするらしい。しかも無縫製だから刺激もないってよく考えられてるよなぁ。
もう入店することはないだろうけどいい勉強にはなった。
そうこう考えているうちに病院に着き詩織さんの病室に入る。
「あっ、お疲れ様です。店長も来てたんですね」
「そりゃあ来るわよ。お店は夜からだし。久々に顔を見れたと思ったら病院のお世話になっちゃってこの子ったら…」
「それが栄養失調みたいです」
「ええ、どうやらそうみたいね」
「ところで店長よくそんな格好で来れましたね」
いや胸元全開きもいいとこなんだが。しかも下はピッタリのスウェットパンツ。下半身もっこりさせて何考えてんだこの人。
「あらぁ、この格好気になる?」
「いや別に気になってませんけど。…トレーニングにでも行くんですか?」
「違うわよぉ!(笑)これはまだ見ぬマッチョさんたちをナンパする時の勝負服よぉ!」
「聞かなきゃ良かった」
聞かなきゃ良かった。
マジでどうでもいい。一生職質されてればいいのに。
「じゃあとりあえず顔は見れたし、アタシはナンパに行くから。一緒に行く?」
「誰が行くか!…店長、お医者さんによると詩織先輩、どうやら暴行もされていたような跡があるみたいです。体のあちこちに」
「…それは本当か?」
「はい、頬に腕にあとお腹にも」
「…詩織ちゃんは薄暗い脇道で見つけたんだよなぁ…。…不自然だぜ…」
「…店長、ちょっと素、出てますよ」
「…あらヤダ本当ね。…とりあえずさーきゅん、あなた当分バイトは休みなさい。あっ、心配しないでね。来ない分のお給料も出すわ。その代わり、詩織ちゃんのナイト頼んだわよ」
「ん?あっ、ありがとうございます?」
ん?ナイト?
よく分からんけどもともと看病はするつもりなんだが。
結果オーライかな?
「アタシはちょっと予定変更。ちょっと人に会ってくるわ」
「えっ!?マッチョにナンパしなくていいんですか!?店長死なないで!」
「アタシなんだと思ってるのよ全く…。さーきゅんも言うようになったわね」
じゃああとは頼んだわよ〜と言い店長は病室を出て行った。
その格好直して帰ってくれよ頼むから。
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お待たせして申し訳ありません。また読んで楽しんでいただければ嬉しいです。
読んでくださった全ての方に感謝を。
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