第3話

「ちょっと〜、え?ってどういうことなのさ?そんなにわたしが嫌なの?確かにわたしたちってただのバイト仲間だけどさ…」


「あ、いや、嫌ってわけじゃなくてですね!えーっと、なんていうか…」


「じゃあ〜何よ?どういう『え?』なの?わたし、こういう髪型してるけどちゃんと女の子なんだからね!」


プンスカ怒ってる詩織さん可愛いなぁ。ずいっと近寄ってきたけどいい匂いするし、髪型気にしてるけど小顔な詩織さんに似合ってる。


確かボーイッシュハンサムショートって言うんだっけ?エリカに女性の髪型の種類くらい知ってたほうがいいっていつだったか言われたことがあったから大体は分かるんだよな。


いやそれ今じゃなくて!なんで詩織さんがそこまでさっきの『え?』を気にするのかだった!


「す、すみません…?多分詩織さんが『私だったら絶対フらない』って言ってくれたことが嬉しいかったと思います!」


「ホント?」


「本当です!」


「…良かったぁ…。わたし、嫌われてるんじゃないかって思ったぁ…」


「そんな、嫌いだなんて思ってませんよ!むしろ詩織さんが彼女だったらどれだけ良かったか…」


「え?」


「あ!いや、今のナシで!」


「ダメ。もう1回言って」


「…だから、嫌だなんて思ってません」


「その後も」


「…詩織さんが彼女だったらどれだけ良かったかってって言ったんです!」


だぁ〜恥ずかしい!なんで二度も言わせるんだ!別に聞いても嬉しいことじゃないでしょ!


俺も俺でなんで口を滑らせちゃったんだ…。

俺なんかに好かれても迷惑だろう!


そもそも今日の詩織さん本当どうしたんだ!?


「…君ってわたしのこと好きなの?」


「!?…ええと、何というか…」


「誤魔化さないでちゃんと教えて」


「えっと、はい。確かに好意はありますね。でも…」


彼女がいた自分には好意を持ってはいけない。

親しみやすく、そして時には頼りになるバイトの先輩に対する好意として一線を保っていたのだ。

そう言おうとした。


「良かった〜。わたしも君のことが好きだからさ〜。アハハ、返事がヒヤヒヤしたよ」


「…え?いや、あの…」


「君、ちょうど1年くらい前からバイト入ってきたのにすでに彼女いたからさ〜半ば諦めてたんだよ?でも別れたならアタックしてもいいよね?」


え?詩織さんが?俺を?好き?


なんで?そんなあっさり?


ちょっとコンビニ行ってくるみたいなノリで言われても。


「…いや、あの、ちょっと理解できないんですけど…。なんで俺なんかを?」


「『俺なんか』なんて言わなーい。もっと自分に自信を持ってよ。わたしは、他でもない君が好きなの」


ニヒヒと笑う先輩はとても可愛いかった。


「…有難う御座います。よく分からないですけど正直まだ自信は持てないです。でも詩織さんにそう言ってもらえて元気は出ました」


「うんうん、それで?」


「それで、とは?」


「告白の返事!YESなのNOなの?」


えええ!?あれが告白だったの!?


あ、さっきアタックしても良いよね?とか言ってたけども。


「…いや、ちょっとすぐには答えられないです…。ヘタレですみません」


「大丈夫だよ〜。ヘタレだなんて思ってない。君だって色々気持ちの整理はしたいだろうし返事を今すぐ出してって言うつもりはないから」


「…ありがとうござ…」


「でも、気持ちの整理がついたら返事、ちょうだいね?」


「…はい…」



…なんかもう色々疲れた。


彼女にフられ、10万円宝くじに散財して、バイト先の先輩からまさかの告白。考えることが多すぎる。


「詩織さん、店長には自分で謝ります。とりあえず、詩織さんも戻ったほうが…」


あの店長に謝るのは億劫だな。絶対ハグかキスを求めてくるな。…キツイぜ全く。


そう考えていた時だった。



プルルルルルルルル!



詩織さんのスマホに着信が入った。


まあ十中八九店長だろうな。詩織さん居なくて店は回せてるんだろうか?


「ご、ごめん!じゃあわたしちょっともう行くから!バイトは辞めちゃダメだよ!」


普段おっとりしている詩織さんが慌ててスマホを片手にバタバタ出て行った。


…ん?着信だけでそんな驚く?


スマホを見た時の詩織さんは明らかに険しい表情をしていた。






応援有難う御座います。読んでくださった全ての方に感謝を。







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