第5話 民生委員の証言《管理票2163:H81200XX-EX》

取材およびレポート執筆 雫石巴

取材対象  匿名

取材内容  多々良たたら多恵子たえこの供述

収録音声 管理票2161-Vo:H81000XX-He

(但し取材対象者に許可を得ていない。社外秘)


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・多々良多恵子の供述内容


 民生委員の多々良多恵子(当時52)は、事件当時、午後九時頃に水鏡家に到着。

 この日、ほかの訪問宅で住居者の誤飲に遭遇、その処置と救急搬送により、予定訪問時刻より三時間おくれている。


 多々良は当初、時間も遅く、翌日の訪問を予定していた。だが近隣住民から多々良本人の携帯に、おおきな物音がした、という報告をうけ、水鏡家にむかう。


 当時現場は電灯がほとんどついておらず、唯一、二階の寝室が点灯。チャイムによる応答なし。家の裏手にまわり、隣家駐車場から、当該家の中庭にかけて呼びかけるもなんら反応なし。


 九時十二分。近隣交番に通報。

 九時二十七分。巡査と共に中庭の窓より内部侵入。


 母屋から二階につながる階段の踊り場で、仰向けに転倒している水鏡美優を発見。

 

 頭部や脚部に多くの打撲痕あり。頭部より出血あり。救急車出動。

 

 搬送後、死亡確認。



・不審点


 階段にスロープあり。それと反対側の羽目板、また階段のステップに、扁平形の硬質な物体を当てたような傷あり。傷は階段の中程から下部に合計三箇所。

 

 当時、被害者は左手に何か物を所持していた可能性あり。

 しかし、発見された被害者から、それらしき所有物なし。



 また被害者は事故前、寝ていたらしく、布団がひいてあった。

 部屋は八畳の和室。仏間兼用。そこで寝起きしていた。


 また、そこに一基、樫材の風呂桶が発見されている。

 発見当時、そこには水が入っていた。


 被害者がいかなる目的で使用していたかは不明。

 

 水内部からは、微量の酸化銅が検出されている。 

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