第8話 ネグレクト

☆横島渚サイド☆


私は住田さんと新道くんとは友人同士である。

住田さんも新道くんもとても良い人だ。

どれぐらいかといえば私が高梨くんの事で悩んでいると優しく声をかけてくれてそして手を差し伸ばしてくれたのだ。

そういう人達だから私は友人で居る。


そして住田さんと新道くんと.....新島先輩。

私を含めて4人で部活動は成り立ってきた。

その中で.....新しい部員として高梨くんが入部する事になっている。


だけど正直上手くやれるか分からない。

何故なら私は.....高梨くんが好きであり.....。

私は陰から高梨くんを幸せにしたいって思っているから。

だからこそ難しいのだと思う。


「.....さて。それでは.....」


そこまで切り出してから新島先輩は少しだけ動きがぎこちない高梨くんを苦笑しながら優しく見つめる。

そして複雑な顔をする。

私は君に起こった事は大体は把握しているつもりだ。

だけど間違っていたらすまない、と新島先輩は高梨くんを見る。


「問題ないっす。そこまで考えてくれて有難うございます」

「.....私も部員達も皆、真剣に考えているがね.....だけどこの考えに至るまでは賛否両論だった」

「.....各々の事があります。俺なんかの事は.....」

「だけどその中で渚が寄り添うって事を切り出してくれた。.....私は渚は本当によく活躍してくれたと思っている。今回はね」

「そうですね。本当に助かりました」


そんな感じで新島先輩は話す。

私はその姿を見ながら赤くなってしまう。

何だか恥ずかしい気持ちだ。

そしてモジモジしながらみんなを見る。

みんな私に笑みを浮かべていた。


「.....でも彼女のお陰で助かったっていうのは.....事実なんで。.....だからお礼でもしたいなって思うんですけど」

「.....!」

「.....言ったな?君」

「.....へ?」


新島先輩はニヤッとした。

大きく歪む様な笑顔であるが.....え?

思いながら私は目をパチクリしていると。

新島先輩が、お礼といえば誠心誠意しないとな!、と満面の笑顔になってから高梨くんの背中をバンバンと叩く。

それから、デートに誘ったらどうだ、と切り出した新島先輩。

ファ?


「な!?で、デート!!!!?まだ恋人じゃないのに!?」

「勿論デートというのは言葉のあやだが。.....だけどお礼をするんだろう?だったら部員としても協力はしないとな!」

「.....し、しかし.....」


私を見る新島先輩。

流石の私も恥ずかしくなりすぎて目が回り始めた。

そして高梨くんはどう反応するか。

断るかと思ったのだが。

高梨くんは、分かりました。デートじゃなくてあくまでお礼ですから、と切り出す。


「た、高梨くん!?それで良いの!?」

「他にどうお礼をする方法がある?嫌なら.....止めるけど。ごめん」

「い、嫌じゃない。.....全然嫌じゃない」


そんなの嫌に決まってないじゃないか。

でもこんないきなりって.....!?

私は周りをまた見る。

すると周りは笑顔で反応していた。

状況は知っている様だ。


「私も協力したいです。.....せ、先輩にはお世話になっていますから」

「そっすね。俺も横島さんにはお世話になってばかりいますから」

「い、いや。そこまで大掛かりにしなくても良いんですよ?」

「まあそう言うな。な?渚!はっはっは!」

「も、もう.....」


でもこんなので少しだけでも高梨くんの笑顔が戻るなら万々歳かもしれない。

私は考えながら居ると。

さてそうとなったら先ずはお祝いのお菓子!ジュース!だな!、とどっから分からないがお菓子とジュースを取り出す新島先輩。

その事に私は驚きながら見る。


「良いんですかぁ?新島パイセン。.....こんなにお菓子やジュースなんか山の様に持ってきたら怒られますよぉ?」

「大丈夫だ。教師どもはひっくるめるさ。私がね。だから安心して食べたまえ。そもそも私は暗い事が嫌いでね」

「.....あ.....」


因みに新島先輩だが。

暗い場所に幼い頃に妹さんと一緒に閉じ込められる、ずっと置いていかれるというネグレクトを受けている経験がある。

その為に暗い事が極端に苦手なのだ。

可哀想ってたまに思ったりするが.....。


「まあそんな事はモーマンタイだ。気にする事はない。.....そもそもあの親は私が捨ててやったからな!!!!!はーっはっは!」

「新島先輩.....それってモーマンタイっていうんですか?」

「そうだ。問題はないぞ。洋子」


胸を張る新島先輩。

実は先輩は結構凄いネット小説家だ。

ネットの例えばエ○リスタ、カクヨムなどで実際にお金を得て生活している。

月収12万円。


その金額では賄えない部分もあるのでバイトはしている様だが。

正直言って尊敬してしまう。

小説でお金が稼げているんだから。

あの親から独立するにはこれぐらいが必要だったしな、とも言う新島先輩。


「.....私も新島先輩みたいに頑張らないとな。.....それに」

「うん?何を頑張るんだ?」

「ウヒャ!?」


いきなり高梨くんの顔が心配そうに至近距離にあって。

私は心臓がバクバクしてしまう。

い、いつの間に。

思いながら私は顔を背ける。

その姿に周りはニヤニヤが止まらない感じの様子をしていた。

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