第5話 渚の狭間に
☆横島渚サイド☆
私は幼い頃から病気がちだった。
喘息とか風邪とかインフルとか.....そういう病気になりやすかった。
だから私は学校すらも休みがちで。
クラスメイトからは存在が認められず、幽霊、と称されていた。
好きこのんで頻繁に休んでいる訳ではないのでそのあだ名は眉を顰めるしかなく。
悲しく思いながら泣く事もあったと思う。
だけどその中で.....クラスメイトの高梨勇くんだけは違った。
何がどう違うかといえば高梨くんは私を、幽霊、と呼ばずにそっと絵を描いたりして付き合ってくれたのだ。
私はその事がとても嬉しく。
友達の関係になったが。
いつしか私は彼に惹かれていた。
私は高梨くんが好きなんだと思う、と。
そう考える様になった。
するとある日。
高梨くんに彼女ができた。
それは非常にショックだったがそれでも高梨くんに、おめでとう、と告げて笑みを浮かべてから手を叩いたのを覚えている。
そして付き合っていたのだが異変が起きたのは7月だった。
私の親戚の小鳥遊夢という女子と付き合っていたのだが。
その彼女が高梨くんに、強姦された、と言い始めたのである。
私は衝撃を受けながらクラスメイトを見ていたのだが。
クラスでも浮き始めた。
そしてフラフラとクラゲが浮遊する様な。
彼は1人ぼっちになった。
だけど私は親戚だったから知っていた。
小鳥遊が、どういう性格、であり。
そして、どういう人間か、というのも知っていた。
だから私は小鳥遊に聞いた。
それは嵌めたんじゃないかって、と。
すると小鳥遊は猛反撃をしてきた。
私に対して意地悪をし始めたのである。
そして人付き合いも無くなりまた昔と同じ孤独になってしまった。
だけどそれでも。
きっといつかはこの霧は晴れる。
そう思いながら私は陰からずっと高梨くんを友人としてサポートしていた。
私達が正しいのだ。
そう思いながら。
するとまたある日の9月の話。
学校に居場所が無くなってから2ヶ月近く経った時。
色々と私も調べている時。
いきなり事態は一変する.....それは。
ナーシャという女子が現れたから、だ。
「勇くんは無実です」
そう宣言して偉そうに見栄を張っていた小鳥遊を倒してしまった。
私はあっという間に倒したそのナーシャという女子に憧れを持ち.....と同時に。
何か焦る気持ちが芽生えてしまった。
こんな気持ちは捨てなければいけないのだが。
ナーシャさんは魅力がある。
私には魅力がない。
そうなると高梨くんに勝ち目もない。
私はどうすれば良いのだろうか。
そんな事を悩みながら歩いていると。
「どうした?横島」
「.....え?.....あ、い、いや。何でもないよ」
「そうか?何だか悩んでいる様な顔をしているからな」
「わ、私は悩んでないよ。.....君よりかは」
「そうか.....?なら良いけど」
部室に連れてきたのは私だ。
なのに高梨くんに心配されてしまった。
私は何故こんなにも.....、と思っていると。
俯いている私にこんな声を掛けてくる。
「今日は何だか飲み物が飲みたい気分だ」
「え?.....あ、じゃ、じゃあ.....売店にでも.....」
「そうだな。売店に行ってから俺が奢りたい気分だ。お前に」
「え?.....な、なんで?」
「お前が落ち込んでいるから」
高梨くんはそう声を掛けてくれた。
私は、!、と思いながら赤面してしまう。
こういう所が優しいのだ高梨くんは。
だから私なんかが惚れてしまう理由が分かる。
だけどそれはもう表には出さない。
何故なら私は高梨くんを恋愛で傷付けたくないから。
私は陰ながら応援して。
そして陰ながら高梨くんの成長を見守りたい。
思いながら私は高梨くんに付いて行った。
☆
売店にやって来るとナーシャさんが居た。
そのナーシャさんは構わず高梨くんに話し掛ける。
私はその姿を見ながら笑みを浮かべつつナーシャさんと高梨くんを見ていると。
ナーシャさんは私を見てから、可愛いね。貴方、と言ってくる。
「あ、あ、はい」
「反応も可愛いね。.....ねえ。勇くん。この子貰っていい?」
「貰っていいものじゃない。俺の友人だ」
すると目をパチクリして私達を交互に見るナーシャさん。
ナーシャさんはスタイルが良い。
私より10センチも違う。
その事に若干オドオドしながら高梨くんの後ろに隠れる様にナーシャさんを見ているとナーシャさんはニヤッとした。
それから耳打ちしてくる。
「本当に?本当に友人?」
「え、え?」
「フレンドで終わっていいの?せっかくの機会なのに」
「.....???」
理解が出来ず考え込む。
そして数秒経ってから私は理解してボッと赤面した。
ナーシャさんは笑みを浮かべる。
高梨くんは相変わらず理解が出来てないみたいだから良かったけど。
「待てどういう事だ?」
「乙女の内緒。.....ね?渚さん?」
「え、あ、はい、うん」
「.....???」
首を傾げる高梨くん。
そんな高梨くんを見ながら私は赤面する。
それから乳酸菌飲料を飲みながら歩く。
そして教室にさしかかったところで、じゃあね。勇くん。渚さん。グッバイ!、と言いながら去って行くナーシャさん。
すると高梨くんが私の顔を覗き込んできた。
「大丈夫か?お前」
「.....え?な、何が?」
「やけに赤面しているから。まるでインフルにでもなったかの様な」
「だ、大丈夫。だよ?あはは」
どうもナーシャさんには見抜かれた様だ。
私が高梨くんを好いている事を。
でも誤解はしないでほしい。
私はもう二度と。
高梨くんに傷付いてほしくないからこの気持ちはあくまで仮のものだという事を。
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