第4話 chaos

☆高梨勇サイド☆


教室に戻って来ると全てが逆転の道に走りとんでもない事になっていた。

グラフで言うなら小鳥遊の人気はマイナスになっている様だ。

何故なら小鳥遊の周りに人が居ないし寝ているフリに対して消しカスまで投げられている有様だった。

その代わり俺の人気が上がり始めている。

俺に対してみんな謝ってくる。


「ごめんなさい」


とか。


「すまなかった」


とか。

でも正直言って俺はそんな謝罪を受けてもみんなを今は許せない。

だけど少しだけでも考え直しても良いのかもな、とか思い始めたこの頃だった。


俺はその様子を見ながら小鳥遊を観察する。

俯いたまま周りから軽蔑されている様なザマである。

何というか可哀相にも見えなくもないが。


「正直、モロに制裁だな。.....まあ自業自得だけど」


そんな事を言いながら俺は鼻で笑いながら窓から外を見る。

そして考え込んでいると。

あの、と声がした。

顔を上げると.....そこに横島渚(よこしまなぎさ)が立っている。

ツインテールの可愛らしい小動物の様な女子である。


「いやはや。お前にも世話になったな。渚」

「わ、私は結局何の役にも立たなかったよ。.....全部ナーシャさんがやったから」

「そうは言うけどな。お前も居なかったら俺はもう挫けていたと思うから」


横島渚は.....俺の友人である。

中学生の時から偶然にも学年も一緒、クラスも一緒な為。

友人になったのだが。

俺の1番.....というか2番目の理解者。

1番目はあのアホであったが。


「.....な、何でああいう事をしちゃったんだろうね.....」

「正直何も分からない。まあだけど無闇に突っ込んで行った俺も悪いけどな」

「そ、そうだね。確かに非はあるけど.....でもそれ以上に今回は小鳥遊さんが悪いと思うよ」

「.....そう言ってくれるだけ有難いな。感謝だ」


そう言いながら俺は横島に笑みを浮かべる。

横島は嬉しそうに、えへへ、とはにかむ。

その姿がまた可愛らしかった。


正直、モデルの様に美少女では無いかもしれない。

だけどとても可愛らしいから。

性格も相当に良いから。

横島は愛されている。


「ね、ねえ。それで.....全然別のご相談があるんだけど.....い、良いかな」

「?.....何の相談だ?」

「しょ」

「.....しょ?」

「.....小説部に入りませんか」


横島は赤くなりながら一生懸命に言ってくる。

俺は帰宅部ではあるが.....。

え?、と思いながら目を丸くしながら横島を見る。

横島は、た、高梨くんは文章を書くのが上手いから。だ、だからどうかなって思って.....、と横島はチラチラ見てくる。

確かに結構前から言われてはいたが.....。


「.....そうだな。タイミングも良いし小説部に入ろうかな」

「ほ、本当に?.....あ、有難う。活字を読んだり書いたりする様な部員が少ないから助かる.....!」

「そうなのか。まあそれはそうだよな.....今の若い子ってスマホさえあればなんでもいけるしな」

「だね.....で、でも有難う!」


チャイムが鳴った。

それから横島は慌てる様に、じゃ、じゃあまた後で!、と嬉しそうに去って行く。

そんなに嬉しい事なのだろうか。

思いながら俺は、あ、ああ、と返事をしてから横島を見送る。


それから5時限目の授業を受ける。

そして俺は9月の外の景色を見渡した。

天候が少しだけ悪い感じがする。

雨でも降りそうだな。



次の時間が終わってから俺は横島に、付いて来てほしい、と言われたので付いて行く事にした。

その場所は部室棟.....の。

将棋部の隣だった。

そこに小説部がある。


「こ、ここが私の小説部」

「そうか。ここなのか」

「そ、そう。.....部長は放課後に紹介するね」

「.....」

「.....ど、どうしたの?」


いや。つまらない事だ、と言いながら横島を見る。

確か横島の親父さんがカウンセラーとして勤めている病院。

そこは小鳥遊の親父が経営している病院だった様な。

同級生同士だが.....、と俺は考え込む。


それから横島に聞いてみる。

横島。お前の親父さんって.....、と。

そ、そうだね、と複雑な顔をする横島。


「.....だから私は小鳥遊一家を付き合いで知っているけど.....立場上、は、犯罪行為はしないと思うよ」

「そうだったら良いけどな。いくら近所付き合いとはいえ俺としては不安だわ」

「.....そ、そうなんだね。.....あ、有難う」

「感謝を述べる必要はないけど。少しだけ気になったから聞いただけだ」


小鳥遊と横島。

この2人は離れている様にみえて繋がっている。

俺はその事に何だか複雑な思いを感じた。

そう考えていると。

いつの間にか横島が俺を覗き込んでいた。


「うお!?お前は何をしている!?」

「い、いや。私なんかの為に悩まないで」

「.....まあ.....そうだな。悩んでも仕方がないんだけどな。だけど」

「う、うん。悩んでも仕方がないよ」

「お前は大切な友人だ。.....だから気になるのさ」


その言葉にボッと赤くなる横島。

なんだコイツ?なんで赤くなった?

疑問符を浮かべながら俺は横島を見る。

横島は、ふにゅ、と言いながら俯いてしまった.....。

一体何故なのか。

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