第2話 修正される道

冤罪。

彼女だった女に俺がかけられていたものだ。

俺が彼女だった女に俺自身にレイプされた、と。

そんな事を叫びまくって何というか絶望しかなかった。


だが。

ある日の事だがナーシャという女子が俺の無罪を証明しクラスメイトに宣言した。

自らで証拠をかき集めて、だ。


俺は唖然としながらナーシャの姿を見る。

その後の小鳥遊だがかなり追い詰められていた。

どれぐらいかと言えば質問攻めだ。


まあこれには本当に、ザマァ、としか言いようがない。

しかしナーシャが何で。

思いながら中庭でベンチに座り俺は溜息を吐きながら空を見上げていると。

いきなりナーシャが隣に座ってきた。

俺はビックリしながらナーシャを見る。


「こんにちは。勇」

「あ、ああ。.....ナーシャ」

「元気?」

「げ、元気だが.....」


正直。俺の有罪を無罪に解決はしてくれたけどそれでも掴めない女だ。

昼休みの話だが。

さっきもそうだったがヒントが無い。

思いながら俺は汗をかきながらナーシャを見る。

するとナーシャはニコッと笑みを浮かべながら俺を見てくる。


「大丈夫?勇くん」

「あ、ああ」

「何か言いたい事があるみたいだね」

「それはそうだろ。いきなりやって来た美少女に全て救われるとは思わなかったぞ」

「.....私は救った、とは思ってないよ。.....この義理を返した、と思ってる」

「へ?返した?何をだ?」


それは君に救われたこの思いを、だよ、とニコニコするナーシャ。

俺は、???、を浮かべながらナーシャを見る。

するとナーシャは膝で頬杖をつきながら俺を見てきた。

そして口角を上げてニヤニヤする。


「君が覚えてなくても私が覚えているから」

「.....何1つとして記憶が無いんだが」

「無くても私が覚えているから。.....それだけで十分じゃない?」

「.....!」


ナーシャは俺を見てから前に向く。

それから部活動生を見る。

部活は盛んに行われているが.....。

思いながらナーシャを見るとナーシャは少しだけ悲しげな顔をした。

だが直ぐに首を振ってから笑顔になる。


「えへへ。でも良かった。今この恩を返せて」

「.....何で俺なんかにそんなにしてくれるんだ?」

「決まっているよ。それはね.....」


と赤面で言いかけてナーシャは背後から女子に呼ばれた。

それから、はーい、と返事をするナーシャ。

そして俺に向いてきながら、また後で、と手を振る。


そうしてからまたニコニコしながら去って行った。

俺は唖然としながらそのまま前を見る。

変な女だ、と思いながら。


☆ナーシャサイド☆


向こうは覚えてないけど。

迷子になった私の手を引いてくれた彼の手を覚えている。

女の子は記憶が鮮明とよく言うが。

こういう時に鮮明だとありがたいものだ。


「ナーシャ。誰かと話してなかった?」

「ううん。同じ女子だよ」

「そうかな?」


環と一緒に歩き出す私。

因みに目の前の坂井環(さかいたまき)は私の友人だ。

そばかすのポニテの少女。


私の事をいつも心配してくれる心優しい少女。

そんな環に笑顔になりながら嘘を吐く私。

勇の事を知られたらまた面倒だしな。


「ナーシャ。部長が呼んでいたから」

「そっか。どういう用事?」

「読書部でどっかに出ないかって。そういう話だったよ」

「うん。じゃあ出かけようか」


読書部とは私が所属している文芸部に近い様な感じの部活動。

活動内容は難しい読書とかが目的。

私は日本語の勉強をする為に部活動に所属したのだが。

読書部は私に最適だった。

日本語をいくらでも読めるから。


「ねえ。ナーシャ。聞いたよ?その.....男子の無罪を晴らす為に危険を犯したって」

「.....?.....あー。でも危険を犯したつもりはないかな。.....これはあくまで私がやりたいって思った事だから。その男子には借りがあったしね」

「?.....そか。.....でも危険な事はあまりしないでね?心配だから」

「そうだね。環の言う通りだね」


それから私達は旧校舎の部室棟に向かってから昭和臭いドアを開ける。

すると、おかえりー、と声がした。

顔を上げるとそこに小学生と間違える程の身長と可愛らしいマスコットキャラの様な童顔を携えた新島ゆかり(にいじまゆかり)が居た。

私の友人の2人目である。

17歳で私達と同年齢である。


「何処に行ってたの?」

「そうだね。.....チョッチ野暮用」

「そかそか。聞いたよ?男子の無罪を晴らす為に危険を犯したって.....」

「それはさっきも聞いたかも」

「ふむふむ。そうなのか。でも私達は心配なのだー」

「それは有難いね」


そして私は苦笑いを浮かべながらゆかりを見る。

すると奥の方から、ゆかり?誰だ、と声がしてくる。

顔を上げると埃まみれの人間が.....って。

部長じゃないか。


「ああ。戻って来たかね」

「ちょっと.....佐藤先輩.....埃まみれですよ」

「心配ご無用。私がいつも埃まみれなのは本を探しているからだ。それに本には汚れなき力があるから」


佐藤瑠璃(さとうるり)先輩。

凛とした顔をしているが若干間抜けなところがある。

黒縁メガネに鋭い視線。

髪の毛を髪留めで前髪とかを留めているボブ。

だけどおおらかな性格をしている。

いつも奥の部屋とかで先輩の残した古本を探している為に埃で真っ黒だ。


「先輩。その埃は外で叩いてきて下さいね?」

「そうだな。.....すまないが君達。窓を開けて換気してくれるかね」

「はい。.....あ。先輩。それで用事ってのは」

「ああ。それはまた後でな。.....今は埃を叩きたい」


それから先輩は眼鏡をかけ直してから。

そのままヨロヨロと外に出て行く。

私はそれを見ながら苦笑いで、ふむ、と納得する。

そしてゆっくりと外に出て行く真っ黒な先輩を見送った。

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