第97話

「はぁ、見晴らしが良くて嫌になるな…それじゃ、まずは奥に行くぞ」

 第九階層に移動して来たけど、確かに見晴らしが良いわよね。なんたって森から草原に戻ったんだから。


「はーい」

 ナイフならいいけど、触手はここじゃ見せられ無いもの。面倒だけどどうにもならないから、素直に奥まで移動しないとね。


「ここらで大丈夫か…メグ、まずは一匹の魔豚にしとくか?」

 うん、周りに人は見えないし良さそうね。


「そうね。最初はそれでお願い」

 まずは一匹で触手が通用するのか試してみなきゃ…


「それじゃ…あれだな。メグ、行くぞ」


「あれね!触手の餌食にしてあげるわ!」

 遠くに見えるあの魔豚ね!


 見晴らしが良いのは困る事もあるけど、魔物を見つけやすいのは助かるわね。

 触手を出して…さあ、行くわよ!


「そろそろだぞ!距離は間違えるなよ!」

 魔豚まで20m…魔豚が反応し始めたわ。


「大丈夫よ!触手の間合いはちゃんと覚えてるわ!」

 動き出した…魔豚がスピードに乗る前に距離を詰めて…


「プギイィィィ」

 向かって来た…ここで待ち受けて…


「えいっ!……は?」

 ナイフの時より気持ち早めに避けて、少し距離を空けて触手を振り下ろしたら…


「……三回も要らないかったな。一撃で倒すとはやるじゃねーか」

 …魔豚を一撃で倒せたわね。


「私って、やるわね…じゃ無いわよ!なんで一撃で倒せてるのよ!」

 ナイフだと三回も掛かったのよ?おかしくない?


「知らねーよ、俺に聞くな!…けど、触手は思ったより威力が出るって事だろうなぁ」

 …触手の威力が強い?


「でも、魔鶏の時はこんなに威力は無かった様な気がするんだけど…」

 何となく当たった感触で、どれくらいの威力だったかは分かるんだけど…絶対、魔鶏の時より威力出てるわよね?


「森から出で腕を振り回せてるからじゃねーか?」

 …腕を…振り回す?


「それだわ!腕の攻撃力と触手の攻撃力が合わさってるのよ!」

 森の時は腕を降らないで、触手の動きだけで攻撃してたもんね。腕の力が加われば、威力は上がるはずよ!


「合わさってる…単純に考えて二倍なのか?いや、ナイフで三回攻撃しないと倒せないんだから二倍じゃ足りねーよな?…

 てことは触手は腕より攻撃力があるのか?どれくらい腕の攻撃力より高いんだ?…」


「ケイト?次の場所に移動したいんだけどいいかしら?」

 そんな考察してないで、次の魔豚を倒しに行きたいんだけど?


「あ、ああ、悪い。ちょっと考え込んじまったよ」


「ダンジョンで考え事するのは止めろってカレンさんが言ってたわよ?」

 冒険者としての基本よね!


「うるせーよ、考え事したところで、こんな階層の魔物になんかやられやしねーよ」

 だとしてもよ。基本を疎かにするなんて、ダメよね〜。

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