第92話

「石柱が見えましたね。先に第十階層で石柱の登録をしてから、戻って魔豚の討伐を続けましょう」

 カレンさんの言う通り進行方向に石柱が見えて来たわ!


「あれですね。行きましょう!」

 ようやく第十階層に行けるのね。第一階層からここまで、よく頑張ったわ…




「……牧場?」

 石柱で移動した先にあったのは、第九階層と似たような草原と…木の柵で覆われた場所に沢山の牛が放し飼いにされているのは…牧場よね?


「そうですね。第十階層では果樹園の代わりに牧場になります。聖都に出回る牛乳のほとんどは、この牧場産になりますね」

 確かに牧場は広いけど、そんなに大量の牛乳が取れるのかしら?普通の牛とは違うの?


「牧場の牛も魔物なんですか?」

 ダンジョンに居るんだもの…魔物でもおかしくないわよね?


「一応、魔物ですが…間違っても倒そうなんて思ったらダメですよ?」

 やっぱり魔物なんだ…けど倒したらダメってどういう事かしら?


「何でですか?」

 牛乳を取る為の牛だから、倒すつもりなんて元から無いけど、わざわざダメなんて言うには何か理由があるはず…


「あそこを見てください」

 カレンさんが指差す方向を見ると…誰か居るわね。


「…可愛い」

 10歳くらいの男の子かしら?乳搾りをしてるわね。それよりもう少し小さい女の子が牛乳の入ったバケツを一生懸命に運んでる…これは可愛いわね…


「牧場の牛を倒したら、あの子達が泣きます。それでもメグさんは倒しますか?」

 なんですって!!


「……私には…出来ません」

 あんなに頑張って働いてる子供達を泣かせるなんて、私には出来ないわ…


「私だって出来ませんよ。まあ、牧場の牛は最下層のドラゴンよりも強いという噂があるくらいで、ほんとに倒せるのかどうか分かりませんけどね」

 最下層のドラゴン!!


「そんな強い魔物がこんなとこに居ていいんですか!」

 この牛がそんなに強いとは思えないんだけど…それでも、ちょっと怖いわよね。


「そこはダンマスが管理してるはずですから大丈夫でしょう」

 管理してる人がいるのね。でも…


「ダンマス?」

 ダンマスって誰かしら?


「ああ、ダンジョンマスターの事です」

 ダンジョンマスターを略したのね。でも…


「ダンジョンマスターをそんな呼び方して大丈夫ですか?」

 ダンジョンマスターって、このダンジョンの支配者よね?どっかで聞いてたりしないのかしら?


「大丈夫ですよ。それよりメグさん、石柱の登録をしたら第九階層に戻りますよ。もう少し魔豚の討伐をしてから帰りましょう」

 ほんとに大丈夫かしら?後で怒られても知らないからね…


「はい!分かりました!」

 まあ、いいわ…今はレベル上げの続きを頑張らないとね!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る