第90話

「最初は一匹の魔豚で慣れたいですよね?」

 …そうね、いきなり複数で襲い掛かられるのは避けたいわね…


「そうですね。最初の何回かは一匹相手がいいですね」

 慣れたら二匹、それにも慣れたら三匹と段階を踏んでお願いします。


「それじゃあ…あれにしましょう。ここからでも見えますよね?ある程度近寄ると魔豚の方から向かって来ますんで、上手く倒してください」

 私にも見えるわね。森と違って見晴らしがいいから助かるわ。


「分かりました」

 あの魔豚に向かって、動き出したら待ち受けて戦えばいいのよね?


「来ますよ。メグさん頑張って!」

 20mくらいかしら?そこまで近づくと魔豚が反応するわね。こっちに向かってきたわ!


「はい!」

 さあ、やってやるわよ!


「ブヒイィィィッ」

 大きいって聞いてたけど、思ったよりも大きいわね。この大きさで突進されるのは迫力がある…でも、これなら避けられるわ!

 魔豚が通る軌道を避けて…切る!


「ブフォゥッ」

 すれ違いざまに切りつけるのは出来るけど、やっぱり一回じゃ倒せないか…それなら倒せるまで繰り返すだけよ!

 もう一度…切る!まだダメなのね…それなら…


「もう一回っ!!」

 倒せた!…今の私だと倒すまでに三回切りつけないとダメなのね…


「魔豚も一匹なら問題無く倒せそうですね」


「はい…でも、今までの魔物より時間が掛かりそうです」

 三回切らないといけないから単純に考えても三倍だもの…


「階層が進めば魔物も強くなりますからね。それは仕方ないと思います。

 それで今の戦闘なんですけど…倒すだけなら今ので構わないんですが、戦闘時間を短くしたいなら魔豚との距離を詰めましょうか」


「距離を詰める…ですか?」

 自分から近寄れって事かしら?


「はい。突進してくるのを待つ事によって、それだけ勢いがつきます。

 勢いがつくと避けた時に魔豚が止まるまでの距離が伸びるので、またそれだけの距離を近づいてくるのを待たないといけないし、その分勢いもつきます」


「…そうなりますね」

 走る距離が長くなれば勢いがつくし、勢いがつけば避けた後に走る距離も長くなるって事よね?


「では、避けた後に距離を詰めたらどうなりますか?」

 距離を詰めたら…


「助走する距離が短くなって勢いがつかないし、次に避けた時の止まるまでの距離が短くなる?」


「そうです。メグさんとの距離がなるべく離れない様に戦えば、相手の最大の長所も潰せるし、時間も短縮できます」


「確かにそうですね…次は距離を詰めて戦ってみます!」

 勢いをつけさせなければ良いこと尽くめじゃない!これは一歩でも二歩でも詰めて行くしか無いわね!




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