第35話

「使ってて楽しいだと?アンタ…触手が使えるのか?」

 ケイト、よくぞ聞いてくれたわ!


「ええ、まだ使いこなせてるとは言えませんが、日々楽しく使わせて貰ってますよ?」

 回復の人も触手を使ってるんだ!…私以外で触手を使ってる人なんて初めて見たわ…


「兄さん、変な事に使ってるんだろ?」

 そうなの?変な事に使ってるの?…て言うか、変な事ってどんな事なの?気になっちゃうじゃない!


「いえいえ、冒険者として真っ当な使い方ですよ?先日は対人戦で触手による不意打ちの投げ技を決めましたし」

 投げ技!…そんな事も出来るのね…


「へー、やるなぁ兄さん」


「世間では触手はあまりいいイメージを持たれて無い様ですが、使い方次第ではいい武器になると思うんですよね〜。

 さて、触手談義を続けたいところですが、そろそろいい時間です。お開きにしましょう」

 あっ、もう終わりの時間だったのね…私の話でオーバーしちゃったかしら…


「そうだな、また明後日頼むわ」


「は〜い、お待ちしてますね〜」

 サラさんとキャシーさんが帰っていったわ。私達も帰らないと…


「お二人は夕食は大丈夫ですか?」

 そう思ってたら回復の人に声を掛けられたけど…


「夕食?」

 何の事かしら?


「もし同じ宿なら、夕食の時間は終わってると思いますよ?」

 そうなの?ケイト、ほんとにそうなの?


「………しまった、忘れてた」

 …ほんとにそうみたいね。


「食事はギルドの酒場で済ませたらどうですか?私、石柱で移動できるんですけど、もしテイクアウトするんなら宿まで送りますよ?」


「いいんですか!ありがとうございます」

 石柱ってあれよね?一瞬で移動できる魔法の装置よね?

 もう宿まで歩いても疲れはしないけど、面倒なのは変わらないのよね。一瞬で帰れるなら助かるわ。


「…悪いな、世話になる」

 ケイトも楽できるんだから、もっと笑顔でお礼いいなさいよ…

 まあ、いいわ。酒場で夕食を調達しないとね。このまま帰って夕食抜きは嫌だもん。


 ケイトが注文して回復の人が受付で何か話してる間に料理が届いたわ。


「ケイト、これどうやって持って帰るの?」


「自分の皿に移し替えて収納して持って帰るんだよ。こういう事もあるからな、いずれは自分の皿は用意しろよ?」

 そう言ってケイトが自前の食器に移し替え終わった時に、回復の人の話も終わったみたい。いいタイミングね。




「ありがとうございました」

 ほんとに一瞬だわ!これは楽よね。

 

「やっぱり早いな…助かったよ」


「いえいえ、同じ宿を利用してる者同士助け合わないと。では、これで」

 …同じ宿を利用してる者同士か…いつか、触手を使う者同士って言える様になるかな…言える様になったらいいなぁ…

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